ワーキング ~巫女
長編を書く気力がないので続かない短編をまた書いています
三本目:巫女憑依
三本目:巫女憑依
『幽霊とか見えるの?』巫女の仕事をしていると、時々そんなことを訊ねられる。
そのたびに私は「見えるわけがない」「テレビの見すぎです」という言葉を呑み込んで、自分でも頭からは信じていない宗教上の倫理観を吹聴しなくてはならなかった。
田舎町で暮らし、古めかしいしきたりに縛られ、自由に恋愛する暇もない。というか、出会い自体がない。
例大祭で神楽を舞えば地元の知り合いにはやし立てられ、年始などのイベント日にはカメラを携えた旅行者から浴びたくもない注目を浴びてしまう。
かといって、こんな町もうイヤだと叫んで都会に飛び出すわけでもなく、結局実家に居着いてしまった。
両親は自由に進路を選んでいいといってくれたし、東京での一人暮らしも魅力的だったけど、気が付けば神木惟(かみきゆい)は巫女になり家業を継いでいた。まるで、最初からこうなることが決定付けられていたかのように。
「……しょうがないよね」
それこそヒトの及ばぬ領域……神のみぞ知るというやつだろう。どんな仕事でも嫌なことの十や二十はあるものだし、働けるだけましだと社畜根性でがんばるしかない。
今日は夕方からお勤めがある。
私は自室に戻り、普段のラフな格好から巫女装束へと着替えていった。
襦袢をまとい、その上から白衣とスカート状の緋袴を穿き、さらに千早を羽織る。いつも思うが、どうして和服はこんなに重ね着をするのだろう。子供の頃から着慣れている衣装ではあるが、少し面倒くさい。
背中が隠れるまで伸ばした髪をうなじの辺りで束ね、清潔感のある細い綿布を結ぶ。もたつくことなく結わえきると、次は自分の日本人的な平たい顔に薄化粧を施していく。
最後に唇を潤してから改めて鏡を見れば、そこにはいつもの冴えない私より遥かに綺麗になった、いかにも清楚な雰囲気の似合いそうな巫女さんがいた。
くるりと一回転して、おかしなところがないかチェックする。重要な祭祀だから、特に念入りに確かめた。
「福男か……今年はどんな人だったかなぁ」
この町では、年の始めに『福男』と呼ばれる人間を選ぶ。新年早々に参拝客が爆走する開門神事で有名な神社とは違って、ウチの抽選方法は厳正で公平な方法に委ねられる。つまりは、おみくじだ。
一回百円。倍率は宝くじ一等賞の半分ぐらい。気軽に参加できるからか、参加人数は年々増えている。
福男が神社と関わるのは年始と年末の二回だけで、他にこれといった役目はない。今日はその二回目だった。
私自身よくわかっていないが、どうやら福男を労うための神事らしい。
本殿は完全に締め切られ、たとえ神主だろうと立ち入る事が許されない。機材から流れる雅楽にあわせて、今年選ばれた福男の前で一時間程度の巫女舞を奉納するのが、今日の仕事だ。
私はものの五分もすれば、いわゆるトランス状態に入り時間の間隔を失う。気が付けばいつも心地良い疲労感に包まれ、なにもかも終わっているのだ。
何が起こっているかは気にならないと言えばウソになるが、母や祖母の代から続いてきた伝統行事に後ろ暗いものがあるわけがないと高をくくっている。
私はそんな楽観的な心持ちで廊下を進み、本殿にある閉ざされた部屋へと向かう。気持ちとは裏腹に、巫女らしい厳粛な雰囲気を醸し出すことは、もちろん忘れなかった。
二十畳ぐらいある板張りの空間は、私が今しがた通った入り口以外の通路がすべてふさがれ、窓も締め切られていた。
四隅がろうそく型のLEDライトでほのかに照らされ、正面の壁にはこの神社の御神体である銅鏡をまつってある。
部屋の中央には今年の福男が、敷かれた布団の上に仰向けになっていた。
彼の姿勢も段取りのひとつだが、毎年見るたびに苦笑いが浮かぶ。
足こそ向けていないが、神の御前で人が堂々と寝転ぶなんて、つくづく不思議な行事だ。男の足元には全身が映る大きな鏡があることも含め、何かと謎が多い。
と、私の背後で扉が閉まり、外から施錠される音が聞こえた。
天井の梁に設置したスピーカーから飽きるほど聴いた雅楽の旋律が流れ、私はすぅっと息を吸い込んだ。
シャン、と神楽鈴を鳴らし、すり足で福男へ近寄る。年頃は私と同じぐらいの青年だった。
舞を奉納しているあいだ、福男が目を開けることはない。音響機材が流す雅楽と、私が鳴らす鈴の音。あとは聞こえるとすれば足運びや息遣い程度だろう。
薄暗い中で両目を閉じて、そんな音だけを聴いていれば自然と眠気を誘う。この神事はつまり、ヒーリングミュージックのライブバージョンのようなものだと私は解釈していた。
福男を主軸にして、私は舞い続ける。しゃん、しゃん、と、自分の位置を知らしめるように鈴を鳴らし、白衣の振り袖や緋袴の裾を慎ましやかひるがえす。
そうこうしているうちに意識がかすれ、頭の中に霧がかかり始めた。
自分で鳴らしているはずの神楽鈴が、ずっと遠くの方で響いている。浮遊感に押し上げられ、体と意識が切り離されていく。
私はトランス状態に入り。
神木惟の肉体は、抜け殻になった。
*
待ちに待った時間だ。
ほの暗い奉納殿に寝そべり、薄く開いたまぶたの隙間から巫女舞を盗み見ていた俺は、視界に揺れる胸や流れる黒髪が映り込むたびに生ツバを飲み込み、その瞬間を待ち焦がれていた。
鈴のたくさん付いた棒状の道具が静かに振り回され、厳かな空気が室内に満ちはじめる。最初はいかにも練習通りに体を動かしている感じだった巫女の動きは次第に滑らかなものへと変わり、表情が消えていく。
同時に、俺の体にも異変が起こった。
ふっと力が抜け、薄く開いたまぶたが完全に閉じられる。
生暖かい空気に全身が包み込まれ、耳だけがいやに冴えていた。
床を踏む音が枕元で立ち止まり、頭の上に人の気配を感じる。そして、しゃんしゃんしゃんと小刻みに鳴る鈴音に引き上げられるように、意識が上へ上へと昇っていく。
心地良い浮遊感を味わいながら、ここではないどこかへと心が連れて行かれる。
「うくっ!」
突然衝撃が走り、短い悲鳴が漏れた。
眠りに落ちる寸前だったところに頬を軽く叩かれたような、気分を害する衝撃。
大量の鈴が床に落ちた音が響き、まどろみが完全に失われる。
わずらわしく思いながら目を開けると。
緋袴を見下ろす視線の先。足袋を履いたつま先に、自分の頭があった。
「え……あ……」
顔を上げると、『俺』の足元に立て掛けられた姿見に、俺の姿が映った。
白いリボンで一つに束ねたつやつやの黒髪。オレンジ色のライトを照り返す白い肌。物凄い美少女というわけではないが、整った日本人的な顔立ちで、黒目の部分が平均よりもやや大きめなのが特徴的だった。
赤いラインの入ったシースルーの羽織りと、その下にある真っ白な着物。内側から感じる胸の窮屈さに、自分の襟元から立ち上る甘い芳香。それから小さくしなやかな両手を握ったり閉じたりして、じわじわと今の状況を理解していく。
「……やった。やった、やったやった、やったああああああっ!」
奉納殿に反響する声は澄んでいて、男だった自分の物とは全然違う。
本来なら絶対に味わうことができない、別の人間の感覚だ。それも異性の、巫女のカラダを、男の自分が自由に動かしている。
「いへへへっ、まさか、本当に乗り移れるなんて……あはぁっ!」
巫女装束を着た女性の肉体を自分の両腕で抱きしめ、服越しにもわかる肌の柔らかさにますます興奮する。
前腕部に胸のふくらみが押しつぶされ、襟の隙間にある谷間が強調されていた。荒々しい吐息が口の周りを覆い、女体から立ち上る芳醇が鼻腔を狂わせる。
「はああ……はああ……んっ、はあ……良い匂いだぁ……」
肺がいっぱいになるまで体臭を吸い込み、恍惚とした笑みを漏らす。そうした変態じみた奇行の一部始終が、巫女のものとして姿見の鏡に映し出されていた。
「最高だ……最高すぎる……! サンキュー神様ぁッ!」
万感の思いを込めて、心の底から感謝を叫ぶ。
この神社には、ある噂があった。
『福男に選ばれた人間は、巫女の身体を自由にできる』。常識的に考えれば眉唾物の話だし、仮に本当だったとしても、それは巫女さんとエッチができる程度の意味にしか捉われないだろう。
ところが身体を自由にできるという言葉は文字通りの意味であり、真相は『巫女の身体に福男の魂を乗り移らせる』というものだった。
歴史や神話に興味はないので詳しく調べなかったが、なんでもこの神社がまつる神様は男が女に憑依するシチュエーションが大好物らしい。現代にもそういったジャンルに興奮を覚える層は一定数いて、かくいう俺もそのうちの一人だ。
神様は巫女になった男の反応が見れて満足。俺たちは女になれてハッピー。『福男』だけが味わえる年に一度の奇跡を求め、信者は着実に増えつつあった。
「そうだ、時間がないんだ」
いつまでも感激している場合じゃない。時間いっぱいまで、たっぷりと女体を堪能しなくては。
「こほんっ……あー、神様ぁ。私の中に信者の魂を入れていただきありがとうございますっ。お礼にぃ、惟の身体でいっぱいエロいことしてあげますねぇ~?」
しなを作って、いやに甘えた声を出してみる。
有志のおかげで、巫女さんの名前は知っていた。アップされた動画の中の『神木惟』は、クール……というより、どこかスレたような覇気のない印象だったが、鏡の中の惟はこれから起こる痴態に胸を高鳴らせ、だらしなく微笑んでいる。
男が女の身体に乗り移ってやることといえば決まっている。大きな鏡があるのも、つまりは『そういうこと』を推奨しているのだろう。
粋な計らいに信仰心が強まったのは言うまでもなかった。
襟に手をかけ、胸元を両手でゆっくりと開いていく。
大きくはないが小さくもない、絶妙な膨らみが作る谷間を真上から覗き込む。足袋を履いたつま先がギリギリ見えるか見えないかの視界だ。バストサイズはCの下ぐらいだろうか。
巫女の胸を自分のものとして見下ろす光景は、惟の中にいる俺の征服感を着実に満たしていく。
露出面積を増やしつつある半球は白く、なめらかで美しかった。呼吸をするたびに胸が上下し、柔らかそうに震えている。
「うへ、うへへふじゅるっ……うおお……もうたまらん!」
口から溢れそうになるヨダレを反射的にすすり、はたとその唾液も巫女の体から出たものだと気付きさらに興奮した。
辛抱たまらなくなり巫女服を肌襦袢ごと引っつかむと、一気にはだける。丸みのある肩から襟がずり落ち、自前の双丘が全貌をあらわした。
「うお、おお、おおおおおおお!」
言葉にならない声で歓喜の悲鳴を上げ、ツンと上を向いた小さな蕾を凝視する。薄く赤みがかった、可愛らしい乳首だ。
差し伸ばした両手で胸を無造作に鷲掴みすると、細い指が乳肉に埋もれてしまった。
先端が指の間に擦れると、ピリリとした感覚が乳腺を走り、一息で脳まで駆け上がる。
「んっ、くふぅッ! な、なんだよ……ちょっと触っただけなのに……こんな……ひぁんっ!」
今度は意図的にそこを摘み上げると、より良い官能が湧き上がった。
痺れるような、痛みに近い刺激。だが、それが気持ちいい。
「はぁ、はぁ……あぅっ、んんっ! す、凄い……男と、全然違う……」
まるで見えない何かに操られているように、妄想の中で何度も呟いた台詞が口をついて出る。
細い指を乳房に食い込ませると、心臓の鼓動が手のひらから感じられた。
おなかの周りを起点にして、全身に熱が行き渡る。
股間がムズムズと物欲しげに訴えているのがわかる。俺は袴の帯をゆるめ、下半身へと手を差し伸ばした。
袴の内側でまだ着崩れしていなかった襦袢の裾をめくり、指先を股間へ導く。
「はぅっ!」
湿り気を含んだ薄い布地と、その奥に隠れた女の柔肉に到達し、思わず嬌声が上がった。
「う、あ、はぁ……これが……オンナの……んぅうっ!」
下着越しに感じるスリットをそっと撫で上げると、ピクンと体が跳ねる。
熱のこもった声は自分が出しているのが信じられないぐらい可愛らしく、そしてエロい。
「はふぁ、んっんんっ、すご……指……止まんね……きゃぅんッ」
惟の秘肉を擦る指先は徐々に速度を上げ、女体から湧き上がる官能を増やしていく。割れ目の上部に指を押し付けると、今まで以上の快楽が背中を貫いた。
どうやらクリトリスに触れたらしい。
「んぁ、これぇ……うあっ、ほ、本当に敏感なんだ……ぅっん!」
乳首よりも小さな突起物は、触れただけで全身を痺れさせた。惟の体で味わってきた中でも別格の快感だ。
気持ちが良すぎて、頭の中が真っ白になる。
「はぁっ、はぁぅっ、んんんっ! この、まま……イケなくも、ない、けど……ああんっ!」
喘ぎながら、俺はチラリと足元の男を……抜け殻になった俺の肉体を見下ろした。
女の快感は男の数倍だという。それは都市伝説でも誇張でもなく、少なくとも惟の肉体には当てはまっていた。男の、女体初心者の俺がそんな快楽を最後まで味わってしまえば、きっと足腰立たず気絶してしまうかもしれない。
それでいいはずがない。
せっかく福男に選ばれ、奇跡の体験をしているんだ。オナニーで終わるのは、もったいなさすぎる。
「だよなぁ、俺」
俺は身を屈め、仰向けのまま動かないでいる自分の身体にまたがった。
ふっくらとした惟のヒップを『俺』の目の前に突き出し、扇情的にくねらせる。
「ほらほらぁ、巫女さんがお前にまたがって、尻を突き出しているぞー?」
真紅の袴に覆われたままの尻をくねらせ、からかうように挑発する。当然だが、男の両腕が俺の尻を掴んで撫で回すなんてことはなかった。
その代わりに、下肢の中心部に違和感を見つける。
「……ははぁ」
俺は『自分』のズボンを迷いなく脱がし、ボクサーパンツを押し上げるペニスを眼下に据えた。
そそり立つ肉棒を惟の細い指で包み込むと、ドクドクと脈動している。魂がなくとも、身体は機能し続けているのだ。
俺は惟の喉を鳴らし、惟の生唾をごくりと飲み込んだ。
袴の裾をたくしあげ、『俺』の下半身に惟の陰部を近づけた。
「んっんっんぁ……っ、ふぅんッ」
鼻にかかった声で喘ぎ、愛液を限界まで染み込ませたショーツがペニスと触れ合う。
薄布を一枚隔て、女性器と男性器を押し付けあった。腰を上下に揺らすと、染み出た愛液がペニスに塗りつけられていく。
惟は処女だろうか。福男神事の巫女が惟に代替わりしたのは、彼女が15の頃だという。それから毎年、彼女の身体は俺のような人間に弄ばれているのだ。
今の俺と同じ気持ちになった男が、これまで一度も現れなかった……そんなはずがない。だが、それならそれで構わなかった。
すでに開発済みなら、痛みを感じることもなく、最後まで楽しむ事が出来る。
「うひっひひひっ! じゃあ、そろそろ貰っちゃおうかな。信者さんのど・う・て・い」
真似にもなっていない惟の口真似をして、股間に張り付いたショーツを丸めながら脱ぐ。
さえぎる物がなくなった秘部は、高い熱といやらしい匂いを発していた。
目の前にある肉棒を求め、陰唇の隙間から粘液が溢れてくる。固くそそり立ったモノに貫かれる悦びを、惟の身体はちゃんと知っているようだ。
亀頭が何度か入り口のあたりを擦り、そのたびに頭の中が甘く痺れる。
ようやく膣への狙いが定まると、俺はペニスを握ったままゆっくりと腰を落としていった。
「んっんんっ……はぃ……んぅっ……て……ひゅう、ぅっ!」
ずぷずぷと、体の中に異物が侵入してくる感覚。
切なく疼いていた下腹部が押し上げられ、脈打つ肉棒に満たされていく。
「あはぁっ! ふぅっ、んんっ、すご……これ、やばい……!」
正面の鏡では、袴を片手でたくし上げた巫女が俺のペニスをくわえ込んでヨガっていた。
唇の隙間から覗く赤い舌が、清楚な顔とのギャップもあいまって非常にいやらしい。
腰を上下に動かすと、剥き出しになった乳房がたぷたぷと波打つ。結合部から粘液の擦れる音と肉のぶつかりあう淫らな音が、締め切られた奉納殿にこだました。
神聖な場所で行う男女の交わりは背徳感を刺激し、それもすぐに興奮へと変換される。
膣肉が固いペニスに吸い付き、ギチギチに締め上げる。女慣れしていない男の肉体は、今すぐにでも暴発しそうだった。
堪えようとする意思のない空っぽの器が、刺激に反応して機械的に発射準備を整える。
「はぁっ、あんぅ! イクッ、わたしぃ、巫女なのにっ、今日会ったばかりの男の人に、中出しされるぅっ!」
長い黒髪を振り乱し、カラダをくねらせながら腰の動きを激しくする。
膣内で男根がピクピクと痙攣し、太く膨れ上がっていた。もう限界だ。
腰を落とし、ペニスの根元までガッツリくわえ込む。襞肉が亀頭をすすり、思い切り締め付ける。
身動きの取れなくなった肉棒が抵抗するように大きく振動し、先端から熱い塊が放射された。
「うぁ……きゃうんっ、は、ああああああああああああッ!」
白濁液が体内へとそそがれる。精液が子宮の入り口を叩き、頭の中まで真っ白に染まる。
大きく仰け反り、愉悦に溺れる。口端から流れた唾液があごをつたい、胸の谷間にこぼれ落ちていった。
「はっ、はひあっ、あああ……ぁぅ……んんっ、す……げ……」
最高の快感に溺れ、意識が呑まれそうになる。
甘い痺れに支配されたカラダを前のめりに倒すと、鏡にはとろけ顔の巫女が潤んだ瞳でこちらを見つめていた。
「くぅ……んっ。……えっろぉ」
女のカラダは、話に聞いていたよりももっと気持ち良い。
こんなのを知ってしまっては、もう男に戻れない。惟の体で、ずっとこの快楽を味わっていたい。……だが、それは叶わない願いだ。
あとしばらくもすれば、俺は男の肉体に強制送還される。
「……いいなぁ……ちくしょう。ずりぃよ……」
片手で胸をさすると、絶頂を迎えたばかりの敏感な体がピクリと反応する。
男性器と繋がったままの陰部は、愛液と白濁液のまざりあった淫水でどろどろに汚れていた。
腰を浮かすと、ぐぷぐぷという卑猥な水音が立ち、注ぎきれずにこぼれた精液がますます結合部を白く染める。
「んっ、んんんっ……! ま、まだ、かたい…………あはっ」
一度発射したにもかかわらず、ペニスは直立したまま肉襞の締め付けを堪能していた。
異物がもたらす圧迫感は、惟である俺の体に再び劣情の熱をともす。
「んぁっ、はぁ……っ、もう一回……いけるよな……?」
奇跡の時間はまだ続いている。
俺は完全に意識を失うまで、女の官能をひたすら楽しんだ。
**
目が覚めると、スピーカーから流れていた雅楽は止まり、奉納殿は静寂に包まれていた。
「また、トランスしちゃったか……」
例年通り、神楽を舞っている間の記憶がない。
『福男』もすでに帰ったのか、姿が見えない。彼の寝ていた布団の上で、ぼんやりと座る巫女装束の私が鏡に映っていた。
「ふぅ……なんか、つかれたなぁ……」
ぐぐっと伸びをして、やけに汗ばんだカラダを起こす。
毎年のことだが、この祭祀は異様に疲れる。例大祭で行う巫女舞でさえ、ここまでの疲労感に襲われることはないのに不思議でしょうがない。
それでいて、充足感があった。
言葉にしづらい不満が解消されたような、妙にスッキリとした気分。神事をやりきった達成感……とは違う気がする。
なにせ、達成した記憶がないのだ。
「ま、いっか……」
とりあえず今日のお勤めは終わった。早くシャワーを浴びて寝てしまおう。
私はいつ落としたのか全く覚えのない神楽鈴を拾い、御神体に向かって一礼をした。
また来年。
次こそは意識を失わないようにやりきってみせますと、心の中で誓ってみせた。
まぁ、たぶん、無理だけど。
自分の名前にあるぐらい巫女さんが好きです
もっと優美に描写したいですね。精進精進
スポンサーサイト

そのたびに私は「見えるわけがない」「テレビの見すぎです」という言葉を呑み込んで、自分でも頭からは信じていない宗教上の倫理観を吹聴しなくてはならなかった。
田舎町で暮らし、古めかしいしきたりに縛られ、自由に恋愛する暇もない。というか、出会い自体がない。
例大祭で神楽を舞えば地元の知り合いにはやし立てられ、年始などのイベント日にはカメラを携えた旅行者から浴びたくもない注目を浴びてしまう。
かといって、こんな町もうイヤだと叫んで都会に飛び出すわけでもなく、結局実家に居着いてしまった。
両親は自由に進路を選んでいいといってくれたし、東京での一人暮らしも魅力的だったけど、気が付けば神木惟(かみきゆい)は巫女になり家業を継いでいた。まるで、最初からこうなることが決定付けられていたかのように。
「……しょうがないよね」
それこそヒトの及ばぬ領域……神のみぞ知るというやつだろう。どんな仕事でも嫌なことの十や二十はあるものだし、働けるだけましだと社畜根性でがんばるしかない。
今日は夕方からお勤めがある。
私は自室に戻り、普段のラフな格好から巫女装束へと着替えていった。
襦袢をまとい、その上から白衣とスカート状の緋袴を穿き、さらに千早を羽織る。いつも思うが、どうして和服はこんなに重ね着をするのだろう。子供の頃から着慣れている衣装ではあるが、少し面倒くさい。
背中が隠れるまで伸ばした髪をうなじの辺りで束ね、清潔感のある細い綿布を結ぶ。もたつくことなく結わえきると、次は自分の日本人的な平たい顔に薄化粧を施していく。
最後に唇を潤してから改めて鏡を見れば、そこにはいつもの冴えない私より遥かに綺麗になった、いかにも清楚な雰囲気の似合いそうな巫女さんがいた。
くるりと一回転して、おかしなところがないかチェックする。重要な祭祀だから、特に念入りに確かめた。
「福男か……今年はどんな人だったかなぁ」
この町では、年の始めに『福男』と呼ばれる人間を選ぶ。新年早々に参拝客が爆走する開門神事で有名な神社とは違って、ウチの抽選方法は厳正で公平な方法に委ねられる。つまりは、おみくじだ。
一回百円。倍率は宝くじ一等賞の半分ぐらい。気軽に参加できるからか、参加人数は年々増えている。
福男が神社と関わるのは年始と年末の二回だけで、他にこれといった役目はない。今日はその二回目だった。
私自身よくわかっていないが、どうやら福男を労うための神事らしい。
本殿は完全に締め切られ、たとえ神主だろうと立ち入る事が許されない。機材から流れる雅楽にあわせて、今年選ばれた福男の前で一時間程度の巫女舞を奉納するのが、今日の仕事だ。
私はものの五分もすれば、いわゆるトランス状態に入り時間の間隔を失う。気が付けばいつも心地良い疲労感に包まれ、なにもかも終わっているのだ。
何が起こっているかは気にならないと言えばウソになるが、母や祖母の代から続いてきた伝統行事に後ろ暗いものがあるわけがないと高をくくっている。
私はそんな楽観的な心持ちで廊下を進み、本殿にある閉ざされた部屋へと向かう。気持ちとは裏腹に、巫女らしい厳粛な雰囲気を醸し出すことは、もちろん忘れなかった。
二十畳ぐらいある板張りの空間は、私が今しがた通った入り口以外の通路がすべてふさがれ、窓も締め切られていた。
四隅がろうそく型のLEDライトでほのかに照らされ、正面の壁にはこの神社の御神体である銅鏡をまつってある。
部屋の中央には今年の福男が、敷かれた布団の上に仰向けになっていた。
彼の姿勢も段取りのひとつだが、毎年見るたびに苦笑いが浮かぶ。
足こそ向けていないが、神の御前で人が堂々と寝転ぶなんて、つくづく不思議な行事だ。男の足元には全身が映る大きな鏡があることも含め、何かと謎が多い。
と、私の背後で扉が閉まり、外から施錠される音が聞こえた。
天井の梁に設置したスピーカーから飽きるほど聴いた雅楽の旋律が流れ、私はすぅっと息を吸い込んだ。
シャン、と神楽鈴を鳴らし、すり足で福男へ近寄る。年頃は私と同じぐらいの青年だった。
舞を奉納しているあいだ、福男が目を開けることはない。音響機材が流す雅楽と、私が鳴らす鈴の音。あとは聞こえるとすれば足運びや息遣い程度だろう。
薄暗い中で両目を閉じて、そんな音だけを聴いていれば自然と眠気を誘う。この神事はつまり、ヒーリングミュージックのライブバージョンのようなものだと私は解釈していた。
福男を主軸にして、私は舞い続ける。しゃん、しゃん、と、自分の位置を知らしめるように鈴を鳴らし、白衣の振り袖や緋袴の裾を慎ましやかひるがえす。
そうこうしているうちに意識がかすれ、頭の中に霧がかかり始めた。
自分で鳴らしているはずの神楽鈴が、ずっと遠くの方で響いている。浮遊感に押し上げられ、体と意識が切り離されていく。
私はトランス状態に入り。
神木惟の肉体は、抜け殻になった。
*
待ちに待った時間だ。
ほの暗い奉納殿に寝そべり、薄く開いたまぶたの隙間から巫女舞を盗み見ていた俺は、視界に揺れる胸や流れる黒髪が映り込むたびに生ツバを飲み込み、その瞬間を待ち焦がれていた。
鈴のたくさん付いた棒状の道具が静かに振り回され、厳かな空気が室内に満ちはじめる。最初はいかにも練習通りに体を動かしている感じだった巫女の動きは次第に滑らかなものへと変わり、表情が消えていく。
同時に、俺の体にも異変が起こった。
ふっと力が抜け、薄く開いたまぶたが完全に閉じられる。
生暖かい空気に全身が包み込まれ、耳だけがいやに冴えていた。
床を踏む音が枕元で立ち止まり、頭の上に人の気配を感じる。そして、しゃんしゃんしゃんと小刻みに鳴る鈴音に引き上げられるように、意識が上へ上へと昇っていく。
心地良い浮遊感を味わいながら、ここではないどこかへと心が連れて行かれる。
「うくっ!」
突然衝撃が走り、短い悲鳴が漏れた。
眠りに落ちる寸前だったところに頬を軽く叩かれたような、気分を害する衝撃。
大量の鈴が床に落ちた音が響き、まどろみが完全に失われる。
わずらわしく思いながら目を開けると。
緋袴を見下ろす視線の先。足袋を履いたつま先に、自分の頭があった。
「え……あ……」
顔を上げると、『俺』の足元に立て掛けられた姿見に、俺の姿が映った。
白いリボンで一つに束ねたつやつやの黒髪。オレンジ色のライトを照り返す白い肌。物凄い美少女というわけではないが、整った日本人的な顔立ちで、黒目の部分が平均よりもやや大きめなのが特徴的だった。
赤いラインの入ったシースルーの羽織りと、その下にある真っ白な着物。内側から感じる胸の窮屈さに、自分の襟元から立ち上る甘い芳香。それから小さくしなやかな両手を握ったり閉じたりして、じわじわと今の状況を理解していく。
「……やった。やった、やったやった、やったああああああっ!」
奉納殿に反響する声は澄んでいて、男だった自分の物とは全然違う。
本来なら絶対に味わうことができない、別の人間の感覚だ。それも異性の、巫女のカラダを、男の自分が自由に動かしている。
「いへへへっ、まさか、本当に乗り移れるなんて……あはぁっ!」
巫女装束を着た女性の肉体を自分の両腕で抱きしめ、服越しにもわかる肌の柔らかさにますます興奮する。
前腕部に胸のふくらみが押しつぶされ、襟の隙間にある谷間が強調されていた。荒々しい吐息が口の周りを覆い、女体から立ち上る芳醇が鼻腔を狂わせる。
「はああ……はああ……んっ、はあ……良い匂いだぁ……」
肺がいっぱいになるまで体臭を吸い込み、恍惚とした笑みを漏らす。そうした変態じみた奇行の一部始終が、巫女のものとして姿見の鏡に映し出されていた。
「最高だ……最高すぎる……! サンキュー神様ぁッ!」
万感の思いを込めて、心の底から感謝を叫ぶ。
この神社には、ある噂があった。
『福男に選ばれた人間は、巫女の身体を自由にできる』。常識的に考えれば眉唾物の話だし、仮に本当だったとしても、それは巫女さんとエッチができる程度の意味にしか捉われないだろう。
ところが身体を自由にできるという言葉は文字通りの意味であり、真相は『巫女の身体に福男の魂を乗り移らせる』というものだった。
歴史や神話に興味はないので詳しく調べなかったが、なんでもこの神社がまつる神様は男が女に憑依するシチュエーションが大好物らしい。現代にもそういったジャンルに興奮を覚える層は一定数いて、かくいう俺もそのうちの一人だ。
神様は巫女になった男の反応が見れて満足。俺たちは女になれてハッピー。『福男』だけが味わえる年に一度の奇跡を求め、信者は着実に増えつつあった。
「そうだ、時間がないんだ」
いつまでも感激している場合じゃない。時間いっぱいまで、たっぷりと女体を堪能しなくては。
「こほんっ……あー、神様ぁ。私の中に信者の魂を入れていただきありがとうございますっ。お礼にぃ、惟の身体でいっぱいエロいことしてあげますねぇ~?」
しなを作って、いやに甘えた声を出してみる。
有志のおかげで、巫女さんの名前は知っていた。アップされた動画の中の『神木惟』は、クール……というより、どこかスレたような覇気のない印象だったが、鏡の中の惟はこれから起こる痴態に胸を高鳴らせ、だらしなく微笑んでいる。
男が女の身体に乗り移ってやることといえば決まっている。大きな鏡があるのも、つまりは『そういうこと』を推奨しているのだろう。
粋な計らいに信仰心が強まったのは言うまでもなかった。
襟に手をかけ、胸元を両手でゆっくりと開いていく。
大きくはないが小さくもない、絶妙な膨らみが作る谷間を真上から覗き込む。足袋を履いたつま先がギリギリ見えるか見えないかの視界だ。バストサイズはCの下ぐらいだろうか。
巫女の胸を自分のものとして見下ろす光景は、惟の中にいる俺の征服感を着実に満たしていく。
露出面積を増やしつつある半球は白く、なめらかで美しかった。呼吸をするたびに胸が上下し、柔らかそうに震えている。
「うへ、うへへふじゅるっ……うおお……もうたまらん!」
口から溢れそうになるヨダレを反射的にすすり、はたとその唾液も巫女の体から出たものだと気付きさらに興奮した。
辛抱たまらなくなり巫女服を肌襦袢ごと引っつかむと、一気にはだける。丸みのある肩から襟がずり落ち、自前の双丘が全貌をあらわした。
「うお、おお、おおおおおおお!」
言葉にならない声で歓喜の悲鳴を上げ、ツンと上を向いた小さな蕾を凝視する。薄く赤みがかった、可愛らしい乳首だ。
差し伸ばした両手で胸を無造作に鷲掴みすると、細い指が乳肉に埋もれてしまった。
先端が指の間に擦れると、ピリリとした感覚が乳腺を走り、一息で脳まで駆け上がる。
「んっ、くふぅッ! な、なんだよ……ちょっと触っただけなのに……こんな……ひぁんっ!」
今度は意図的にそこを摘み上げると、より良い官能が湧き上がった。
痺れるような、痛みに近い刺激。だが、それが気持ちいい。
「はぁ、はぁ……あぅっ、んんっ! す、凄い……男と、全然違う……」
まるで見えない何かに操られているように、妄想の中で何度も呟いた台詞が口をついて出る。
細い指を乳房に食い込ませると、心臓の鼓動が手のひらから感じられた。
おなかの周りを起点にして、全身に熱が行き渡る。
股間がムズムズと物欲しげに訴えているのがわかる。俺は袴の帯をゆるめ、下半身へと手を差し伸ばした。
袴の内側でまだ着崩れしていなかった襦袢の裾をめくり、指先を股間へ導く。
「はぅっ!」
湿り気を含んだ薄い布地と、その奥に隠れた女の柔肉に到達し、思わず嬌声が上がった。
「う、あ、はぁ……これが……オンナの……んぅうっ!」
下着越しに感じるスリットをそっと撫で上げると、ピクンと体が跳ねる。
熱のこもった声は自分が出しているのが信じられないぐらい可愛らしく、そしてエロい。
「はふぁ、んっんんっ、すご……指……止まんね……きゃぅんッ」
惟の秘肉を擦る指先は徐々に速度を上げ、女体から湧き上がる官能を増やしていく。割れ目の上部に指を押し付けると、今まで以上の快楽が背中を貫いた。
どうやらクリトリスに触れたらしい。
「んぁ、これぇ……うあっ、ほ、本当に敏感なんだ……ぅっん!」
乳首よりも小さな突起物は、触れただけで全身を痺れさせた。惟の体で味わってきた中でも別格の快感だ。
気持ちが良すぎて、頭の中が真っ白になる。
「はぁっ、はぁぅっ、んんんっ! この、まま……イケなくも、ない、けど……ああんっ!」
喘ぎながら、俺はチラリと足元の男を……抜け殻になった俺の肉体を見下ろした。
女の快感は男の数倍だという。それは都市伝説でも誇張でもなく、少なくとも惟の肉体には当てはまっていた。男の、女体初心者の俺がそんな快楽を最後まで味わってしまえば、きっと足腰立たず気絶してしまうかもしれない。
それでいいはずがない。
せっかく福男に選ばれ、奇跡の体験をしているんだ。オナニーで終わるのは、もったいなさすぎる。
「だよなぁ、俺」
俺は身を屈め、仰向けのまま動かないでいる自分の身体にまたがった。
ふっくらとした惟のヒップを『俺』の目の前に突き出し、扇情的にくねらせる。
「ほらほらぁ、巫女さんがお前にまたがって、尻を突き出しているぞー?」
真紅の袴に覆われたままの尻をくねらせ、からかうように挑発する。当然だが、男の両腕が俺の尻を掴んで撫で回すなんてことはなかった。
その代わりに、下肢の中心部に違和感を見つける。
「……ははぁ」
俺は『自分』のズボンを迷いなく脱がし、ボクサーパンツを押し上げるペニスを眼下に据えた。
そそり立つ肉棒を惟の細い指で包み込むと、ドクドクと脈動している。魂がなくとも、身体は機能し続けているのだ。
俺は惟の喉を鳴らし、惟の生唾をごくりと飲み込んだ。
袴の裾をたくしあげ、『俺』の下半身に惟の陰部を近づけた。
「んっんっんぁ……っ、ふぅんッ」
鼻にかかった声で喘ぎ、愛液を限界まで染み込ませたショーツがペニスと触れ合う。
薄布を一枚隔て、女性器と男性器を押し付けあった。腰を上下に揺らすと、染み出た愛液がペニスに塗りつけられていく。
惟は処女だろうか。福男神事の巫女が惟に代替わりしたのは、彼女が15の頃だという。それから毎年、彼女の身体は俺のような人間に弄ばれているのだ。
今の俺と同じ気持ちになった男が、これまで一度も現れなかった……そんなはずがない。だが、それならそれで構わなかった。
すでに開発済みなら、痛みを感じることもなく、最後まで楽しむ事が出来る。
「うひっひひひっ! じゃあ、そろそろ貰っちゃおうかな。信者さんのど・う・て・い」
真似にもなっていない惟の口真似をして、股間に張り付いたショーツを丸めながら脱ぐ。
さえぎる物がなくなった秘部は、高い熱といやらしい匂いを発していた。
目の前にある肉棒を求め、陰唇の隙間から粘液が溢れてくる。固くそそり立ったモノに貫かれる悦びを、惟の身体はちゃんと知っているようだ。
亀頭が何度か入り口のあたりを擦り、そのたびに頭の中が甘く痺れる。
ようやく膣への狙いが定まると、俺はペニスを握ったままゆっくりと腰を落としていった。
「んっんんっ……はぃ……んぅっ……て……ひゅう、ぅっ!」
ずぷずぷと、体の中に異物が侵入してくる感覚。
切なく疼いていた下腹部が押し上げられ、脈打つ肉棒に満たされていく。
「あはぁっ! ふぅっ、んんっ、すご……これ、やばい……!」
正面の鏡では、袴を片手でたくし上げた巫女が俺のペニスをくわえ込んでヨガっていた。
唇の隙間から覗く赤い舌が、清楚な顔とのギャップもあいまって非常にいやらしい。
腰を上下に動かすと、剥き出しになった乳房がたぷたぷと波打つ。結合部から粘液の擦れる音と肉のぶつかりあう淫らな音が、締め切られた奉納殿にこだました。
神聖な場所で行う男女の交わりは背徳感を刺激し、それもすぐに興奮へと変換される。
膣肉が固いペニスに吸い付き、ギチギチに締め上げる。女慣れしていない男の肉体は、今すぐにでも暴発しそうだった。
堪えようとする意思のない空っぽの器が、刺激に反応して機械的に発射準備を整える。
「はぁっ、あんぅ! イクッ、わたしぃ、巫女なのにっ、今日会ったばかりの男の人に、中出しされるぅっ!」
長い黒髪を振り乱し、カラダをくねらせながら腰の動きを激しくする。
膣内で男根がピクピクと痙攣し、太く膨れ上がっていた。もう限界だ。
腰を落とし、ペニスの根元までガッツリくわえ込む。襞肉が亀頭をすすり、思い切り締め付ける。
身動きの取れなくなった肉棒が抵抗するように大きく振動し、先端から熱い塊が放射された。
「うぁ……きゃうんっ、は、ああああああああああああッ!」
白濁液が体内へとそそがれる。精液が子宮の入り口を叩き、頭の中まで真っ白に染まる。
大きく仰け反り、愉悦に溺れる。口端から流れた唾液があごをつたい、胸の谷間にこぼれ落ちていった。
「はっ、はひあっ、あああ……ぁぅ……んんっ、す……げ……」
最高の快感に溺れ、意識が呑まれそうになる。
甘い痺れに支配されたカラダを前のめりに倒すと、鏡にはとろけ顔の巫女が潤んだ瞳でこちらを見つめていた。
「くぅ……んっ。……えっろぉ」
女のカラダは、話に聞いていたよりももっと気持ち良い。
こんなのを知ってしまっては、もう男に戻れない。惟の体で、ずっとこの快楽を味わっていたい。……だが、それは叶わない願いだ。
あとしばらくもすれば、俺は男の肉体に強制送還される。
「……いいなぁ……ちくしょう。ずりぃよ……」
片手で胸をさすると、絶頂を迎えたばかりの敏感な体がピクリと反応する。
男性器と繋がったままの陰部は、愛液と白濁液のまざりあった淫水でどろどろに汚れていた。
腰を浮かすと、ぐぷぐぷという卑猥な水音が立ち、注ぎきれずにこぼれた精液がますます結合部を白く染める。
「んっ、んんんっ……! ま、まだ、かたい…………あはっ」
一度発射したにもかかわらず、ペニスは直立したまま肉襞の締め付けを堪能していた。
異物がもたらす圧迫感は、惟である俺の体に再び劣情の熱をともす。
「んぁっ、はぁ……っ、もう一回……いけるよな……?」
奇跡の時間はまだ続いている。
俺は完全に意識を失うまで、女の官能をひたすら楽しんだ。
**
目が覚めると、スピーカーから流れていた雅楽は止まり、奉納殿は静寂に包まれていた。
「また、トランスしちゃったか……」
例年通り、神楽を舞っている間の記憶がない。
『福男』もすでに帰ったのか、姿が見えない。彼の寝ていた布団の上で、ぼんやりと座る巫女装束の私が鏡に映っていた。
「ふぅ……なんか、つかれたなぁ……」
ぐぐっと伸びをして、やけに汗ばんだカラダを起こす。
毎年のことだが、この祭祀は異様に疲れる。例大祭で行う巫女舞でさえ、ここまでの疲労感に襲われることはないのに不思議でしょうがない。
それでいて、充足感があった。
言葉にしづらい不満が解消されたような、妙にスッキリとした気分。神事をやりきった達成感……とは違う気がする。
なにせ、達成した記憶がないのだ。
「ま、いっか……」
とりあえず今日のお勤めは終わった。早くシャワーを浴びて寝てしまおう。
私はいつ落としたのか全く覚えのない神楽鈴を拾い、御神体に向かって一礼をした。
また来年。
次こそは意識を失わないようにやりきってみせますと、心の中で誓ってみせた。
まぁ、たぶん、無理だけど。
自分の名前にあるぐらい巫女さんが好きです
もっと優美に描写したいですね。精進精進

[PR]
