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ヤ サ シ イ セ カ イ 12

表がそろそろ広告出そう…
しかし裏を書く


ダーク全開なTSファンタジーのお話です
少女騎士と入れ替わった盗賊視点で進行します


 ヤ サ シ イ セ カ イ ~シンパシーリング 5


*:アトラ

 姫騎士アトラは壇上に上がり、集まった近衛騎士団の面々を見下ろした。
 突然の召集に、少女騎士たちはひそひそと私語を囁き交わしている。が、アトラの登場に気付くと同時に、話し声はピタリとやんだ。
 アトラは自身の胸中にある戸惑いを気取られぬよう注意しながら、威厳をもって口を開く。
「我が騎士団は本日より、逃亡した罪人の捜索に当たる!」
 罪人という言葉を聞いた直後、少女騎士たちにわずかな緊張が走った。
 先日捕らえた盗賊との乱戦は皆の記憶にも新しい。初めての実戦で傷を負った者も少なくなく、警戒心が刺激されるのも仕方のないことだった。
「罪人って、いったい誰ですか?」
 誰かが声を発し、敵の正体を探る。
 アトラは隣に立つ近衛隊長から聞かされた、とある侍女の名前を伝えた。
 ドラウザという官吏に使えていたメイドの名は意外と広く認知されているのか、数名がどよつく。
「罪状は……殺人よ。衛兵を殺して、城外に逃げたと聞くわ」
 アトラも彼女のことは知っていた。
 小柄で可愛く、大人しい少女だったはずだ。それがなぜ衛兵殺しという罪を犯したのか、どうしても納得できなかった。
 しかし罪は罪だ。どんな事情があろうとも、人を殺して許されるはずもない。
「今から小隊を編成するから、呼ばれた人は前に出てきて。まず……」
 レギオニウスと共に作り上げた編成リストを広げ、騎士団員達の名前を読み上げていく。
 次々と小隊が作られていく中、ふと、アトラはぼんやりと佇む少女の存在に気付いた。
「リタ……? リタっ」
「…………え、あ、はいっ!」
 名前を呼ぶと、一拍遅れて返事が上がる。
「考え事?」
「あ~……まぁ、そうでしょうか」
 頭を軽く掻きながら、曖昧な答えを返す。近くまで来ると、リタはちらっと近衛隊長に視線をやった。
(そっか、まだレギオニウスにも慣れてないんだっけ)
 彼女の多少おかしな態度は男嫌いがゆえんであると納得し、追究をとどめる。
 改善の一助として捕らえた盗賊の世話をさせているが、なかなか難しいようだ。
「……もし、どうしても無理ならちゃんと言ってね。ウィーグルのことは、他の人に担当してもらうから」
「え? い、いいえ、大丈夫です! 私にやらせてください」
 思わず力強い言葉が来て、アトラは少々面食らう。だがすぐに「真面目なリタらしい」と苦笑を浮かべ、リストに視線を戻した。
「あなたは、リエーレ達と一緒に第三教会の周辺を調べて。よろしくね」
「教会……か」
「どうかした?」
「あ、いいえっ。わかりました!」
 慌てて首を振り、彼女は自分の組み込まれた小隊のメンバーへと駆けつけていく。
 小さな違和感を感じながらもあえて気にはせず、アトラは次の名前を読み上げた。


*:リタ(ウィーグル)

 教会の人間は嫌いだ。
 ウィーグルは貧困層の生まれで、かつてはその日の食事すらままならない生活を強いられていた。
 だが教会の施しで餓えをしのいだ場面は多くあり、本来なら感謝すべき対象となるはずの組織にどうして反感を抱いているのか。
 それは連中の掲げる平等主義が失笑を禁じえない、偽善まみれの教義だからだ。
 『神の慈悲は平等であり、救いを求める信者に貴賎などない』。もちろん信徒でもないウィーグルがその一言一句をあまさず記憶しているはずは無いのだが、『リタ』の知識にはそれが一般教養として刷り込まれていた。
(何が平等だ、偽善者ども)
 ウィーグルは運良く【人間】として生まれたが、彼が取りまとめていた盗賊団のメンバーには【エルフ】も少なからず混じっていた。
 彼らは人間から迫害される日々を脱却し、復讐のために、あるいは生きるためにウィーグルと共に盗みや殺しを働いていた。盗賊行為を正当化するつもりなど無いが、教会の連中はエルフの迫害が許される不平等な世の中に見向きもしていない。
 どころか、最近ではエルフの弾圧に意欲的ですらある。それで平等主義など、良く言えたものだ。
「リタ? もう、またボーッとしてる」
「え、そ、そうかな」
 横合いに並ぶ馬上のリエーレに声をかけられ、ウィーグルは自分が任務中だということを思い出し慌てて手綱を握り締めた。
 この国にある教会は他国に比べ、かなり数が少ない。城内に一つ、街の中心部に一つ、そして街外れに一つ。
 自分達の小隊はその街外れ。第三教会と呼ばれる小さな施設の周辺を探索することになっている。
 小国とはいえ王城から街外れまではかなりの距離があり、リエーレ小隊には馬を使う許可が下りていた。
 乗馬の経験など無いウィーグルは一瞬焦ったが、『リタ』の肉体は慣れた動作で愛馬にまたがる事が出来た。愛馬も愛馬で、主人の中身が別人と入れ替わっているなどと気付きもせず上機嫌で尾を振っている。
(所詮は動物ってか。んっ……にしても、よくコイツら平気な顔してんな)
 落馬することこそ無いが、馬が闊歩するたびに鞍の上で身体が揺さぶられ、女の敏感な箇所がゆるい刺激を受ける。
 だが隣のリエーレも、先を行くもう一人の少女騎士も平然としていた。感じているのは自分だけなのだろうか。
「最近調子悪いみたいだし、ゆっくり休みなさいよ。明日は確か、非番よね?」
「う、うん……」
 休日の話は、改めてリタの知識から引き出すまでもなく「知って」いた。
 緊急時でもなければ王城に出向く必要は無く、一日が自由に使える。獄中にいる『ウィーグル』への食事は衛兵が供給してくれるらしい。
 入れ替わってから本物のリタが自分以外の人間と会うのは初めてだ。しかしそのことについては、さほど心配していなかった。
 マホウで身体を入れ替えられたなどと、誰が信じるものか。
 そのうえ兄のこともある。
 鉄格子の中で射精するリタをひとしきり嘲笑った後、ウィーグルは抜け目なく釘を刺していた。
『余計なことは言うなよ? 病弱な兄さんが、二度とベッドから起き上がれなくなるぞ』
 獄中のリタはさめざめと泣くばかりで会話にはならなかったが、この脅しは有効に働くだろう。
 兄は妹のために、妹は兄のために自らを犠牲にして盗賊に従っている。
 だが心優しい兄妹に対し、救いは何一つとしてない。
 屋根に十字架が飾られた教会を視界に捉え、ウィーグルは冷めた瞳でそれを見上げた。
 神など、いったいどこにいるのだろう。



 教会の扉を開けると、礼拝堂にいた赤いドレスの女と純白の修道女がほぼ同時に振り向いた。
 二人の女は聖母像の前に立ち、話をしていたようだ。信者の姿はなく、一歩前に進み出たリエーレの声がやけに大きく響く。
「お取り込み中失礼します。私は王国騎士所属、アトラ近衛騎士団のリエーレ少尉です。お時間、よろしいでしょうか」
「き、騎士団……!?」
「あら、ちょうどいいじゃない。これこそ神の思し召しだわ」
 女たちの反応は真逆だった。
 目を剥いてあからさまに萎縮する修道女に比べ、もう一人はブロンドの髪をかき上げながら傲慢さを隠そうともしない強気な笑みを浮かべている。
「で、でも、トリーシェ。あの人は助けてって……」
「だめよ。ジズだって知っているでしょう? 『悪行はいずれ暴かれ、裁きを受ける』でしょ?」
「悪行だって決まったわけじゃ……」
 妙にビクビクとしながら反論を試みる修道女を無視し、派手な衣装の女の視線がリエーレ一同を見回した。
「ごきげんよう、騎士様。わたしはマーグレイ商会の娘、トリーシェ・マーグレイです」
 マーグレイ家は山々に囲まれた王国の流通を担う、国の重要機関だ。盗賊時代のウィーグルは、彼らの商会が運ぶ積荷を幾度となく横からいただいていた。
「これは光栄です。このような場所で王国発展の立役者にお会いできるなんて夢にも思いませんでした」
 世辞とも本気とも取れる口調で、リエーレが恭しく頭を下げる。
「ふふっ、ありがとうございます。まぁ、我が家のことは今は関係ありませんわね。ご用件を伺っても?」
 トリーシェはすらすらと口弁を操り、率先して会話を進めていた。
 本来なら教会関係者であるシスターがその役割をこなすべき場面だが、純白の修道女はただ不安そうな目をして沈黙している。
「実は、我々はある罪人を探しているのです。そこで、教会内部を含めこの周辺を改めさせては貰えないかと。もちろん本日中には捕縛いたしますので、市井の方々に危害が及ぶ可能性は万一にもありません」
「なるほど……しかし、ご心配には及びませんわ」
「は? というと」
「事情は全て把握し、犯人の居場所も存じております」
 余裕を感じさせる態度をあくまでも崩さず、何気ない調子で放たれたトリーシェの一言に、少女騎士たちは最初聞き違いかと耳を疑った。
「マーグレイさん。いったい、それは……」
「トリーシェとお呼びください、少尉。いえ、わたしも詳しい話はまだ聞いていませんが、シスター・ジズによるとどうも昨夜、人殺しがこの教会にやってきて助けを求めたそうで」
 深紅の少女が背後に目くばせをすると、つられるようにリエーレも視線の先にいる修道女の姿を見た。
「……っ」
 ジズはうつむき、相変わらず何も言わない。
 ウィーグルの知る、不遜な教会連中とはずいぶんイメージの異なる女だ。
「心優しいシスターは神の教えに従い、救いの手を差し伸べました。しかしわたしは、たとえ親友から憎まれようとも罪人を騎士様方へ引き渡すべきであると考えます。孤児院の子供たち、そして我が友ジズの安全のためにも」
 トリーシェはまるで台詞を用意していたかのように雄弁に語る。
 それだけに真意を図りかねる。端的に言うと、非常に嘘っぽいのだ。
 だが彼女の話を信じるのなら、犯人はすぐに捕まえられる。
「……事情はわかりました。シスター、あなたの立場もわかりますが、我々は罪人を捨て置くことはできません」
「で、でも……っ」
 それまで沈黙していたシスターは小突かれたように声を上擦らせ、ささやかな抵抗を示す。
「でも、えと、あの人は、やってないって……身体が勝手に動いて……自分じゃない自分がやったんだって……!」
(自分じゃない自分?)
 傍から聞くと下手な言い訳にすらならない罪人の言葉だが、ウィーグルは小さな引っ掛かりを覚えた。
 不思議な事があればマホウと結びつけるのは、盗賊時代からの癖のようなものだ。
 自分ではない自分。意思とは別に動く身体。それはもしや、魔道具が関係しているのではないか?
 カラダの交換という超常を経験したウィーグルは、その話を軽視することは出来なかった。
「どういうことです、シスター? 詳しく教えてください」
「わ、わかりません……ぼ……わた、しはただ、助けなきゃって……」
 混乱しているのかもともと気が弱いのか知らないが、ジズは今にも泣き出しそうな顔をして首を横に振る。
 見ていると嗜虐心がそそられる仕草だ。
「我らが心優しきシスターは、罪人の妄言すら真摯に受け止めてしまうのです。彼女を責め立てるような真似はおやめくださいませ、騎士様?」
「そんなつもりじゃなかったんだが……」
「……ぷっ。何よ、その変な言葉遣い。まぁ、わたしも貴女のこといえないけどね」
 突然、これまでまとっていた高貴な雰囲気がガラリと変わり、街娘のような気さくな笑みを浮かべる。
 だがウィーグルは違和感を覚えることなく、当たり前のようにトリーシェの豹変を受け入れることができた。
「ご無沙汰ね、リタ。最後にお茶会をしたのはいつだったかしら」
「確か半年ぐらい前、だったかな」
 『リタ』とトリーシェは、家柄の差はあれど貴族同士のつながりで何かと懇意にしている。そのことを改めて思い出すまでもなく、ウィーグルは「覚えて」いた。
 商会の娘はまさか目の前の友人が商売を邪魔し続けた盗賊だとも知らず、にこやかにしている。
(くひひ……だいぶ馴染んできたな)
 初見の人間関係すら違和感なく応じる事が出来た今、『リタ』を完全に掌握したといっても過言ではない。
 思い起こせば自分は厩舎の場所にも戸惑わず、考えるまでもなく愛馬の傍に立ち、難なく乗りこなしていたではないか。少女騎士リタの全てがウィーグルに引き継がれていることは、もはや疑うべくもなかった。
 あとはもう、「変えて」いくだけだ。
 男が苦手で、真面目な少女騎士を、自分の身体として、自分の好みに合わせて自由に使わせてもらう。
(そうさ……いずれ、この女も俺のモノにしてやる)
 豪商の令嬢だけあって、トリーシェの容貌はかなり優れている。騎士団の女と違い、力任せに迫ればどうとでもできる点も好ましかった。
 めくるめく未来図を思い描きこぼれそうになる下品な笑い声を、ウィーグルは必至で抑える。
「ジズ。騎士様方に彼女を引き渡しましょう? それがみんなのためなのよ」
「トリーシェ……」
「我々からもお願いします。決して、悪いようには致しません」
 トリーシェとリエーレ、そしてジズは、邪悪な算段が渦巻く『リタ』の胸中に気付きもせず、衛兵殺しの犯人に夢中だった。
 もっと凶悪な盗賊の頭がすぐ傍にいるのに、誰も気付かない。それがまた、おかしくてたまらなかった。


 結局、シスター・ジズは説得に応じ、孤児院の一室に隠れていた罪人はあっさり捕まった。小柄な元メイドの少女は一晩中泣きはらしていたのか、憔悴し、抵抗らしい抵抗はほとんど見せなかった。
「わたしじゃ……ないんです……わたしじゃ……」
 縛り付けて王城へと戻る道中、ぶつぶつと無実を訴える様子はまるで狂人だった。



 謁見室に通された元メイドの少女は、彼女を捕縛したリエーレ小隊の三人と、上司にあたるメイド長、そして第一王女アトラや数人の陪審員が居合わせる中、公平な裁きを受けた。
 結論から言うと彼女は死刑を免れ、しばらくの獄中生活の後に恩赦が与えられるらしい。
 地下牢に放り込まれると聞いたときウィーグルは本物のリタが何か余計なことを言わないかと危惧したが、予想通り兄のことを思ってか、新しい囚人に戸惑いを浮かべただけだった。
「話のわかるヤツなら、仲間にしてやっても良かったんだがなぁ」
 一日の仕事が終わり家路への道すがら、自分の指に嵌めた旧文明の遺物を昨日と同じように夕日にかざす。
 魔道具を使えば、自分と同じく元メイドも誰かと入れ替わって脱獄できるだろう。────しかし、どう考えても得より損の方が大きい。
 恩赦の約束された囚人に脱獄を持ちかけたところで、何が期待できるというのか。誰も彼もを仲間に引き入れ、裏切られてしまっては目も当てられない。
 手駒は、厳選するべきだ。
「……そうだな、そろそろ頃合か」
 『リタ』の全てを手中に収めた今、いつまでも正義の騎士様ごっこを続けるつもりはない。
 一旦アジトに戻り、本格的な計画を立てるべきだ。
 盗賊団のリーダーを捕らえ、問答無用で投獄したあの姫騎士に復讐を。

 シュバルツェン王国第一王女、アトラ。

 彼女が絶望に染まる瞬間はきっと、リタと入れ替わったとき以上に愉快な興奮を呼ぶだろう。
「待ってろよ、お姫様ぁ。くひひひひひっ!」
 街中で突如笑い出した「少女騎士」を、道行く人々は不思議な顔をして見ていた。





盗賊の章、折り返し地点到着
ターン終了
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No title

トリーシェは是非とも餌食になってほしいですね!
容貌に優れて自信に満ち溢れ、誰かに自分が害されるなど露ほども思ってない人間が屈辱と絶望に染まるのは最高のご馳走ですから!

三つの魔道具が思わぬ遭遇を引き起こしましたが、この先三者がどう絡んでくるのか楽しみです。

コメントありがとうございます

>nekome さん
コメントありがとうございます!
折り返しに入り、中ボスの貴族娘もそろそろ餌食になります
慈悲などかけるつもりはないので、是非とも彼女の凋落をお楽しみいただければと