ヤ サ シ イ セ カ イ 16
もあもあ更新
憑依大臣のつづきです
R18要素があるのでご注意ください
ヤ サ シ イ セ カ イ ~ソウルイーター 4
自らの手で缶詰のフタを開け、臭みの残る安い肉を口に運び、噛み千切ることが困難な硬いパンを苦労して咀嚼する。
かつて酒を浴びるほど飲み、宮廷料理人の作る豪華な夕食を毎日食べていた元大臣ドラウザにとって、今の自分はひたすら惨めだった。
「くそぅ……くそぅ……!」
パンくずをこぼしながら、冷たいだけが取り柄の地下水で口の中を強引に流し込む。
粗末な食事がようやく終わり、ドラウザは視界の隅で不愉快の一端を担っていたエルフの女に目を向けた。
「食料室を開放しろ!」
ドラウザの一喝が地下書庫に響き、本を読んでいた女がゆっくりと顔を上げる。
それぞれ色彩の異なる瞳が涼やかに細められ、マギカの視線が元大臣の姿を捉えた。
「まだ食べ足りないのですか? ご健啖ですね」
「たわ言はいらん! この最悪な気分を、魔道具を使って晴らそうというのだ!」
今日もドラウザは、マギカから大量の仕事を与えられた。
拒むのは簡単だが、そうもいかない。
ドラウザが真面目に働いているか。また、妙な企てをしていないか。そういった点を確認し、上層部に報告をする仕事を仰せ司った監査役が出入りするようになったのだ。
監査の目を誤魔化すため、ドラウザは下等種族のエルフに従い、重い体を引きずり書棚の整理をしなくてはならなかった。
どんな人間も支配できるマホウの力を持ちながら、今まで見下していた存在にアゴで使われる不快感たるや相当なものだ。
「監査が気になるのでしたら、マホウで排除してはいかがですか?」
「ふん、愚か者め」
マホウを使い監査に憑依してしまえば、たしかに上層部に報告はできない。それどころか、乱心を装ってナクア姫に狼藉を働くことも可能だろう。
しかし自分以外の男が姫を抱くというのは到底容認できないことだし、そんなことのために魔道具を使うのも勿体ない。
「そもそも今いる監査を消したところで、また新しい人間が派遣されるだけだ。いたずらに不審を買うことはあるまい」
「なるほど、さすがですドラウザ様」
「く……っ」
マギカの口調は、半紙の上の文字をなぞっているかのように感情的ではない。上っ面だけの賞賛のセリフは、馬鹿にされた気分になる。
「どうぞ、お使いください」
懐から真鍮の鍵が差し出されると、ドラウザは機敏な動作でそれをひったくった。
「最初から素直に渡せばよいものを」
食料室へ入るためには、司書であるマギカの承認が必要だ。カウンター机の裏にある扉は常に施錠され、勝手に入ることができない。
(いや、待て……)
扉は常に施錠されている? 否。そうでなかったことがある。
ドラウザが魔道具【ソウルイーター】を見つけたあの日、食料室は自由に出入りが可能だった。
「……なぜあの日、鍵は開いていた?」
「掛け忘れました」
よどみなく答えるのだから、余計怪しい。
「ワシが地下書庫に来たその日にか? 偶然にしては出来すぎだ。……ふん、まぁ良い」
マギカによって仮に仕組まれたことだとしても、結果的に自分は魔道具を手に入れ、愛すべき姫君に乗り移ることができるようになった。その事実に間違いはないし、ドラウザも満足している。
だが「うまい具合に手のひらで踊っている」、などとエルフごときに勘違いされるのだけは、プライドが許さなかった。
「よく聞けエルフめ。ワシを利用しているつもりでいるなら、必ず後悔するぞ?」
「利用などと、とんでもございません。私は、ドラウザ様の忠実な下僕です」
忠実な下僕はやはり無感情無感動のまま、身じろぎ一つせず言葉だけでひざまずいた。
*:ナクア
広々とした食堂には、ナクア一人しか座っていなかった。
父王や姉姫と共に囲うべき食卓は、一人分の料理が並べられているだけだ。それでも小さな体の彼女には多すぎるぐらいの量だった。
姉姫アトラは姫騎士の称号を勝ち取ってからというもの、騎士団の仕事を優先することが多くなった。
最強の騎士レギオニウスと共に国の治安を守るアトラを、ナクアは自分のことのように誇らしく思う。今日も、突如として街で発生したデモに対し騎士団は穏健な手段での鎮圧を行っている。
今頃は、民衆の不平不満やいわれのない罵詈雑言を浴びせかけられているのだろう。そう考えると、城にこもってのんきに食事をしている自分が恥ずかしくもあった。
ナクアは食事の手を止めると、いつもはアトラが座っている空席に向かって独り言を囁く。
「……手ぬるいと思うよ。姉様」
アトラは優しい。
剣を振るう確かな実力がありながら、荒事は最終手段とし、強行策などめったに取らない。可能ならば、誰も傷つかず騒ぎが収まれば良いなどと夢見がちなことを考えているに違いない。
だが優しさを与えれば与えるほど、民衆は増長する一方だ。時には武力をもって反乱の芽を潰す行動も…………。
(わ、私、いま、何を考えて……!?)
ハッとなり、ナクアは今しがた頭によぎった自分の考えに戦慄した。
暴力で民衆の心を支配する? おぞましい独裁的な思想をしてしまった上に、敬愛すべきアトラに冷笑の念まで向けていた先ほどの自分が信じられなかった。
「わ、私……なんだか、最近……変……」
夜中に勝手にベッドから抜け出していたり、勉強中だったはずがいつの間にか自分の胸を撫で回していたり。
記憶にない行動をとることがある一方で、今のように普段なら思いも寄らないことを考えてしまう時もあった。
この食事にしてもそうだ。
(お酒……飲みたいな)
目の前の料理を手当たり次第に食べ散らかし、ワインで流し込む快感など知るはずがないのに、それが恋しいと思っていた。
飲酒など一回もしたことはないし興味もなかったのに、なぜこんなことを思うのか。
「それに……はっ、んむぅ……」
チーズで焼いた鶏肉のひとかけらを口に運び、咀嚼する。
肉を舌で転がし、歯を使って噛み砕き、唾液を分泌し、ノド奥へと導く。そんな、当たり前すぎて気にも留めない食事の段取りが、なぜか妙に興奮した。
「おいしい……はむっ、んっ……ちゅっ」
命が失われて久しい肉塊にキスをして、表面を舌で舐める。乳酪の香りが鼻腔を刺激し、唇がオリーブ油で濡れる。
たったそれだけのことで背筋がゾクリと震え、尿意を催す感覚に似た下肢の疼きをナクアは感じ取った。
「はぁ……はぁ……っ」
くるりと食堂に視線をめぐらせる。
誰もいない。間近に迫った夜会の準備に追われ忙しいのか、使用人もいなかった。
胸の動悸はいつまで経っても治まる気配を見せず、ナクアはそっとスカートの中に手を忍ばせた。
「んっ……あっ……」
触れた瞬間、漏れそうになった声を慌てて抑える。
快感に流されるまま嬌声を上げてしまえば、さすがに誰かが入ってくる。声を忍ばせ、物音を立てず、ナクアは食卓から少し身を引くと椅子に座ったままスカートの前面をめくり上げた。
「やだ……もう、ちょっと濡れちゃっている……」
ただ食事をしていただけなのに、ナクアの下着はしっとりと水気を帯び、シミを作り出していた。
レースの付いた白い下着が割れ目にはりつき、卑猥な形をかすかに浮かび上がらせている。
「ん、んくっ……、はぁ……あっ、うぅ……くんぅっ」
ナクアは下着の外周に手を添え、敏感な箇所を焦らすように指を優しく動かした。
太ももがゾクゾクと震え、体の奥から蜜が更にあふれ出していくのがわかる。
「すご……これ……はぁ、んんっ、キモチ、イ、んぁっ」
自らを慰める行為を知識では知っていても、実際に行ったのは片手で数えるほどだ。その内容も、興味の赴くままに性器をいじり、襲い来る快楽に翻弄されるままわけもわからず果ててしまう場合がほとんどだった。
しかし今日は違った。
まるで何人もの女性を相手にしてきたかのような手馴れた動作で、下着の上から割れ目をなぞっていく。
溢れ出す粘液を布地の内側と絡ませ、わざと卑猥な音を立てる。足の付け根からクチュクチュという水音を響かせ、時には指先の動きに緩急をつけ、淫らな遊戯を愉しむ余裕さえあった。
「はぁっ、あああっ……くぅんっ! だめ……こんなとろこで、んっ、こんな、こと……んぁぅっ」
寝室ならばいざ知らず、普段は父や姉もいる食堂で自らを慰めているという背徳感にナクアの顔が火照る。
しかし、やめなければと思う心とは裏腹に、敏感な箇所を攻める指はますます動きを激しくした。
「ひぅっ……あ、ん……っ、んん…っ! はぁっ、すご……くぅっ、止まら、ない……んっ、あ……ひふぅッ……!」
荒々しく息を吸うと、カラダから立ち上る女の匂いが鼻先に抜け、脳が甘く痺れる。
とてつもなく良い香りに包まれ、目眩がした。
「すぅ……はぁ……すぅ……んんぅっ……! ふぁ、あ、ああっ。変だよ……私、自分の匂いに、興奮しちゃってる……うぅん!」
空いている方の手で白金の髪を手繰り寄せ、思い切り嗅いでみる。
鼻腔に広がる自らの香りに全身が打ち震え、悦んでいた。
「すん、すん。……あはぁ、私、どうしたんだろう……。気持ちいいの、んっ、やめられない……はぁっ」
扉の向こうには衛兵もいるし、仕事を終えたアトラやクレアがいつ戻ってくるかもわからない状況だ。
だが今のナクアにとって、そのリスクは逆に刺激的なシチュエーションにしか感じられなかった。
もし見られたら……それを想像するだけで、膣奥からの分泌液がいっそう濃厚になる。
(な、なに考えているの、私……!)
自分が自分でないような発想の飛躍に、ナクアは戸惑っていた。
きっと、今の状態が自分をおかしくしているんだ。そう判断し、ナクアは下着の隙間に細い指を二本差し入れた。
「はぁ、はぁ……っ。んっ、は、早く、早く、終わらせなきゃ……んぁあっ!」
肉襞の入り口を爪の先端が直に引っ掻き、一際大きな声が食堂に響く。
イクまで止まらないとばかり思っていた体が硬直し、耳に全神経を集中させた。
(誰も……こない、よね)
今の声が外に漏れたわけではないとわかり、ほっと一息つく。が、それも束の間だった。
「……ふぁっ、ああっ、あふっ、や、せ、せっかく、止まったのに……んやぅ!」
まだ何者の侵入も許したことのない秘所を指先でかき回され、ナクアは再び嬌声を上げる。
ぷっくりと膨らんだ肉芽の存在を感じ取ると、下着の上からそこを指で押し潰した。刹那、雷のような衝撃に貫かれる。
「きゃあぅん! んぐっ……!」
薄れ弱まった最後の理性を働かせ、せめてもの抵抗とばかりにナクアは口を塞いだ。
涙目になりながらくぐもった吐息を漏らし、激しい動きで秘所を弄る姿はまるで自分で自分を犯しているかのようだ。
「んっ、んん……はぁっ、あぁっ……あ、あッ、はぁあぁんっ……!」
(やぁ、あっ、ひゅう、ひふぅ、これ、気持ちいい。気持ちいい、よぉ……!)
聡明たる第二王女ナクアの頭の中は肉欲に支配され、すでに快楽を貪ることしか考えられなくなっている。
肉芽をぐりぐりと撫で回し、愛液に濡れた指先で割れ筋の内側をなぞり、彼女は快楽を高めていった。
溢れ出た蜜汁が太ももをつたい、スカートの内側を、イスを、床を汚していく。
(んっ、んん! はぁっ、もう、だめ、あっ……ぁっ、ああっ! 来る……うぅんっ! ふわぁッ!)
末端が痺れ、絶頂の予感に脳内が白み始める。
潤んだ視界をぎゅぅっと闇に閉ざし、最後に二本の指で直接肉芽を摘み上げた。
膣内が収縮し、頂点に上り詰める。
(だめっ、やだっ、イッちゃう、イク……あああああッ────────ッ!!)
「はぁっ! んはぁぁぁっ……あぁっ、はぁ、ふぁ……あっ……はぁぁ……んっ……んぅ……」
身体に残る快楽の余韻に震えながら、ナクアはしばらく陶然とした目つきであらぬ方向を見つめていた。
シャンデリアが照らす高い天井には、当然ながら誰もいない。
それなのになぜか、しばらく前から誰かに見られていたような……そんな気配を感じていた。
「気のせい……だよね。んっ、はぁ、それより……お風呂、入らなきゃ」
立ち上がると、下着はもちろんスカートやイスもずぶ濡れになっていた。
なんとか誤魔化せないかと視線をめぐらせ、水に入ったグラスをわざとこぼす妙案を思いつく。
そんなことをしてしまえば使用人の仕事を増やしてしまうのだが、ナクアはためらいなく実行に移した。
(……ずるいなぁ、私)
自分はこんなにも、嘘や誤魔化しをスムーズに行える人間だっただろうか。
違和感を感じながらも、ナクアは呼び鈴を鳴らし、やって来たメイドにそ知らぬ顔で浴場の準備をするよう命じるのだった。
大臣の出番は次のターンで
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憑依大臣のつづきです
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ヤ サ シ イ セ カ イ ~ソウルイーター 4
自らの手で缶詰のフタを開け、臭みの残る安い肉を口に運び、噛み千切ることが困難な硬いパンを苦労して咀嚼する。
かつて酒を浴びるほど飲み、宮廷料理人の作る豪華な夕食を毎日食べていた元大臣ドラウザにとって、今の自分はひたすら惨めだった。
「くそぅ……くそぅ……!」
パンくずをこぼしながら、冷たいだけが取り柄の地下水で口の中を強引に流し込む。
粗末な食事がようやく終わり、ドラウザは視界の隅で不愉快の一端を担っていたエルフの女に目を向けた。
「食料室を開放しろ!」
ドラウザの一喝が地下書庫に響き、本を読んでいた女がゆっくりと顔を上げる。
それぞれ色彩の異なる瞳が涼やかに細められ、マギカの視線が元大臣の姿を捉えた。
「まだ食べ足りないのですか? ご健啖ですね」
「たわ言はいらん! この最悪な気分を、魔道具を使って晴らそうというのだ!」
今日もドラウザは、マギカから大量の仕事を与えられた。
拒むのは簡単だが、そうもいかない。
ドラウザが真面目に働いているか。また、妙な企てをしていないか。そういった点を確認し、上層部に報告をする仕事を仰せ司った監査役が出入りするようになったのだ。
監査の目を誤魔化すため、ドラウザは下等種族のエルフに従い、重い体を引きずり書棚の整理をしなくてはならなかった。
どんな人間も支配できるマホウの力を持ちながら、今まで見下していた存在にアゴで使われる不快感たるや相当なものだ。
「監査が気になるのでしたら、マホウで排除してはいかがですか?」
「ふん、愚か者め」
マホウを使い監査に憑依してしまえば、たしかに上層部に報告はできない。それどころか、乱心を装ってナクア姫に狼藉を働くことも可能だろう。
しかし自分以外の男が姫を抱くというのは到底容認できないことだし、そんなことのために魔道具を使うのも勿体ない。
「そもそも今いる監査を消したところで、また新しい人間が派遣されるだけだ。いたずらに不審を買うことはあるまい」
「なるほど、さすがですドラウザ様」
「く……っ」
マギカの口調は、半紙の上の文字をなぞっているかのように感情的ではない。上っ面だけの賞賛のセリフは、馬鹿にされた気分になる。
「どうぞ、お使いください」
懐から真鍮の鍵が差し出されると、ドラウザは機敏な動作でそれをひったくった。
「最初から素直に渡せばよいものを」
食料室へ入るためには、司書であるマギカの承認が必要だ。カウンター机の裏にある扉は常に施錠され、勝手に入ることができない。
(いや、待て……)
扉は常に施錠されている? 否。そうでなかったことがある。
ドラウザが魔道具【ソウルイーター】を見つけたあの日、食料室は自由に出入りが可能だった。
「……なぜあの日、鍵は開いていた?」
「掛け忘れました」
よどみなく答えるのだから、余計怪しい。
「ワシが地下書庫に来たその日にか? 偶然にしては出来すぎだ。……ふん、まぁ良い」
マギカによって仮に仕組まれたことだとしても、結果的に自分は魔道具を手に入れ、愛すべき姫君に乗り移ることができるようになった。その事実に間違いはないし、ドラウザも満足している。
だが「うまい具合に手のひらで踊っている」、などとエルフごときに勘違いされるのだけは、プライドが許さなかった。
「よく聞けエルフめ。ワシを利用しているつもりでいるなら、必ず後悔するぞ?」
「利用などと、とんでもございません。私は、ドラウザ様の忠実な下僕です」
忠実な下僕はやはり無感情無感動のまま、身じろぎ一つせず言葉だけでひざまずいた。
*:ナクア
広々とした食堂には、ナクア一人しか座っていなかった。
父王や姉姫と共に囲うべき食卓は、一人分の料理が並べられているだけだ。それでも小さな体の彼女には多すぎるぐらいの量だった。
姉姫アトラは姫騎士の称号を勝ち取ってからというもの、騎士団の仕事を優先することが多くなった。
最強の騎士レギオニウスと共に国の治安を守るアトラを、ナクアは自分のことのように誇らしく思う。今日も、突如として街で発生したデモに対し騎士団は穏健な手段での鎮圧を行っている。
今頃は、民衆の不平不満やいわれのない罵詈雑言を浴びせかけられているのだろう。そう考えると、城にこもってのんきに食事をしている自分が恥ずかしくもあった。
ナクアは食事の手を止めると、いつもはアトラが座っている空席に向かって独り言を囁く。
「……手ぬるいと思うよ。姉様」
アトラは優しい。
剣を振るう確かな実力がありながら、荒事は最終手段とし、強行策などめったに取らない。可能ならば、誰も傷つかず騒ぎが収まれば良いなどと夢見がちなことを考えているに違いない。
だが優しさを与えれば与えるほど、民衆は増長する一方だ。時には武力をもって反乱の芽を潰す行動も…………。
(わ、私、いま、何を考えて……!?)
ハッとなり、ナクアは今しがた頭によぎった自分の考えに戦慄した。
暴力で民衆の心を支配する? おぞましい独裁的な思想をしてしまった上に、敬愛すべきアトラに冷笑の念まで向けていた先ほどの自分が信じられなかった。
「わ、私……なんだか、最近……変……」
夜中に勝手にベッドから抜け出していたり、勉強中だったはずがいつの間にか自分の胸を撫で回していたり。
記憶にない行動をとることがある一方で、今のように普段なら思いも寄らないことを考えてしまう時もあった。
この食事にしてもそうだ。
(お酒……飲みたいな)
目の前の料理を手当たり次第に食べ散らかし、ワインで流し込む快感など知るはずがないのに、それが恋しいと思っていた。
飲酒など一回もしたことはないし興味もなかったのに、なぜこんなことを思うのか。
「それに……はっ、んむぅ……」
チーズで焼いた鶏肉のひとかけらを口に運び、咀嚼する。
肉を舌で転がし、歯を使って噛み砕き、唾液を分泌し、ノド奥へと導く。そんな、当たり前すぎて気にも留めない食事の段取りが、なぜか妙に興奮した。
「おいしい……はむっ、んっ……ちゅっ」
命が失われて久しい肉塊にキスをして、表面を舌で舐める。乳酪の香りが鼻腔を刺激し、唇がオリーブ油で濡れる。
たったそれだけのことで背筋がゾクリと震え、尿意を催す感覚に似た下肢の疼きをナクアは感じ取った。
「はぁ……はぁ……っ」
くるりと食堂に視線をめぐらせる。
誰もいない。間近に迫った夜会の準備に追われ忙しいのか、使用人もいなかった。
胸の動悸はいつまで経っても治まる気配を見せず、ナクアはそっとスカートの中に手を忍ばせた。
「んっ……あっ……」
触れた瞬間、漏れそうになった声を慌てて抑える。
快感に流されるまま嬌声を上げてしまえば、さすがに誰かが入ってくる。声を忍ばせ、物音を立てず、ナクアは食卓から少し身を引くと椅子に座ったままスカートの前面をめくり上げた。
「やだ……もう、ちょっと濡れちゃっている……」
ただ食事をしていただけなのに、ナクアの下着はしっとりと水気を帯び、シミを作り出していた。
レースの付いた白い下着が割れ目にはりつき、卑猥な形をかすかに浮かび上がらせている。
「ん、んくっ……、はぁ……あっ、うぅ……くんぅっ」
ナクアは下着の外周に手を添え、敏感な箇所を焦らすように指を優しく動かした。
太ももがゾクゾクと震え、体の奥から蜜が更にあふれ出していくのがわかる。
「すご……これ……はぁ、んんっ、キモチ、イ、んぁっ」
自らを慰める行為を知識では知っていても、実際に行ったのは片手で数えるほどだ。その内容も、興味の赴くままに性器をいじり、襲い来る快楽に翻弄されるままわけもわからず果ててしまう場合がほとんどだった。
しかし今日は違った。
まるで何人もの女性を相手にしてきたかのような手馴れた動作で、下着の上から割れ目をなぞっていく。
溢れ出す粘液を布地の内側と絡ませ、わざと卑猥な音を立てる。足の付け根からクチュクチュという水音を響かせ、時には指先の動きに緩急をつけ、淫らな遊戯を愉しむ余裕さえあった。
「はぁっ、あああっ……くぅんっ! だめ……こんなとろこで、んっ、こんな、こと……んぁぅっ」
寝室ならばいざ知らず、普段は父や姉もいる食堂で自らを慰めているという背徳感にナクアの顔が火照る。
しかし、やめなければと思う心とは裏腹に、敏感な箇所を攻める指はますます動きを激しくした。
「ひぅっ……あ、ん……っ、んん…っ! はぁっ、すご……くぅっ、止まら、ない……んっ、あ……ひふぅッ……!」
荒々しく息を吸うと、カラダから立ち上る女の匂いが鼻先に抜け、脳が甘く痺れる。
とてつもなく良い香りに包まれ、目眩がした。
「すぅ……はぁ……すぅ……んんぅっ……! ふぁ、あ、ああっ。変だよ……私、自分の匂いに、興奮しちゃってる……うぅん!」
空いている方の手で白金の髪を手繰り寄せ、思い切り嗅いでみる。
鼻腔に広がる自らの香りに全身が打ち震え、悦んでいた。
「すん、すん。……あはぁ、私、どうしたんだろう……。気持ちいいの、んっ、やめられない……はぁっ」
扉の向こうには衛兵もいるし、仕事を終えたアトラやクレアがいつ戻ってくるかもわからない状況だ。
だが今のナクアにとって、そのリスクは逆に刺激的なシチュエーションにしか感じられなかった。
もし見られたら……それを想像するだけで、膣奥からの分泌液がいっそう濃厚になる。
(な、なに考えているの、私……!)
自分が自分でないような発想の飛躍に、ナクアは戸惑っていた。
きっと、今の状態が自分をおかしくしているんだ。そう判断し、ナクアは下着の隙間に細い指を二本差し入れた。
「はぁ、はぁ……っ。んっ、は、早く、早く、終わらせなきゃ……んぁあっ!」
肉襞の入り口を爪の先端が直に引っ掻き、一際大きな声が食堂に響く。
イクまで止まらないとばかり思っていた体が硬直し、耳に全神経を集中させた。
(誰も……こない、よね)
今の声が外に漏れたわけではないとわかり、ほっと一息つく。が、それも束の間だった。
「……ふぁっ、ああっ、あふっ、や、せ、せっかく、止まったのに……んやぅ!」
まだ何者の侵入も許したことのない秘所を指先でかき回され、ナクアは再び嬌声を上げる。
ぷっくりと膨らんだ肉芽の存在を感じ取ると、下着の上からそこを指で押し潰した。刹那、雷のような衝撃に貫かれる。
「きゃあぅん! んぐっ……!」
薄れ弱まった最後の理性を働かせ、せめてもの抵抗とばかりにナクアは口を塞いだ。
涙目になりながらくぐもった吐息を漏らし、激しい動きで秘所を弄る姿はまるで自分で自分を犯しているかのようだ。
「んっ、んん……はぁっ、あぁっ……あ、あッ、はぁあぁんっ……!」
(やぁ、あっ、ひゅう、ひふぅ、これ、気持ちいい。気持ちいい、よぉ……!)
聡明たる第二王女ナクアの頭の中は肉欲に支配され、すでに快楽を貪ることしか考えられなくなっている。
肉芽をぐりぐりと撫で回し、愛液に濡れた指先で割れ筋の内側をなぞり、彼女は快楽を高めていった。
溢れ出た蜜汁が太ももをつたい、スカートの内側を、イスを、床を汚していく。
(んっ、んん! はぁっ、もう、だめ、あっ……ぁっ、ああっ! 来る……うぅんっ! ふわぁッ!)
末端が痺れ、絶頂の予感に脳内が白み始める。
潤んだ視界をぎゅぅっと闇に閉ざし、最後に二本の指で直接肉芽を摘み上げた。
膣内が収縮し、頂点に上り詰める。
(だめっ、やだっ、イッちゃう、イク……あああああッ────────ッ!!)
「はぁっ! んはぁぁぁっ……あぁっ、はぁ、ふぁ……あっ……はぁぁ……んっ……んぅ……」
身体に残る快楽の余韻に震えながら、ナクアはしばらく陶然とした目つきであらぬ方向を見つめていた。
シャンデリアが照らす高い天井には、当然ながら誰もいない。
それなのになぜか、しばらく前から誰かに見られていたような……そんな気配を感じていた。
「気のせい……だよね。んっ、はぁ、それより……お風呂、入らなきゃ」
立ち上がると、下着はもちろんスカートやイスもずぶ濡れになっていた。
なんとか誤魔化せないかと視線をめぐらせ、水に入ったグラスをわざとこぼす妙案を思いつく。
そんなことをしてしまえば使用人の仕事を増やしてしまうのだが、ナクアはためらいなく実行に移した。
(……ずるいなぁ、私)
自分はこんなにも、嘘や誤魔化しをスムーズに行える人間だっただろうか。
違和感を感じながらも、ナクアは呼び鈴を鳴らし、やって来たメイドにそ知らぬ顔で浴場の準備をするよう命じるのだった。
大臣の出番は次のターンで

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