ヤ サ シ イ セ カ イ 17
あと1600…
ヤサシイセカイ4と10(シスター編)の記事を再掲載しました。内容は何も変えていません
ファンタジーなダークTS系のお話です
憑依大臣のターンです
R18要素があるのでご注意ください
ヤ サ シ イ セ カ イ ~ソウルイーター 5
*:ドラウザ
(素晴らしい……!)
魔道具【ソウルイーター】を使い霊体になったドラウザは、早速ナクア姫に憑依をするため彼女の姿を探し求めていた。
ほどなくして発見した姫君は、あろうことか食卓の前で淫らな行為に及び自らを慰めていた。けがれなど一切知らぬ、天の遣わした芸術品とばかり思っていたが、やはり彼女は人間であり女なのだ。
ナクア姫が女として快楽に悶える姿は非常に扇情的で、ドラウザは思わず最後まで魅入ってしまった。
「はぁっ、ふぁ、あっ、はぁぁ……んっ……」
切なげな嬌声を手の隙間から漏らし、姫のカラダがぴくぴくと痙攣する。絶頂を迎えたのだろう。
息も絶え絶えにして天井を仰ぐナクアの瞳が、空に浮かぶドラウザの視線と交じり合った。
「気のせい……だよね」
(なんだと? ……ま、まさか、姫様にはワシの姿が見えて?)
もしそうなら、それはとてつもなく素晴らしいことだ。
魂だけの存在になったドラウザを、ナクア姫だけは認識できる。それはつまり、二人の間に特別な絆がある証拠に他ならない。
(ぐふ、ぐふぁはははは! やはりな! ワシと姫は、運命で結ばれているのだ!)
哄笑するドラウザをよそに、自慰を終えたナクアは突然グラスの水を倒すと、呼び鈴を二回鳴らした。
十秒も過ぎないうちに、メイド服の女が現れる。
「お呼びになりましたか、姫様?」
「クレア。ごめんね、お水こぼしちゃった」
事故を装い、しとどに濡れたスカートの裾をつまんで見せる。
自らがこぼしたなどと微塵もにおわせない、見事な演技だった。
「まぁ、大変。すぐにお着替えください。今、代わりの服を……」
「ううん、お風呂入るから。用意してもらえる?」
「ご入浴ですか。かしこまりましたわ、こちらへどうぞ」
姫の虚偽申告を疑いもせず、侍女は笑顔のまま応じた。
二人揃って食堂をあとにし、食卓にはナクアの食べかけだけが残される。
(……ふんっ)
それらに対し興味を抱いたのは束の間のことで、ドラウザもすぐに二人の後を追った。
*
二人が向かった先は、大浴場だった。
ここは、王族と王族に認められた者にしか入浴の許されない、特別な風呂だ。しかしそんなしきたりなど、マホウの前にはなんの効力もない。
入り口で目を光らせる衛兵の前を堂々と通り過ぎ、ドラウザは脱衣所に侵入した。
「それにしても珍しいですわね。姫様が粗相をなさるなど」
「うん……なんだか、ぼぉっとしちゃって」
先に着いていた姫とメイドは姿見の前に立ち、親し気に話をしていた。
侍女は慣れた手つきでドレスを脱がし、ナクアの柔肌を徐々に解き放っていく。
王族の着替えを手伝うのは使用人の務めだが、つやつやとした笑顔で服を取り除いていく女の顔にドラウザは親近感にも似た感情をを覚えた。
しかしその注意は、すぐに別の相手へ移る。
(なんたることだ……! 姫が、姫様がワシの前であられもない御姿になってゆく!)
第三者として初めて見物するナクアの脱衣ショーは、憑依をして自ら脱ぐのとはまた違った興奮を呼び起こした。
レースの付いた、上下揃いの白い下着姿が目前にさらされる。ドラウザは鼻息を荒くして、仰ぎ見るようにナクア姫の下肢を覗き込んだ。
先ほどまで自慰行為をしていたためか、ショーツには大きなシミが作られ、繊維の隙間から漏れた透明な粘液が太ももをテカテカと濡らしている。
「あっ……く、クレア。待って」
濡れ滴るショーツを見られるのはさすがにマズイと思ったのか、ナクアは慌ててメイドを制止する。すでにブラジャーのホックは外され、青い果実がさらけ出される間際のことだった。
「あ、あとは、自分で脱ぐから」
「さようですか? 今更恥ずかしがることもありませんのに……」
いささか怪訝な顔を見せたものの侍女はすぐに身を引き、姫のぬくもりが残る衣類を籠アミに入れていった。
「脱いだ下着は、こちらへお納めください。わたくしは、替えのお召し物を用意してまいりますわ」
侍女はそう言い残すと、脱衣所の扉を音も立てずに閉めた。室内にはナクアと、霊体のドラウザが残される。
邪魔者がいなくなり、しかしドラウザは以前のように性急な憑依は行わない。ここまで来たら、ナクア姫が自らの手で一糸纏わぬ姿になるのを見物するつもりだった。
「んしょ……」
姫が再び鏡と向き合い、中途半端だったブラジャーを完全に外す。白い肌と、淡い色をした乳輪のコントラストがたまらなく美しい。先日はこの胸で、ずいぶんと愉しませてもらった。
ドラウザはその時の快楽を思い出し、血流のない男性器の霊体を勃起させた。
(ぐふ、ぐふ、ぐふひひひひ!)
また、あの快感を堪能できるのだ。しかも、乗り移っていられる時間はどんどん長くなる。
目の前で醜悪な笑みを浮かべる男の存在には気付かず、ナクアはショーツの裾に指を差し入れ、濡れた股間にピッタリはりついていた布地をおもむろに下ろした。
ほぼ無毛に近い、つるりとした性器が露出する。
紅く鮮やかな一本の割れ筋が入った乙女の入り口は愛液でヌラヌラと輝き、粘り気のある糸がショーツの裏地と繋がっていた。
「やだ……糸、引いちゃってる……」
陰部と下着とを連結する粘液にナクアの頬が赤らみ、いまにも泣き出しそうな顔になる。自らの痴態が引き起こした結果を改めて目の当たりにし、心の中で懊悩しているのかもしれない。
(おぉ、姫様。あなたのお悩み、このワシが取り除いて差し上げましょう……!)
ドラウザの我慢も限界だった。
夫になる者しか近づくことの許されない王女の秘所に、肉体という輪郭を捨てた醜い顔が近づく。
(さぁ、その身をワシに委ねてくだされ)
割れ目に鼻先を突きつけ、彼はそのまま、ズブリと頭部を挿入した。
男を受け入れたことのない美しい花弁は、男性器以上の大きさがあるドラウザの頭をみるみる呑み込んでいく。水が体に染み込むように、彼女の体は抵抗さえできず隙間から膣内へと押し入られた。
「うっ……? あぁっ……な、なに……くぅっ」
肉体的苦痛などあるはずがないのに、ナクアは苦しげな声を上げる。一つの体に二つの精神が入り込もうとしている影響か、それともドラウザを受け入れること自体が耐え難いのか。あるいは、その両方かもしれない。
「これ、また……あっ、アアッ」
脚が震え、ぺたりと床に崩れ落ちる。
ナクアは膝頭を突き合わせ、膣内から感じられる何者かの侵入を拒むように太ももを閉じた。
だがその程度では障害にもならない。まるで郷愁に駆られるかのごとくドラウザは彼女の最奥を目指し、黒色に染まった魂を一片も残さず潜り込ませた。
「やっ、あっ……ああぁぁっ!!」
絶頂を迎えたときのように大きく身を反らし、全身をこわばらせる。
青い瞳が虚ろに脱衣所の天井を見上げ、少しの間沈黙が降りる。やがて瞳の中に光を取り戻したナクアは、「ナクア」のものではない屈折した笑みを浮かべた。
「……ぐふっ」
品性のない笑い声を漏らし、自らの肢体を見下ろす。
細い手。小さな胸。華奢なカラダ。白い肌。肌を撫でる白金の髪。美しくあまやかな声。
どこをとってもナクア姫であることは間違いなく、しかし彼女は王族らしからぬ下劣な哄笑を上げた。
「ぐひ、ぐふふふぁはは! 姫様のカラダだ! ははははは!」
幾たび支配しても飽きる事がない可憐な肉体を抱きしめ、ナクアは……ナクアに憑依をしたドラウザは、喜びに打ち震える。
正面の姿見には、元のイノシシのような体と比べふた周り以上も小柄な姫の裸身が映っていた。立ち上がると、目線の低さと股間の頼りなさを改めて認識する。
自らの意思を使って好きなように体を動かし、余すところなく観察する。手のひらで小さな胸や尻を撫で回し、この肉体がいまだ成長過程であることを痛感した。
「ぐふぇっ、しかし、こちらの方がワシの好みですぞぉ……」
ひとしきりべたべた触ると、ドラウザは脱いだ下着をその場に放り捨てて浴室に向かった。
「風呂だ……風呂だぁ。ぐふふふ!」
地下書庫の、ぬるま湯しか流れてこない狭く薄汚い風呂とは違う。広々とした清潔な浴場で、白いもやを立ち上らせる乳白色の湯を思う存分に浴び、体を洗う事が許されている。
ナクアの肉体がお湯に包まれ、じんわりと芯から温まっていく快感を共有する至福を想像し、ドラウザはたゆみきった笑みを浮かべた。
*:クレア
ナクア姫の着替えを手に脱衣所に戻ってくると、クレアは床に脱ぎ捨てられたままの下着を見て首を傾げた。
「まぁ、姫様ったら……散らかしたままだなんて、珍しいですわね」
もっとも、それで嫌な顔をするようならば従者失格である。クレアは身を屈め、少女の秘部を覆っていたショーツを拾い上げた。
「……?」
指先から湿り気を感じ、下着を眺める。
こぼした水がかかってしまったのだろうか。それにしては濡れすぎだし、温かみもある気がした。
さらによく観察しようと鼻先を近づけ、目を細める。だが、自分が何をしているのか気が付くとクレアは慌てて顔をそらした。
「わ、わたくしってば、なんて無礼な……」
他人が脱いだばかりの下着をまじまじと見つめるなどと、それが王族であり年頃の少女のものであればなおのこと、不埒きわまりない行為である。
クレアは洗濯籠の中へ下着を放り込むと、気を取り直して浴室にいるであろう姫に声をかけた。
「姫様、いらっしゃいますか? お湯加減はいかがでしょう」
「おぉ……最高だぁ……」
扉一枚を隔てた向こう側から、中年男性の唸り声のような返事が聞こえる。一瞬聞き間違えかとも思ったが、ナクアの声を自分が間違うはずはないと言い聞かせ、メイド服の裾をまくりあげた。
「お背中、お流しいたしますわ。入ってよろしいでしょうか?」
「んむ? ……うん、わかった。いいよ」
王族の許可を得、扉を開ける。
抱えたツボから湯をとめどなく流す女人の像が立ち並んだ浴槽の中で、ナクアは肩まで湯につかっていた。
トロンとした表情で目を細める姫の顔は、夢見心地といった言葉がとても似合っていた。が、湯面にたゆたう白金の髪を見た瞬間、クレアは戸惑いの声をあげる。
「ひ、姫様、御髪を整え忘れておいでですわ……っ」
「うぅん? あぁ、髪か……そうか、まとめるべきだったか」
湯面に浮かぶ自分の髪に触れ、くるくると手に絡ませ楽しそうに弄ぶ。
下着の件も含め、クレアの違和感はますます大きくなっていった。だが、それをどう言葉にして良いかわからない。
「あとで洗うのだから、髪はこのままで良い。そんなことより、早く背中を流して貰いたいな?」
ナクアが湯船から上がり、遮る物のない濡れた肢体をペタペタと近づけてくる。
立ち上る湯気のみを唯一の衣にした王女は、ぞっとするような美しさを伴う艶やかな笑みを浮かべていた。
「で、では、こちらへ……」
浴室に備え付けられている小さな椅子を差し出し、ナクアを促す。
姫が自分に背を向けて座ると、クレアはやっと人心地がついた気分になった。
(今日の姫様、少し様子が変ですわ……)
疑問に思いながらも、まさか本人に向かってそれを直接問うわけにはいかない。目の前にいるのは、髪の端からつま先まで、クレアが心より慕う第二王女ナクアだった。
その中身が、彼女の嫌悪する悪徳大臣に乗っ取られているなどとはカケラも想像していない。いまだに混乱を抱えながらも、クレアはタオルに石鹸の泡をしみこませ背中を流す準備を整えていった。
「クレア、今日は素手で洗って?」
「素手で、ですか?」
「そう、手に直接シャボンを塗りつけて、そのままワ……私の、体を洗うのよ。胸もアソコも、指で丁寧に……」
妖艶な笑みが向けられ、メイド人生の中で初めて仰せつかった命令にクレアの頭がぐるぐると慌てふためく。
たしかに、タオルを使うより丁寧で、姫の柔肌を傷つけずに済む。初めてとはいえ他人の体を洗う力加減自体は熟知しているし、不快な思いをさせることはないはずだ。
むしろ、いたずらに性感を刺激してしまわないか……ナクアの言い回しではそれも織り込み済みなのだろうが、クレアは自分自身が理性を保てるのか心配だった。
「ほら、早くして。……でないと、一人で勝手に「始める」よ?」
彼女の「中身」が言外にほのめかしているのは、もちろん「一人で勝手に体を洗う」ということではない。だがあくまでもクレアは会話の延長線上でその言葉を額面通りに受け取った。
「お、お待ちください。や、やらせていただきますわっ」
王女ともあろう人間に一人で体を洗わせるなど、使用人の名折れだ。クレアは言われた通り自分の手に石鹸を塗りつけ、泡だらけの手でナクアの首筋に触れた。
「し、失礼致します……」
「うむ。……んひゃっ」
白く細い首周りに手をかけた瞬間、くすぐったさからか、それまでしっとりと奇妙な色気を醸し出していたナクアがビクッと肩を震わせて可愛らしい声を上げる。
年相応の、普段の印象に近い姫の反応を見て、クレアはようやく安堵した。
(やっぱり、姫様は姫様ですわ……ふふっ、わたくしってば、何を考えていたのでしょう)
言い知れぬ不安が取り除かれると、今度はナクア姫に対する情愛の念が溢れてくる。
「姫様のお肌は、本当にお綺麗ですわ……」
「んっ、んひひっ、ぐふぁはははっ」
泡立った指でナクアの首周りを何度も往復し、鎖骨を撫で、瑞々しい腕を上下に扱いていく。肌を擦られるたびに芽生えるムズムズとした感覚に耐え切れず笑顔を作る彼女は、笑い方こそ奇妙だったが陽だまりのような無邪気さを見せていた。
(あぁ、なんて、なんて可愛らしい……)
姫の従者に選ばれ、自分は心の底から幸福であると思う。しかし、じゃれ合いにも似た時間は長く続かなかった。
「んぅ……っ」
腋の下から滑り込むように手を動かし、ナクアの控えめな乳房に触れる。その瞬間、微笑ましかった少女の声色が、女の艶のある吐息へと変質した。
「ん、ぁぅん……ふぁあ……っ」
柔らかな乳肌を指で挟むように揉みほぐし、表皮の汚れを丁寧に擦り落とす。
ただ体を洗っているだけ。タオル越しに触れていたのが指に変わっただけで、何度も繰り返してきた行為だ。自分にそう言い聞かせ、しかしクレアは姫の胸を愛撫をしているような錯覚に陥っていた。
「んっ……んぅんん……あふぅ……んゅっ」
彼女の唇から漏れ聞こえる嬌声が庇護欲を掻き立て、深みへと惑わされる。
クレアは白い肌の中で唯一色彩を放つ、桜色の乳首へと指先を伸ばした。
「うぁんっ、にゃぅぅぅっ……!」
山猫のような鳴き声を上げ、ナクアの体がびくりと震える。手のひらから心臓の鼓動が伝わり、それと併せてクレア自身の動悸も激しくなっていった。
「ひ、姫、さま……ナクア様……」
密着し、両手で彼女の小さな体を掻き抱いたまま名前を囁く。
「ぁんっ……うぅ……ふあんっ、く、クレアぁ……あぁんっ」
ナクアの口からも切なげに名前が紡がれ、濡れた眼差しが侍女を振り向いた。
空のような青い瞳の中に、嫌悪の色はない。戸惑いすら浮かべておらず、あるのは快楽を求める蟲惑的な輝きだけだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……ナクア様……」
クレアの右手が、乳首から離れ下方へ向かう。
腰の曲線をなぞり、わき腹を撫で、へその穴をつつき、さらにその下へと滑り落ていく。
(姫様……ナクア様……お慕い申し上げております……!)
叶わぬ夢と思っていた。過ぎたる願いと諦めていた。
だがいまこの瞬間、ナクアとは想いを共有しているのだと確信が持てる。自分は、姫と結ばれても良いのだ。
それが全て勘違いであるなどとは露とも知らず、クレアは衝動に駆られるまま姫の唇を奪った。
「んむっ!? んれっ、むぉっ……! ぷぁ、ちゅ、んちゅ……っ!」
ついばむような軽いキスを荒々しく何度も繰り返し、ナクアの唇が唾液で濡れる。その唾液をまたクレアが舐め取り、また唇を触れ合わせる。
「ぷぁっ、ナクア様……! わたくし、もう自分を抑え切れません……申し訳ございません!」
(ぐふっ、ぐふふっ……)
その性急なクレアの行為を、ナクアの「中」に潜むドラウザは予見していた。
クレアは、自分の同類だ。姫を愛し姫に劣情を催す、彼女自身が閑職に追いやった男となんら変わらぬ人間である。
姫の姿で少し誘惑してやれば、レズ行為に走ることは充分予想できた。
「ま、待ってクレア……うむぅんっ!」
『ナクア』らしい反応を示してみても、クレアは止まらない。
唇を唇で塞ぎ、下肢に伸びていた指が姫の恥丘を撫で、割れ目の入り口を滑った。
王女の肉体は先ほどのオナニーとクレアの愛撫によって、とっくに潤っている。秘唇がメイドの細い指をくわえ込むと、『ナクア』は恥も外聞もなく喘ぎ声を上げ、膣肉を震わせた。
「ひぅっ、ああ、ん……っ、ゃぅんっ」
「き、気持ちいいですか、ナクア様? いかがですか?」
「ふあっ……ぅんっ! はぁ、はぁ! あはぁ、あっ!」
クレアは処女膜を傷付けぬようナカをかき回し、愛しい姫君の口から喜悦の声を次々に引き出していく。
女の最も敏感な箇所の包皮をめくり、現れた肉芽を乳首と同時に軽く摘み上げた。
「あっ、ああああッ!? くひぃ、うぅんんんッ!」
太ももをぶるりと痙攣させて、ナクアが甘い悲鳴を上げる。軽度のオーガズムに達したのだ。
クレアは知る由もないが、事前に一度絶頂を迎えていたことや、彼女の「中身」が女性として味わう快楽にまだ慣れきっていなかったがゆえの鋭敏な反応だった。
「ぐひぃ、ひうっ、ふっ、あ、あああ……」
軽めであれ、それでも「中身」のドラウザにとって初めて味わうナクアの快感は凄まじいものだった。半開きになった口から淫靡な吐息と唾液を漏らし、クレアに力なく身を預ける。
くたりと脱力する姿に、メイドは上機嫌のまま勘違いを続けた。
「もう、イッてしまわれたのですか? もしや、こういう経験は初めてですか?」
自分の愛する者は清純であり、自らを慰める行為など知りもしないのだ。
そんな思い違いからか、ナクアの肢体を撫でる手つきの優しさに磨きが掛かる。
「わたくしにお任せください……もっと、もっと気持ちよくなれますわよ、ナクア様」
「…………んうぅっ…………クレ、ア…………」
蕩けた双眸がメイドを見つめ、ポツリと、しかしハッキリと、ナクアは言葉を発した。
「なに……してるの?」
「……え?」
青い瞳が耽溺から戸惑いへ、そしてじわじわと恐怖の色を濃くしていく様子に、淫ら一色だったクレアの頭も急激に冷やされる。
「どうして、こんな……んっ、やだ、は、離して……んっ……やぁっ!」
体をジタバタとさせ、胸と陰部に触れる腕を慌てて払いのけようともがく。心地良い重みを与え睦言を交わせそうなほど密着していた小さな背中が遠ざかり、秘唇の内側を刺激していた指が愛液の糸と共に引き抜かれていった。
「ひ、姫様。どうなさったのですか? 先ほどまで、あんなに愛し合っていたではありませんか……!」
「やぁっ、来ないで! 私知らない! 何も知らない!」
まるで幼子のように喚き散らし、二人で過ごした悦楽の時間を否定する。泡と唾液と粘液に濡れた体を抱きしめ、唇を震わせながらナクアは侍女を睨みつけていた。
(そんな……どうして……っ!)
自分の愛する存在が、目に涙を溜めて強姦魔を見るような視線を送ってくる。理不尽とすら感じることも出来ないほどの激しい失望感がのしかかり、クレアの世界が湯気で掻き消える。
煌びやかな浴場には、姫の嗚咽と、女人の像が放出する水音だけが残された。
*:ドラウザ
元の肉体に戻った瞬間、ドラウザは凄まじい胸のむかつきとめまいに襲われた。
「ぐぅう……鬱陶しい……!」
ナクア姫の体で得た快楽の残滓すらなく、最悪の気分で目覚める。
憑依の時間が切れ強制的に肉体に戻されるのは、魔道具【ソウルイーター】の数少ない欠点だ。他にも使い勝手の悪い点はあるが、それらに比べてもこの苦痛は抜きん出ていた。
「くそっ、気持ちが悪い……エルフ! 水を持って参れ!」
立ち上がる気力すらなく、食料室の床に寝そべったままドラウザは扉の向こうにいるであろうマギカに命じた。
ほどなくしてドアノブが回され、長い銀髪をなびかせたエルフが姿を現す。
「お帰りなさいませ、ドラウザ様。ご機嫌はいかがですか」
「最悪だ! いや、憑依中は実に素晴らしかった。だが、最後の最後でこんな気分を味わってしまえば興ざめもいいところだ!」
怒りに任せて上体を起こし、コップを差し出すマギカを怒鳴り散らすものの、彼女はやはり何の感情も示さない。
まるで人形だ。エルフそのものが作り物めいた美しい顔立ちをしているが、緋色と金色の瞳を宿す彼女は特にそれが顕著である。
だからといって怒りがおさまるわけではないし、むしろ何もかもを見透かした冷徹な態度はいっそうドラウザの気分を害した。
「何か手段はないのか? この忌々しい気分から解放され、なおかつ憑依をこれまで通りに行える方法は?」
マホウとは、奇跡そのもの。代償や因果などといった世界の理を超越し、人々の認識を覆す神の力だ。
憑依をしたら元の肉体が衰弱するなどという、至極真っ当なリスクとリターンだけで終わるはずがない。ドラウザはその考えを確信し、マギカに詰め寄った。
「あるのだろう? ワシの知らない、【ソウルイーター】の更なる特性が! 隠さずに言え!」
虫の良い要求だ。一方だけに都合の良い効果などあるはずがない。……しかし魔道具ならば、そんなワガママをも叶えることが出来るのだった。
「わかりました、お教えしましょう……ただし、この方法は大きな犠牲を払うことになりますが……」
平然とした表情のまま口を割るマギカに、大臣は驕り高ぶった笑みを浮かべる。
快く【ソウルイーター】を使えるならば────ナクアに乗り移る事が出来るのなら、どんな犠牲もいとわない。地位も名誉も、今のドラウザにとっては等しく無価値であった。
(ワシの全ては、ナクア姫のためにあるのだ! ぐふっ、ぐふひひあははあああああはははっ!!)
まだまだ、貪り足りない。次はどんな風にあのカラダを弄んでやろうか。
マギカが語る、魔道具に秘められた特性を聞きながら、ドラウザは第二王女の肉体を乗っ取った至福のひと時を反すうし、分厚い唇を歪めるのだった。
第二部、人間関係改ざん編終了
次から最終章の予定です
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ヤサシイセカイ4と10(シスター編)の記事を再掲載しました。内容は何も変えていません
ファンタジーなダークTS系のお話です
憑依大臣のターンです
R18要素があるのでご注意ください
ヤ サ シ イ セ カ イ ~ソウルイーター 5
*:ドラウザ
(素晴らしい……!)
魔道具【ソウルイーター】を使い霊体になったドラウザは、早速ナクア姫に憑依をするため彼女の姿を探し求めていた。
ほどなくして発見した姫君は、あろうことか食卓の前で淫らな行為に及び自らを慰めていた。けがれなど一切知らぬ、天の遣わした芸術品とばかり思っていたが、やはり彼女は人間であり女なのだ。
ナクア姫が女として快楽に悶える姿は非常に扇情的で、ドラウザは思わず最後まで魅入ってしまった。
「はぁっ、ふぁ、あっ、はぁぁ……んっ……」
切なげな嬌声を手の隙間から漏らし、姫のカラダがぴくぴくと痙攣する。絶頂を迎えたのだろう。
息も絶え絶えにして天井を仰ぐナクアの瞳が、空に浮かぶドラウザの視線と交じり合った。
「気のせい……だよね」
(なんだと? ……ま、まさか、姫様にはワシの姿が見えて?)
もしそうなら、それはとてつもなく素晴らしいことだ。
魂だけの存在になったドラウザを、ナクア姫だけは認識できる。それはつまり、二人の間に特別な絆がある証拠に他ならない。
(ぐふ、ぐふぁはははは! やはりな! ワシと姫は、運命で結ばれているのだ!)
哄笑するドラウザをよそに、自慰を終えたナクアは突然グラスの水を倒すと、呼び鈴を二回鳴らした。
十秒も過ぎないうちに、メイド服の女が現れる。
「お呼びになりましたか、姫様?」
「クレア。ごめんね、お水こぼしちゃった」
事故を装い、しとどに濡れたスカートの裾をつまんで見せる。
自らがこぼしたなどと微塵もにおわせない、見事な演技だった。
「まぁ、大変。すぐにお着替えください。今、代わりの服を……」
「ううん、お風呂入るから。用意してもらえる?」
「ご入浴ですか。かしこまりましたわ、こちらへどうぞ」
姫の虚偽申告を疑いもせず、侍女は笑顔のまま応じた。
二人揃って食堂をあとにし、食卓にはナクアの食べかけだけが残される。
(……ふんっ)
それらに対し興味を抱いたのは束の間のことで、ドラウザもすぐに二人の後を追った。
*
二人が向かった先は、大浴場だった。
ここは、王族と王族に認められた者にしか入浴の許されない、特別な風呂だ。しかしそんなしきたりなど、マホウの前にはなんの効力もない。
入り口で目を光らせる衛兵の前を堂々と通り過ぎ、ドラウザは脱衣所に侵入した。
「それにしても珍しいですわね。姫様が粗相をなさるなど」
「うん……なんだか、ぼぉっとしちゃって」
先に着いていた姫とメイドは姿見の前に立ち、親し気に話をしていた。
侍女は慣れた手つきでドレスを脱がし、ナクアの柔肌を徐々に解き放っていく。
王族の着替えを手伝うのは使用人の務めだが、つやつやとした笑顔で服を取り除いていく女の顔にドラウザは親近感にも似た感情をを覚えた。
しかしその注意は、すぐに別の相手へ移る。
(なんたることだ……! 姫が、姫様がワシの前であられもない御姿になってゆく!)
第三者として初めて見物するナクアの脱衣ショーは、憑依をして自ら脱ぐのとはまた違った興奮を呼び起こした。
レースの付いた、上下揃いの白い下着姿が目前にさらされる。ドラウザは鼻息を荒くして、仰ぎ見るようにナクア姫の下肢を覗き込んだ。
先ほどまで自慰行為をしていたためか、ショーツには大きなシミが作られ、繊維の隙間から漏れた透明な粘液が太ももをテカテカと濡らしている。
「あっ……く、クレア。待って」
濡れ滴るショーツを見られるのはさすがにマズイと思ったのか、ナクアは慌ててメイドを制止する。すでにブラジャーのホックは外され、青い果実がさらけ出される間際のことだった。
「あ、あとは、自分で脱ぐから」
「さようですか? 今更恥ずかしがることもありませんのに……」
いささか怪訝な顔を見せたものの侍女はすぐに身を引き、姫のぬくもりが残る衣類を籠アミに入れていった。
「脱いだ下着は、こちらへお納めください。わたくしは、替えのお召し物を用意してまいりますわ」
侍女はそう言い残すと、脱衣所の扉を音も立てずに閉めた。室内にはナクアと、霊体のドラウザが残される。
邪魔者がいなくなり、しかしドラウザは以前のように性急な憑依は行わない。ここまで来たら、ナクア姫が自らの手で一糸纏わぬ姿になるのを見物するつもりだった。
「んしょ……」
姫が再び鏡と向き合い、中途半端だったブラジャーを完全に外す。白い肌と、淡い色をした乳輪のコントラストがたまらなく美しい。先日はこの胸で、ずいぶんと愉しませてもらった。
ドラウザはその時の快楽を思い出し、血流のない男性器の霊体を勃起させた。
(ぐふ、ぐふ、ぐふひひひひ!)
また、あの快感を堪能できるのだ。しかも、乗り移っていられる時間はどんどん長くなる。
目の前で醜悪な笑みを浮かべる男の存在には気付かず、ナクアはショーツの裾に指を差し入れ、濡れた股間にピッタリはりついていた布地をおもむろに下ろした。
ほぼ無毛に近い、つるりとした性器が露出する。
紅く鮮やかな一本の割れ筋が入った乙女の入り口は愛液でヌラヌラと輝き、粘り気のある糸がショーツの裏地と繋がっていた。
「やだ……糸、引いちゃってる……」
陰部と下着とを連結する粘液にナクアの頬が赤らみ、いまにも泣き出しそうな顔になる。自らの痴態が引き起こした結果を改めて目の当たりにし、心の中で懊悩しているのかもしれない。
(おぉ、姫様。あなたのお悩み、このワシが取り除いて差し上げましょう……!)
ドラウザの我慢も限界だった。
夫になる者しか近づくことの許されない王女の秘所に、肉体という輪郭を捨てた醜い顔が近づく。
(さぁ、その身をワシに委ねてくだされ)
割れ目に鼻先を突きつけ、彼はそのまま、ズブリと頭部を挿入した。
男を受け入れたことのない美しい花弁は、男性器以上の大きさがあるドラウザの頭をみるみる呑み込んでいく。水が体に染み込むように、彼女の体は抵抗さえできず隙間から膣内へと押し入られた。
「うっ……? あぁっ……な、なに……くぅっ」
肉体的苦痛などあるはずがないのに、ナクアは苦しげな声を上げる。一つの体に二つの精神が入り込もうとしている影響か、それともドラウザを受け入れること自体が耐え難いのか。あるいは、その両方かもしれない。
「これ、また……あっ、アアッ」
脚が震え、ぺたりと床に崩れ落ちる。
ナクアは膝頭を突き合わせ、膣内から感じられる何者かの侵入を拒むように太ももを閉じた。
だがその程度では障害にもならない。まるで郷愁に駆られるかのごとくドラウザは彼女の最奥を目指し、黒色に染まった魂を一片も残さず潜り込ませた。
「やっ、あっ……ああぁぁっ!!」
絶頂を迎えたときのように大きく身を反らし、全身をこわばらせる。
青い瞳が虚ろに脱衣所の天井を見上げ、少しの間沈黙が降りる。やがて瞳の中に光を取り戻したナクアは、「ナクア」のものではない屈折した笑みを浮かべた。
「……ぐふっ」
品性のない笑い声を漏らし、自らの肢体を見下ろす。
細い手。小さな胸。華奢なカラダ。白い肌。肌を撫でる白金の髪。美しくあまやかな声。
どこをとってもナクア姫であることは間違いなく、しかし彼女は王族らしからぬ下劣な哄笑を上げた。
「ぐひ、ぐふふふぁはは! 姫様のカラダだ! ははははは!」
幾たび支配しても飽きる事がない可憐な肉体を抱きしめ、ナクアは……ナクアに憑依をしたドラウザは、喜びに打ち震える。
正面の姿見には、元のイノシシのような体と比べふた周り以上も小柄な姫の裸身が映っていた。立ち上がると、目線の低さと股間の頼りなさを改めて認識する。
自らの意思を使って好きなように体を動かし、余すところなく観察する。手のひらで小さな胸や尻を撫で回し、この肉体がいまだ成長過程であることを痛感した。
「ぐふぇっ、しかし、こちらの方がワシの好みですぞぉ……」
ひとしきりべたべた触ると、ドラウザは脱いだ下着をその場に放り捨てて浴室に向かった。
「風呂だ……風呂だぁ。ぐふふふ!」
地下書庫の、ぬるま湯しか流れてこない狭く薄汚い風呂とは違う。広々とした清潔な浴場で、白いもやを立ち上らせる乳白色の湯を思う存分に浴び、体を洗う事が許されている。
ナクアの肉体がお湯に包まれ、じんわりと芯から温まっていく快感を共有する至福を想像し、ドラウザはたゆみきった笑みを浮かべた。
*:クレア
ナクア姫の着替えを手に脱衣所に戻ってくると、クレアは床に脱ぎ捨てられたままの下着を見て首を傾げた。
「まぁ、姫様ったら……散らかしたままだなんて、珍しいですわね」
もっとも、それで嫌な顔をするようならば従者失格である。クレアは身を屈め、少女の秘部を覆っていたショーツを拾い上げた。
「……?」
指先から湿り気を感じ、下着を眺める。
こぼした水がかかってしまったのだろうか。それにしては濡れすぎだし、温かみもある気がした。
さらによく観察しようと鼻先を近づけ、目を細める。だが、自分が何をしているのか気が付くとクレアは慌てて顔をそらした。
「わ、わたくしってば、なんて無礼な……」
他人が脱いだばかりの下着をまじまじと見つめるなどと、それが王族であり年頃の少女のものであればなおのこと、不埒きわまりない行為である。
クレアは洗濯籠の中へ下着を放り込むと、気を取り直して浴室にいるであろう姫に声をかけた。
「姫様、いらっしゃいますか? お湯加減はいかがでしょう」
「おぉ……最高だぁ……」
扉一枚を隔てた向こう側から、中年男性の唸り声のような返事が聞こえる。一瞬聞き間違えかとも思ったが、ナクアの声を自分が間違うはずはないと言い聞かせ、メイド服の裾をまくりあげた。
「お背中、お流しいたしますわ。入ってよろしいでしょうか?」
「んむ? ……うん、わかった。いいよ」
王族の許可を得、扉を開ける。
抱えたツボから湯をとめどなく流す女人の像が立ち並んだ浴槽の中で、ナクアは肩まで湯につかっていた。
トロンとした表情で目を細める姫の顔は、夢見心地といった言葉がとても似合っていた。が、湯面にたゆたう白金の髪を見た瞬間、クレアは戸惑いの声をあげる。
「ひ、姫様、御髪を整え忘れておいでですわ……っ」
「うぅん? あぁ、髪か……そうか、まとめるべきだったか」
湯面に浮かぶ自分の髪に触れ、くるくると手に絡ませ楽しそうに弄ぶ。
下着の件も含め、クレアの違和感はますます大きくなっていった。だが、それをどう言葉にして良いかわからない。
「あとで洗うのだから、髪はこのままで良い。そんなことより、早く背中を流して貰いたいな?」
ナクアが湯船から上がり、遮る物のない濡れた肢体をペタペタと近づけてくる。
立ち上る湯気のみを唯一の衣にした王女は、ぞっとするような美しさを伴う艶やかな笑みを浮かべていた。
「で、では、こちらへ……」
浴室に備え付けられている小さな椅子を差し出し、ナクアを促す。
姫が自分に背を向けて座ると、クレアはやっと人心地がついた気分になった。
(今日の姫様、少し様子が変ですわ……)
疑問に思いながらも、まさか本人に向かってそれを直接問うわけにはいかない。目の前にいるのは、髪の端からつま先まで、クレアが心より慕う第二王女ナクアだった。
その中身が、彼女の嫌悪する悪徳大臣に乗っ取られているなどとはカケラも想像していない。いまだに混乱を抱えながらも、クレアはタオルに石鹸の泡をしみこませ背中を流す準備を整えていった。
「クレア、今日は素手で洗って?」
「素手で、ですか?」
「そう、手に直接シャボンを塗りつけて、そのままワ……私の、体を洗うのよ。胸もアソコも、指で丁寧に……」
妖艶な笑みが向けられ、メイド人生の中で初めて仰せつかった命令にクレアの頭がぐるぐると慌てふためく。
たしかに、タオルを使うより丁寧で、姫の柔肌を傷つけずに済む。初めてとはいえ他人の体を洗う力加減自体は熟知しているし、不快な思いをさせることはないはずだ。
むしろ、いたずらに性感を刺激してしまわないか……ナクアの言い回しではそれも織り込み済みなのだろうが、クレアは自分自身が理性を保てるのか心配だった。
「ほら、早くして。……でないと、一人で勝手に「始める」よ?」
彼女の「中身」が言外にほのめかしているのは、もちろん「一人で勝手に体を洗う」ということではない。だがあくまでもクレアは会話の延長線上でその言葉を額面通りに受け取った。
「お、お待ちください。や、やらせていただきますわっ」
王女ともあろう人間に一人で体を洗わせるなど、使用人の名折れだ。クレアは言われた通り自分の手に石鹸を塗りつけ、泡だらけの手でナクアの首筋に触れた。
「し、失礼致します……」
「うむ。……んひゃっ」
白く細い首周りに手をかけた瞬間、くすぐったさからか、それまでしっとりと奇妙な色気を醸し出していたナクアがビクッと肩を震わせて可愛らしい声を上げる。
年相応の、普段の印象に近い姫の反応を見て、クレアはようやく安堵した。
(やっぱり、姫様は姫様ですわ……ふふっ、わたくしってば、何を考えていたのでしょう)
言い知れぬ不安が取り除かれると、今度はナクア姫に対する情愛の念が溢れてくる。
「姫様のお肌は、本当にお綺麗ですわ……」
「んっ、んひひっ、ぐふぁはははっ」
泡立った指でナクアの首周りを何度も往復し、鎖骨を撫で、瑞々しい腕を上下に扱いていく。肌を擦られるたびに芽生えるムズムズとした感覚に耐え切れず笑顔を作る彼女は、笑い方こそ奇妙だったが陽だまりのような無邪気さを見せていた。
(あぁ、なんて、なんて可愛らしい……)
姫の従者に選ばれ、自分は心の底から幸福であると思う。しかし、じゃれ合いにも似た時間は長く続かなかった。
「んぅ……っ」
腋の下から滑り込むように手を動かし、ナクアの控えめな乳房に触れる。その瞬間、微笑ましかった少女の声色が、女の艶のある吐息へと変質した。
「ん、ぁぅん……ふぁあ……っ」
柔らかな乳肌を指で挟むように揉みほぐし、表皮の汚れを丁寧に擦り落とす。
ただ体を洗っているだけ。タオル越しに触れていたのが指に変わっただけで、何度も繰り返してきた行為だ。自分にそう言い聞かせ、しかしクレアは姫の胸を愛撫をしているような錯覚に陥っていた。
「んっ……んぅんん……あふぅ……んゅっ」
彼女の唇から漏れ聞こえる嬌声が庇護欲を掻き立て、深みへと惑わされる。
クレアは白い肌の中で唯一色彩を放つ、桜色の乳首へと指先を伸ばした。
「うぁんっ、にゃぅぅぅっ……!」
山猫のような鳴き声を上げ、ナクアの体がびくりと震える。手のひらから心臓の鼓動が伝わり、それと併せてクレア自身の動悸も激しくなっていった。
「ひ、姫、さま……ナクア様……」
密着し、両手で彼女の小さな体を掻き抱いたまま名前を囁く。
「ぁんっ……うぅ……ふあんっ、く、クレアぁ……あぁんっ」
ナクアの口からも切なげに名前が紡がれ、濡れた眼差しが侍女を振り向いた。
空のような青い瞳の中に、嫌悪の色はない。戸惑いすら浮かべておらず、あるのは快楽を求める蟲惑的な輝きだけだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……ナクア様……」
クレアの右手が、乳首から離れ下方へ向かう。
腰の曲線をなぞり、わき腹を撫で、へその穴をつつき、さらにその下へと滑り落ていく。
(姫様……ナクア様……お慕い申し上げております……!)
叶わぬ夢と思っていた。過ぎたる願いと諦めていた。
だがいまこの瞬間、ナクアとは想いを共有しているのだと確信が持てる。自分は、姫と結ばれても良いのだ。
それが全て勘違いであるなどとは露とも知らず、クレアは衝動に駆られるまま姫の唇を奪った。
「んむっ!? んれっ、むぉっ……! ぷぁ、ちゅ、んちゅ……っ!」
ついばむような軽いキスを荒々しく何度も繰り返し、ナクアの唇が唾液で濡れる。その唾液をまたクレアが舐め取り、また唇を触れ合わせる。
「ぷぁっ、ナクア様……! わたくし、もう自分を抑え切れません……申し訳ございません!」
(ぐふっ、ぐふふっ……)
その性急なクレアの行為を、ナクアの「中」に潜むドラウザは予見していた。
クレアは、自分の同類だ。姫を愛し姫に劣情を催す、彼女自身が閑職に追いやった男となんら変わらぬ人間である。
姫の姿で少し誘惑してやれば、レズ行為に走ることは充分予想できた。
「ま、待ってクレア……うむぅんっ!」
『ナクア』らしい反応を示してみても、クレアは止まらない。
唇を唇で塞ぎ、下肢に伸びていた指が姫の恥丘を撫で、割れ目の入り口を滑った。
王女の肉体は先ほどのオナニーとクレアの愛撫によって、とっくに潤っている。秘唇がメイドの細い指をくわえ込むと、『ナクア』は恥も外聞もなく喘ぎ声を上げ、膣肉を震わせた。
「ひぅっ、ああ、ん……っ、ゃぅんっ」
「き、気持ちいいですか、ナクア様? いかがですか?」
「ふあっ……ぅんっ! はぁ、はぁ! あはぁ、あっ!」
クレアは処女膜を傷付けぬようナカをかき回し、愛しい姫君の口から喜悦の声を次々に引き出していく。
女の最も敏感な箇所の包皮をめくり、現れた肉芽を乳首と同時に軽く摘み上げた。
「あっ、ああああッ!? くひぃ、うぅんんんッ!」
太ももをぶるりと痙攣させて、ナクアが甘い悲鳴を上げる。軽度のオーガズムに達したのだ。
クレアは知る由もないが、事前に一度絶頂を迎えていたことや、彼女の「中身」が女性として味わう快楽にまだ慣れきっていなかったがゆえの鋭敏な反応だった。
「ぐひぃ、ひうっ、ふっ、あ、あああ……」
軽めであれ、それでも「中身」のドラウザにとって初めて味わうナクアの快感は凄まじいものだった。半開きになった口から淫靡な吐息と唾液を漏らし、クレアに力なく身を預ける。
くたりと脱力する姿に、メイドは上機嫌のまま勘違いを続けた。
「もう、イッてしまわれたのですか? もしや、こういう経験は初めてですか?」
自分の愛する者は清純であり、自らを慰める行為など知りもしないのだ。
そんな思い違いからか、ナクアの肢体を撫でる手つきの優しさに磨きが掛かる。
「わたくしにお任せください……もっと、もっと気持ちよくなれますわよ、ナクア様」
「…………んうぅっ…………クレ、ア…………」
蕩けた双眸がメイドを見つめ、ポツリと、しかしハッキリと、ナクアは言葉を発した。
「なに……してるの?」
「……え?」
青い瞳が耽溺から戸惑いへ、そしてじわじわと恐怖の色を濃くしていく様子に、淫ら一色だったクレアの頭も急激に冷やされる。
「どうして、こんな……んっ、やだ、は、離して……んっ……やぁっ!」
体をジタバタとさせ、胸と陰部に触れる腕を慌てて払いのけようともがく。心地良い重みを与え睦言を交わせそうなほど密着していた小さな背中が遠ざかり、秘唇の内側を刺激していた指が愛液の糸と共に引き抜かれていった。
「ひ、姫様。どうなさったのですか? 先ほどまで、あんなに愛し合っていたではありませんか……!」
「やぁっ、来ないで! 私知らない! 何も知らない!」
まるで幼子のように喚き散らし、二人で過ごした悦楽の時間を否定する。泡と唾液と粘液に濡れた体を抱きしめ、唇を震わせながらナクアは侍女を睨みつけていた。
(そんな……どうして……っ!)
自分の愛する存在が、目に涙を溜めて強姦魔を見るような視線を送ってくる。理不尽とすら感じることも出来ないほどの激しい失望感がのしかかり、クレアの世界が湯気で掻き消える。
煌びやかな浴場には、姫の嗚咽と、女人の像が放出する水音だけが残された。
*:ドラウザ
元の肉体に戻った瞬間、ドラウザは凄まじい胸のむかつきとめまいに襲われた。
「ぐぅう……鬱陶しい……!」
ナクア姫の体で得た快楽の残滓すらなく、最悪の気分で目覚める。
憑依の時間が切れ強制的に肉体に戻されるのは、魔道具【ソウルイーター】の数少ない欠点だ。他にも使い勝手の悪い点はあるが、それらに比べてもこの苦痛は抜きん出ていた。
「くそっ、気持ちが悪い……エルフ! 水を持って参れ!」
立ち上がる気力すらなく、食料室の床に寝そべったままドラウザは扉の向こうにいるであろうマギカに命じた。
ほどなくしてドアノブが回され、長い銀髪をなびかせたエルフが姿を現す。
「お帰りなさいませ、ドラウザ様。ご機嫌はいかがですか」
「最悪だ! いや、憑依中は実に素晴らしかった。だが、最後の最後でこんな気分を味わってしまえば興ざめもいいところだ!」
怒りに任せて上体を起こし、コップを差し出すマギカを怒鳴り散らすものの、彼女はやはり何の感情も示さない。
まるで人形だ。エルフそのものが作り物めいた美しい顔立ちをしているが、緋色と金色の瞳を宿す彼女は特にそれが顕著である。
だからといって怒りがおさまるわけではないし、むしろ何もかもを見透かした冷徹な態度はいっそうドラウザの気分を害した。
「何か手段はないのか? この忌々しい気分から解放され、なおかつ憑依をこれまで通りに行える方法は?」
マホウとは、奇跡そのもの。代償や因果などといった世界の理を超越し、人々の認識を覆す神の力だ。
憑依をしたら元の肉体が衰弱するなどという、至極真っ当なリスクとリターンだけで終わるはずがない。ドラウザはその考えを確信し、マギカに詰め寄った。
「あるのだろう? ワシの知らない、【ソウルイーター】の更なる特性が! 隠さずに言え!」
虫の良い要求だ。一方だけに都合の良い効果などあるはずがない。……しかし魔道具ならば、そんなワガママをも叶えることが出来るのだった。
「わかりました、お教えしましょう……ただし、この方法は大きな犠牲を払うことになりますが……」
平然とした表情のまま口を割るマギカに、大臣は驕り高ぶった笑みを浮かべる。
快く【ソウルイーター】を使えるならば────ナクアに乗り移る事が出来るのなら、どんな犠牲もいとわない。地位も名誉も、今のドラウザにとっては等しく無価値であった。
(ワシの全ては、ナクア姫のためにあるのだ! ぐふっ、ぐふひひあははあああああはははっ!!)
まだまだ、貪り足りない。次はどんな風にあのカラダを弄んでやろうか。
マギカが語る、魔道具に秘められた特性を聞きながら、ドラウザは第二王女の肉体を乗っ取った至福のひと時を反すうし、分厚い唇を歪めるのだった。
第二部、人間関係改ざん編終了
次から最終章の予定です

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