双子モノ
リハビリ単発です。続きません
私達姉妹は、顔は同じでも性格はまるで違った。
スポーツを好み、細かいことにこだわらない私に比べ、姉はお淑やかでいかにも癒し系といった感じの女の子だ。
制服のスカートすら似合わない私と違って、姉はフリルの付いた可愛らしいフレアすら見事に着こなしてくる。
スカートの端と長い髪が風に乗ってふわりと舞い上がる姿は、双子だということも一瞬忘れ、見惚れてしまうほどだ。
ポニーテールで適当に髪をまとめている私ではとても出せない美しさだと思う。
とにかく私の姉は可愛い。
同性からの受けはあまり良くないが、私が間に入ることで姉が疎外されることもなかった。男性人気については言うまでもない。
のんびり屋の姉が悪い男に騙されては大変だと、私はお姫様を守る騎士のような気持ちで尽くしてきた。
姉もそれに感謝し、笑顔を見せてくれる。
私達は、誰の目にも仲の良い姉妹だった。
ところが世の中奇特なもので、お姫様より騎士が好きだという男が出てきた。
私に近づく男は姉目当ての場合がほとんどだが、今回の男は本気で、真剣に、私だけを恋愛対象として見て、恋人にしたいと考えているらしい。
「うそぉ……」
「嘘じゃない。俺と付き合ってくれ!」
私だって一応女だ。男に好意を持たれてうれしくないはずがない。
断る理由はなかった。
姉は祝福してくれた。いつもどおりの空気の抜けたような甘い声と笑顔で、「さえちゃん、おめでとー」と拍手してくれた。照れくさいやら申し訳ないやらで、まともな返事をしていなかった気がする。
それからしばらくはいつも通り……姉と会話をし、姉と一緒に帰り、姉に近づく悪い虫を排除していた。が、カレシを放置するなんて良くないと、他でもない姉にやんわりと叱られてしまった。
「めっ」とか言われたのは生まれて初めてのことで、それがまた可愛らしくて、逆らう気など消し飛んだ。
私の日常は変化し、姉のために使っていた時間を、カレシと共に過ごすようになった。
それだけなのに、心にもたらされる潤いは雲泥の差だった。男は善人で、私とは趣味も合う。しかし、私は姉と一緒にいる方が何百倍も充実していた。
日々を追うごとに心が磨り減り、枯渇する。家では夜遅くまで姉と話しているのに、満たされない。
この思想が危険だと言う自覚はあった。
まるで漫画に出てくるヤンデレキャラそのものだ、と。
「ね、ねぇ……キス、してよ」
ある日の夕暮れ、二人しか残っていない教室で、私はカレシにねだってみた。
この男へ愛の比重が傾けば、姉を想う気持ちにも歯止めが掛かるのでは。そういう打算があった。
純朴なカレシは戸惑いながらも最終的には頷き、私と唇を重ね合わせた。
触れるだけの簡単なキスは、一瞬で終わった。
私の胸に去来した感情は、幸福ではなく凄まじいまでの嫌悪感だ。口に砂を含んだような忌避感が全身を駆け巡り、のた打ち回りたくなる。
あぁ、これはもうだめだなと、どこか冷静に受け止める自分もいて、カレシから背を向けた。
「ありがとう。さようなら」
「あ、ああ。また明日な」
善人の彼は、今の言葉が恋人関係の終了を意味するとは気づかず、ノンキに応答する。
私は全速力で教室を出て、手の甲で口を拭いながら自宅に向かった。
家に戻り、姉の部屋に直進する。
毎日顔を合わせているはずなのに、まるで生き別れの肉親と久々に再会するような興奮を感じていた。
一旦距離を置いてこそ、深まる愛もある。そういうことだろう。
浮き足立っていた私は違和感に気付かなかった。
玄関にあった姉の靴が、雑に脱ぎ捨てられていたことも。
部屋のドアが半開きになっていたことも、隙間から漏れ聞こえる艶かしい声にも。
「さな、ただいま!」
ノックもせず、意気揚々とドアを開け、愛しい愛しい姉の名を叫ぶ。
姉は、何も着ていなかった。
長い髪をベッドシーツに散りばめ、自分の胸を片手で強く握りつぶしていた。見せびらかすように股を開き、大事なところには指を数本ばかりくわえ込ませ、水音を掻きたてながら激しく差し抜きしている。
「ふぁっ、あああっ、ああぅ!」
部屋に入るまで気づかなかったのが不思議なほど大きな声で喘ぎ狂い、開いた口からヨダレをこぼす。だらしなく舌を伸ばし、快楽にむせび泣く姿は、とても淫らだった。
「すげ……んっ、ああっ! なんだこれ、めちゃくちゃ、気持ちいい……うぁぅ!」
まるで男のような粗雑な口調で身体を弄り回し、何度も腰を跳ねさせる。
肉欲に曇った瞳は私に気付いていないのか、恍惚に歪んだ笑顔のまま天井を仰いでいた。
私は目の前の光景に息をするのも忘れ、呆然と固まるしかなかった。
姉が、自慰をしている。
もちろん私だってしたことがあるし、双子ならしていないはずがないという確信があった。
しかし姉のソレは、私が妄想していたような慎ましやかなオナニーとはまるで正反対だ。貪る、という言葉がしっくりくる手つきは、自分で自分を犯しているかのような荒々しさがあった。
「ふく……っ、んっ、あああああッっぅ!」
割れ目に指を深く突き入れた瞬間、姉の全身が痙攣しひときわ大きな嬌声が響く。
絶頂を迎えたのか、短い息を何度も吐き、やがて下半身からスッと力が抜けていくのがわかった。
「ふぁへ、へへっ……最高だぁ…………あん?」
姉が私の存在に気付く。裸身を隠すこともなく気だるげに半身を起こし、これまで見たこともないうろんな目つきで私を睨んだ。
「てめぇは……あぁ、双子の妹か。いつからそこに居たんだ?」
けけけ、という笑い声が聞こえてきそうな口調で唇を吊り上げる姉に、私は何も言えなかった。
癒し系の可愛らしい外見はなにも変わらないのに、男のような態度と口調で話す姉はまるで別人だ。
「っと、そろそろ時間か」
「時間?」
「こっちの話さ。また明日な」
そういってイヤラシイ笑みを浮かべると、姉は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
「さなっ!」
慌てて抱きしめ、顔を覗き込む。
幸い、姉はすぐに目を覚ました。
「さえ、ちゃん……? あれ……なんでわたし、ハダカ……?」
どうやら先ほどまでの記憶はないらしく、姉は不思議そうに自分の身体を見下ろしている。
私は適当に誤魔化してその場を離れると、すぐに自分の部屋に戻った。
今見たことを……姉の痴態を。癒し系の可愛い私の姉が浮かべたイビツな笑みと下品な態度や言葉遣いを、何度も何度も繰り返し思い出し考える。
姉に何が起こったのか。
答えは明白だ。
「……先、越されちゃったかぁ」
私は机の引き出しを開け、黒い本を取り出す。
黒魔術が記された古書には、他人の身体に乗り移ることができる憑依の方法が載っていた。私はコレを使い姉に成り代わろうとしていた。
カレシの出現で計画は中断していたが、今日改めて、私は姉無しでは生きていられないことに気付いた。もう、この魔術を使うことに迷いはない。
「さな……あなたは、私のものだから」
先ほどの光景は、きっと私と同じ本を手にした男が姉に憑依をしたのだろう。
だが男なんかに私の姉を奪われてなるものか。
双子というアドバンテージを持つ私が、他人なんかに負けるはずがない。
「誰にも渡さない……!」
憑依男を排除し、姉を手に入れる。
私は薄笑いを浮かべ、今夜にでも憑依すべく早速準備に取り掛かった。
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私達姉妹は、顔は同じでも性格はまるで違った。
スポーツを好み、細かいことにこだわらない私に比べ、姉はお淑やかでいかにも癒し系といった感じの女の子だ。
制服のスカートすら似合わない私と違って、姉はフリルの付いた可愛らしいフレアすら見事に着こなしてくる。
スカートの端と長い髪が風に乗ってふわりと舞い上がる姿は、双子だということも一瞬忘れ、見惚れてしまうほどだ。
ポニーテールで適当に髪をまとめている私ではとても出せない美しさだと思う。
とにかく私の姉は可愛い。
同性からの受けはあまり良くないが、私が間に入ることで姉が疎外されることもなかった。男性人気については言うまでもない。
のんびり屋の姉が悪い男に騙されては大変だと、私はお姫様を守る騎士のような気持ちで尽くしてきた。
姉もそれに感謝し、笑顔を見せてくれる。
私達は、誰の目にも仲の良い姉妹だった。
ところが世の中奇特なもので、お姫様より騎士が好きだという男が出てきた。
私に近づく男は姉目当ての場合がほとんどだが、今回の男は本気で、真剣に、私だけを恋愛対象として見て、恋人にしたいと考えているらしい。
「うそぉ……」
「嘘じゃない。俺と付き合ってくれ!」
私だって一応女だ。男に好意を持たれてうれしくないはずがない。
断る理由はなかった。
姉は祝福してくれた。いつもどおりの空気の抜けたような甘い声と笑顔で、「さえちゃん、おめでとー」と拍手してくれた。照れくさいやら申し訳ないやらで、まともな返事をしていなかった気がする。
それからしばらくはいつも通り……姉と会話をし、姉と一緒に帰り、姉に近づく悪い虫を排除していた。が、カレシを放置するなんて良くないと、他でもない姉にやんわりと叱られてしまった。
「めっ」とか言われたのは生まれて初めてのことで、それがまた可愛らしくて、逆らう気など消し飛んだ。
私の日常は変化し、姉のために使っていた時間を、カレシと共に過ごすようになった。
それだけなのに、心にもたらされる潤いは雲泥の差だった。男は善人で、私とは趣味も合う。しかし、私は姉と一緒にいる方が何百倍も充実していた。
日々を追うごとに心が磨り減り、枯渇する。家では夜遅くまで姉と話しているのに、満たされない。
この思想が危険だと言う自覚はあった。
まるで漫画に出てくるヤンデレキャラそのものだ、と。
「ね、ねぇ……キス、してよ」
ある日の夕暮れ、二人しか残っていない教室で、私はカレシにねだってみた。
この男へ愛の比重が傾けば、姉を想う気持ちにも歯止めが掛かるのでは。そういう打算があった。
純朴なカレシは戸惑いながらも最終的には頷き、私と唇を重ね合わせた。
触れるだけの簡単なキスは、一瞬で終わった。
私の胸に去来した感情は、幸福ではなく凄まじいまでの嫌悪感だ。口に砂を含んだような忌避感が全身を駆け巡り、のた打ち回りたくなる。
あぁ、これはもうだめだなと、どこか冷静に受け止める自分もいて、カレシから背を向けた。
「ありがとう。さようなら」
「あ、ああ。また明日な」
善人の彼は、今の言葉が恋人関係の終了を意味するとは気づかず、ノンキに応答する。
私は全速力で教室を出て、手の甲で口を拭いながら自宅に向かった。
家に戻り、姉の部屋に直進する。
毎日顔を合わせているはずなのに、まるで生き別れの肉親と久々に再会するような興奮を感じていた。
一旦距離を置いてこそ、深まる愛もある。そういうことだろう。
浮き足立っていた私は違和感に気付かなかった。
玄関にあった姉の靴が、雑に脱ぎ捨てられていたことも。
部屋のドアが半開きになっていたことも、隙間から漏れ聞こえる艶かしい声にも。
「さな、ただいま!」
ノックもせず、意気揚々とドアを開け、愛しい愛しい姉の名を叫ぶ。
姉は、何も着ていなかった。
長い髪をベッドシーツに散りばめ、自分の胸を片手で強く握りつぶしていた。見せびらかすように股を開き、大事なところには指を数本ばかりくわえ込ませ、水音を掻きたてながら激しく差し抜きしている。
「ふぁっ、あああっ、ああぅ!」
部屋に入るまで気づかなかったのが不思議なほど大きな声で喘ぎ狂い、開いた口からヨダレをこぼす。だらしなく舌を伸ばし、快楽にむせび泣く姿は、とても淫らだった。
「すげ……んっ、ああっ! なんだこれ、めちゃくちゃ、気持ちいい……うぁぅ!」
まるで男のような粗雑な口調で身体を弄り回し、何度も腰を跳ねさせる。
肉欲に曇った瞳は私に気付いていないのか、恍惚に歪んだ笑顔のまま天井を仰いでいた。
私は目の前の光景に息をするのも忘れ、呆然と固まるしかなかった。
姉が、自慰をしている。
もちろん私だってしたことがあるし、双子ならしていないはずがないという確信があった。
しかし姉のソレは、私が妄想していたような慎ましやかなオナニーとはまるで正反対だ。貪る、という言葉がしっくりくる手つきは、自分で自分を犯しているかのような荒々しさがあった。
「ふく……っ、んっ、あああああッっぅ!」
割れ目に指を深く突き入れた瞬間、姉の全身が痙攣しひときわ大きな嬌声が響く。
絶頂を迎えたのか、短い息を何度も吐き、やがて下半身からスッと力が抜けていくのがわかった。
「ふぁへ、へへっ……最高だぁ…………あん?」
姉が私の存在に気付く。裸身を隠すこともなく気だるげに半身を起こし、これまで見たこともないうろんな目つきで私を睨んだ。
「てめぇは……あぁ、双子の妹か。いつからそこに居たんだ?」
けけけ、という笑い声が聞こえてきそうな口調で唇を吊り上げる姉に、私は何も言えなかった。
癒し系の可愛らしい外見はなにも変わらないのに、男のような態度と口調で話す姉はまるで別人だ。
「っと、そろそろ時間か」
「時間?」
「こっちの話さ。また明日な」
そういってイヤラシイ笑みを浮かべると、姉は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
「さなっ!」
慌てて抱きしめ、顔を覗き込む。
幸い、姉はすぐに目を覚ました。
「さえ、ちゃん……? あれ……なんでわたし、ハダカ……?」
どうやら先ほどまでの記憶はないらしく、姉は不思議そうに自分の身体を見下ろしている。
私は適当に誤魔化してその場を離れると、すぐに自分の部屋に戻った。
今見たことを……姉の痴態を。癒し系の可愛い私の姉が浮かべたイビツな笑みと下品な態度や言葉遣いを、何度も何度も繰り返し思い出し考える。
姉に何が起こったのか。
答えは明白だ。
「……先、越されちゃったかぁ」
私は机の引き出しを開け、黒い本を取り出す。
黒魔術が記された古書には、他人の身体に乗り移ることができる憑依の方法が載っていた。私はコレを使い姉に成り代わろうとしていた。
カレシの出現で計画は中断していたが、今日改めて、私は姉無しでは生きていられないことに気付いた。もう、この魔術を使うことに迷いはない。
「さな……あなたは、私のものだから」
先ほどの光景は、きっと私と同じ本を手にした男が姉に憑依をしたのだろう。
だが男なんかに私の姉を奪われてなるものか。
双子というアドバンテージを持つ私が、他人なんかに負けるはずがない。
「誰にも渡さない……!」
憑依男を排除し、姉を手に入れる。
私は薄笑いを浮かべ、今夜にでも憑依すべく早速準備に取り掛かった。

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