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バニシング・ツイン 後編

前回記事の後編です。えろはないです

というか自分でもなんだかわけのわからない話になりました。失敗作
 それから私は、頻繁に記憶を失うようになった。
 私が眠っている間は兄が身体を動かしてくれているらしく、周りの人たちが騒ぐことはない。
 兄は私が空想していた通りの人間で、運動も勉強も社交性も完璧だった。知らないうちに私の評価は上がり、今ではちょっとした人気者になっている。
 まるで映画のようだ。
 生まれる前に死に別れた双子の兄との再会。それだけでも十分奇跡的なのに、私の生活まで充実したものに変えてくれる兄には感謝しかない。
 だけど。
「お兄ちゃん……」
 頬杖をつきながら、ノートの上に指を滑らせる。罫線を無視した太い文字をなぞり、私はため息をこぼした。
 ノートには、兄へ向けたメッセージが書いてある。近況報告の部分を除けば、ほとんどがラブレターのような文面だった。
 しかしその返答はいつも同じだ。
【大丈夫だ! オレに任せろ!】
 私がどれだけ想いを込めた手紙を書いても、そんな言葉ばかりが繰り返される。
 確かに、兄に私の身体を任せるようになってからは、何もかもが上手く行くようになった。
 だけど私は、世界でたった一人だけの兄妹と……双子の兄と、分かり合いたかった。いまのままでは意思の疎通が出来ているのかすら怪しい。
 ふと、不気味な思いにとらわれる。
 相手は、本当に私の兄なのか?
 『お兄ちゃん』や友達は、とにかく明るく元気な性格に豹変していた、と口を揃えて言う。つまり会話能力はある。美容院で髪を切ったらしいことから、一般常識だってあるはずだ。
 なぜ私のメッセージにだけ、こんな怪文書みたいな反応をするのだろう。
「う……」
 眠気に襲われ、視界がぼやける。今日はここまでのようだ。
 白紙のページに「話がしたい」とだけ書き、ノートを広げたまま私はベッドに入った。
 横たわった瞬間、全身から力が抜け浮遊感がまとわりつく。
 羽毛のようなそれに包まれながら、意識は暗闇の奥へと遠ざかっていった。


 けたたましく音を立てるアラームを止め、ゆっくりと両目を開ける。
 全身にのしかかる気だるさを背負いながら携帯を見ると、日付の表示は記憶から一日分のズレがあった。
 昨日の行動に全く覚えがない。そんな生活にも、最近少しずつ慣れ始めていた。
 机の上に置いたままのノートを開くと、私の筆跡とは似ても似つかない太い字が力強く記入されている。
 【大丈夫だ! オレに任せろ!】。
 これまでと代わらない文面に、私は苛立ちを覚えた。
「どうして、何も話してくれないの?」
 ノートがシワになるぐらい力強く握り、コンピューターのような反応しか見せない兄に不信感がつのる。
 ふと昨夜の……二日前の考えが頭をよぎり、背筋が寒くなった。
 私の身体を使っているのは、本当に兄なのだろうか。


「アホかお前は」
 『お兄ちゃん』は、私の悩みを聞き終えるとにべもなく言った。
「兄になるはずの片割れは、生まれる前に死んだ。そんなこと、お前が一番良く知っているだろう」
「……そう、だけど」
「確かにここ最近のお前はまるで別人のように明るくなった。だが、オカルトなどという非科学的な話をするつもりはない」
 『お兄ちゃん』は眼鏡を押し上げながら、とうとうとそれらしい理由を並べていく。
 思い込み、多重人格、演技、夢……ようするに、兄は私の頭の中が作り上げた幻なのだ。
「でも……でもじゃあ、あの字は何!?」
 赤信号で立ち止まった背中に呼びかけ、進路希望調査のプリントを突き出す。例の殴り書き文字はいまもハッキリと残っている。
 お兄ちゃんは面倒くさそうにプリントを奪い取り、冷酷な眼差しで私を見下ろした。
「まだ提出していなかったのか」
「え……?」
「くだらない落書きをしていないで、さっさと新しい用紙を貰って来い」
 そういいながらクシャクシャと紙を丸め、道路に放り捨てる。
 あ、と思う間もなく車に押しつぶされ、兄とのファーストコンタクトの証は一瞬で紙クズになった。
「兄がどうこう言う前に、真面目に自分の将来を考えろ。いくら明るくなろうと、これじゃあ前と同じだ」
 私の言葉を何一つ信じてくれず、頭ごなしに叱りつける彼に失望する。
「……お兄ちゃん」
「その呼び方はやめろ」
 不機嫌そうに視線をそらし、正面を向く。
 私はその背中に向けて腕を伸ばし。
 両肩を、思い切り突き飛ばした。
 お兄ちゃんだった男は、たたらを踏んで車道に飛び出す。
 同時に、トラックが目の前を通り過ぎた。
 鈍い音が響き、やや遅れて急ブレーキがかかる。
 彼は、私の目の前から消えていた。
 少し離れた場所から悲鳴が上がり、周囲の人が停止したトラックに群がっていく。
 私はその場を後にして、河川敷へと走り出した。
 トラックに跳ね飛ばされた男を心配する気持ちなど、ちっとも湧いてこない。あるのは、ひたすら自分本位な罪の意識だけだ。
(どうしよう……。私、人殺しになっちゃった)
 目撃者は大勢いた、いまはまだ混乱しているから逃げる事が出来たが、きっとすぐに捕まってしまう。
「大丈夫だ。オレに任せろ!」
 私は、今日まで何度も何度も読んできた言葉を口にする。
 窮地に立たされた私は、それに縋りつくしかなかった。

 ひとまず身を隠せそうな橋の下にたどりつき、そこで体力の限界を迎えた。
 もうこれ以上走れない。いや、立つことも出来ない。土手の上で両膝を付き、浅い呼吸を繰り返す。
「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!」
 苦しさに喘ぎながら、いまさらになって人を殺した実感が湧き両手が震える。
 なぜあんなことをしたのかわからない。気が付けば身体が勝手に動いていた。……そんな言葉を、誰が信じてくれるだろう。
「お兄ちゃん……」
 車に跳ね飛ばされる前に浮かべた彼の表情が忘れられない。
 クールな顔つきが驚愕に染まり、数秒前まで偉そうに講釈を垂れていた口が恐怖に歪んでいくさまは、実にいい気分だった。
「悪いのは、あなたなんだよ」
 私を、なつめを傷付けるから。────兄を、オレを否定するから。
 だから殺した。
「大丈夫だ。オレに任せろ」
 警察なんかに捕まるわけにはいかない。
 ようやく蘇ったんだ。眠っていた十数年分を取り戻すつもりで楽しませて貰うぞ。
「大丈夫だ。なつめ」
 残りの人生は、オレに任せろ。





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