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部活動 ~野球部

長編の「退屈な書斎」は中断して
続かない短編モノを書いています

二本目

 野球選手は誰もがなれるわけじゃない。並大抵ではない努力と強運が揃って、初めてスタート地点に立つことができる茨の道だ。
 男もかつてはプロ入団を目指し、あらゆる手を尽くした。しかし結局夢は叶わず、今では教職の立場から未来の選手を育てる日々を送っている。
 厳しく指導し、鬼と罵られようが決して手は抜かずに野球部のメンバーと接してきた。たいていはその厳しさに心が折れ、辞めていく。もっとも、その程度で弱音を吐くような人材に用はなかった。
 そんな中にあって、今年の新入生はかなり筋が良い。その中でも園田は群を抜いていた。
 決して泣き言を漏らさず、ひたすら練習に取り組む姿勢は評価に値する。実力自体も他の一年はおろか、レギュラー勢と比べても遜色はなかった。
 園田は異例の速さでエースの座を獲得し、野球部の……顧問である男の期待を一身に背負う存在となった。
 だが近頃になって、そうした真面目さがナリを潜めつつある。
 原因はわかりきっている。マネージャーの野々宮(ののみや)のせいだ。
 いかにも軽薄そうな態度と、何度注意しても直さない茶色く染めた髪。目上の者を敬おうともしないだらけきった言葉遣い。着崩したジャージとショートパンツから伸びる瑞々しく細い脚。
 男漁りが目的だと自己紹介しているような外見は、神聖なる球児たちにとって目の毒だ。
 バカ女にたぶらかされ、うっかり道を踏み外してしまう。三文芝居のようなストーリーだが、実際によくある話だった。
 実際、彼女が現れてからというもの園田は練習に身が入らなくなってしまった。マネージャーのことばかりを気にして、自分のためではなく『女にいいところを見せたい』という下心丸出しのプレイをするようになっている。
 このまま放っておいて良いはずがない。
 前途有望な未来を守るため、男は野々宮に直談判することにした。

「すまんが、お前には部を辞めて欲しい」
「はぁ? なんすかそれ」
 野々宮はジャージの上着ポケットに両手を突っ込んだまま、癇に障る高い声を出して片眉を吊り上げる。
 腹立たしく不遜な態度だが、男はつとめて冷静に『野々宮キノエ』が野球部を去る利点を説いた。
 もしどうしても残りたければ生活態度を改め、部員との接触は極力避けるようにすることだとも伝え、彼女でも理解できるよう言葉を噛み砕いた。
「キモッ」
 懇切丁寧な説得が一蹴され、男に苛立ちが積み重なる。
 不愉快な思いが心の中を占め、残酷な破壊衝動が芽生えた。
 野々宮は男の黒い感情になど気付かず、下品な言葉で挑発を続けている。
「人気のない場所に呼び出してナニするのかと思ったら、野球部の将来とか語っちゃっててドンビキなんすけど。センセー、チンコついてます?」
「貴様……」
「一応言っときますけど、アタシ辞める気ないっすから。雑用とかマジやってらんねーっすけど、今のカレシのこと結構お気になんで」
「カレシだと? ま、まさか!」
 園田のことだ。直感的にそう確信した。
 手遅れだった。目をかけていた彼は、すでにバカ女に籠絡されていたのだ。これでは、野々宮が大人しく部を辞めたところで何も意味がない。
 せりあがる暴虐な思いを一瞬忘れ、激しい失望に襲われる。
「『まさか!』って、うっは『まさか』って初めて聞いたっすわ。漫画っすかやっべぇ」
 男の絶望を嘲笑い、野々宮はポケットからスマホを取り出して写真を取る。不愉快なシャッター音とフラッシュの光が、鎮まりかけた黒い炎に再び油を注いだ。
 もはや我慢は限界を越えている。
「……」
「おっ、どうしたんすか、センセー。怖い顔して。アタシのこと、犯す気ですか? ぷぷっ」
 男は答えず、さらに彼女へ迫った。
 右手にはバッティング用のグローブをはめている。野々宮が素直に言うことを聞かない場合に備え、はじめから装着していたものだ。
「いまアタシがタスケテーって叫んだら、どうなるんでしょうね。放課後でも、ヒト残ってますよねー」
「そうだな」
 生徒に狼藉を働こうとした男性教師。おそらくそんなレッテルが貼られるのだろう。だが男はまるで怯むことなく、右手を伸ばした。
 スマホを操作する右腕ではなく、彼女が警戒していなかった左腕を掴む。
 グローブ越しに女の細腕を握り締めた途端、体中の血液が鉄砲水のように荒れ狂った。
 衝撃はまばたきよりも短い時間で収まり、果たして男の世界は一変する。
「……え?」
 黒いジャージ姿の男性教師が、目の前できょとんとしていた。
 『野々宮キノエ』はその間抜けな面構えに向かってもう一度シャッターを切り、酷薄な笑みを浮かべる。
「な、なんで、アタシがそこに……」
「俺には特別な力があってな」
 戸惑った声色で『野々宮キノエ』を指差す男に、スマホを操作しながらキノエはぽつぽつと口を開いた。
「そのグローブをはめた手で相手に触ると、体を入れ替える事が出来るんだ」
 スマホカメラを内向きにして、鏡代わりに突き出す。厳つい男性教師が驚愕の顔をして画面を覗き込み、続けて自らの体を見下ろした。
「そ、そんな……ことが……」
「理解しなくても良い。俺は、俺のすべきことをする」
 思惑通りに野々宮の肉体を手に入れた男は、スマホを手元に戻すとアドレスから園田の番号を呼び出した。
「なっ、勝手に人のケータイいじってんじゃねぇよ!」
「黙れ。……あー、もしもし園田か? 私達は付き合っていたらしいが、いますぐ別れよう。以上」
 伝えたいことだけ伝え、一方的に通話を切る。今の会話がどういったものなのか元・野々宮はすぐに察したらしく、猛然と声を荒げた。
「てめぇ! なにしてくれてんだよ!」
「これでヤツも、真面目に練習に取り組むだろう。女にうつつを抜かすようなヤツがプロになれるはずもない」
 早速カレシから折り返しの電話が掛かってくるが、すぐ着信拒否に設定して黙らせた。
 その手際は慣れた物だ。
 男はこれまで何度もこの力を使い、将来有望な野球部員と入れ替わってきた。それもこれも、自分がプロとして球界に進出するためである。
 しかしグローブはこの体育用具室でしか効果を発揮せず、使用できる相手は限られていた。
 部員と体を取り替え、プロを目指して失敗し、教師としてこの学園に戻ってくる。そんなことを、もう何度も繰り返している。
「女と入れ替わったのは初めてだが……悪い気分じゃないな」
 ジャージの上から胸を揉み、ショートパンツからすらりと伸びた少女の美脚を撫でさする。アスリートとしての筋肉は足りていないが、野々宮キノエの肉体は若さという活気に満ち溢れていた。
「ふざっけんな! 元に戻せクソ野郎!」
「ふん……お前は自分の立場がわかっていないのか?」
 跳び箱の上にスマホを置くと、これまで自分が使っていた男の肉体にそっと囁く。
「よく考えろ。男に迫られるか弱い女子生徒は、誰のことだ?」
 今『野々宮キノエ』が助けを呼べば、捕まるのは『男性教師』の体になった野々宮の方だ。それを理解する程度の知能は働いたらしく、相手は声を詰まらせた。
「うっ……」
「俺も鬼じゃない。素直に言うことを聞くなら、元に戻してやる」
「なんだよ……どうしろってんだよ!」
「まずはその言葉遣いを直せ。髪も黒く染めて、こんな露出の高い格好はするな」
 髪をいじり、枝毛を抜く。キノエの肉体を得た男はぞんざいに抜け毛を放り捨て、命令を続けた。
「園田とは別れてもらう。元に戻ったときは、なるべく傷つかない方法で改めて別れを切り出せ。それから、俺のことはもちろん誰にも言うな」
「…………わかった。いや、わかり、ました」
 拳を握り締め、搾り出すような声で頷く。
 よほど自分の体が大事なのだろう。暴力に訴えて迫ってくる様子は無い。
「よしよし、約束だぞ。……これは、ご褒美だ」
 上機嫌に唇を歪め、キノエは男性教師の肉体にすり寄った。
 両手で相手の肩を抱き、胸板に自分のものになった乳房を押し付ける。
 股の間には太ももを挟み、時計回りに動かした。
「ひぁっ、な、ナニを……!」
「知らないのか? 先生の言うことを素直に聞いた生徒には、褒美が与えられるんだ」
 頭の上にこぼれる気色悪い吐息は意識から外し、キノエはさらにしなだれかかる。
「はっ……はっ……あっ……」
 密着した体を相手の体にこすりつけると、衣類の繊維が内側から全身を撫でた。口から漏れる小さな吐息は、喘ぎ声のように艶かしい。
 妖艶なムードを作ると、すぐに相手の股間に異変が起きる。
「やっ……なに、これ……」
「ふふん、どうした? 自分の胸や脚を押し付けられて、硬くしているのか」
「そんな、わけ……!」
「言葉遣い」
 人を射殺しそうな眼差しで睨む男を、キノエは静かな声で制止する。
 教師が握りしめた拳はぶつけどころのないまま宙をさまよい、やがて力なく垂れ下がった。
「……せ、先生。お願いです。ご褒美なんていりません、早く元に戻してください」
 瞳に涙を浮かべ、必死な顔で懇願する。情に訴える作戦に変更したらしい。
 だがそれは逆効果だ。情けない男性教師の姿に同情など抱くはずもなく、キノエの嗜虐心がますます膨れ上がるだけだった。
「これは元に戻るために必要な行為だぞ?」
 背伸びをして、相手の耳に息を吹きかける。左手は股間に添え、ジャージの上から慣れ親しんだ男根を優しく揉みしだいた。
「んゃ……う、嘘……でしょ?」
「そう思うなら、突き飛ばせばいい。力任せに抵抗されれば、俺にはどうしようもない」
 野々宮は……男性教師となってしまった少女は、好き勝手に使われる元自分に武力を行使できない。そうしてしまった瞬間、二度と体を取り戻せなくなると理解していた。
 淫らな行為が嘘だと思っていても、従うしかない。野々宮は体を強張らせる以上の抵抗はせず、されるがままになった。
「男の感覚はどうだ? 女の手でここを弄られると、たまらないだろう?」
 少女の細い指でズボンの上から睾丸を転がし、刺激を送り続ける。運動部に所属しているとは思えない長い爪で、まだ剛直とは呼べない肉竿の表面を軽く引っ掻くと、男の顔が苦しそうに歪んだ。
「おっと、痛かったか? 女の体は力の加減が難しいな」
 くすくすと底意地悪く目と唇を細め、今度はゆっくりとしたテンポで股間をまさぐる。
 徐々に色彩を濃くしていく男の赤ら顔に、キノエは支配的な快感に満たされていった。
「さっきお前は、俺にチンコが付いているのかと言ったな。まだ、付いていないと思うか?」
「ご……ごめんなさい。謝ります。謝りますからぁっ」
「別に謝って欲しいわけじゃないさ。ほら、実際に自分の目でも確かめてみれば良い」
 そう言って躊躇なく男性教師のジャージを下ろし、下着の上からでもはっきりと怒張を示す肉棒を引っ張り出す。
「ふんっ、こうして女の目で見るのは初めてだが、なかなか立派じゃないか。お前もそう思うだろう?」
「知りません……はやく、早く終わらせてください……」
 最初の生意気な態度はすっかり消え失せ、両手で自分の顔を覆う。
 弱りきった相手をいたぶり続けたところで面白くない。無抵抗な男を両手で小突くと、あっけなく押し倒すことに成功した。
 馬乗りになり、仰向けになった顔にショートパンツに包まれた尻を置く。鼻先が布地越しに押し付けられ、キノエの口からは体を擦り付けていたときとは比べ物にならない艶を含んだ声が漏れた。
「んぅっ……あぅんっ」
「むっ、むぅーーーーっ」
 顔面に尻を押し付けられ、男の両手が暴れ回る。荒々しい鼻息をショートパンツの隙間から吹き付けられ、全身が甘い期待に打ち震えた。
「ふっ、ふふっ。大人しくしていろ。早く終わらせて欲しいんだろう?」
 腰をわずかに浮かして性戯を強要する傍ら、相手の顔にまたがったまま肉棒を両手でしごいていく。
 上へ、下へ。少女のしなやかな手と、余り気味の包皮で男の生殖器をこすり、刺激を与えた。
 親指と人差し指で輪を作り、カリ首のあたりで旋回すると、よほど心地の良い快感が走ったのか男の腰が大きく跳ねる。
「んふぉっ、んぎぅっ!」
「お前ばかり善がっていても意味がないぞ? ちゃんと、俺のことも気持ち良くするんだ」
「ふぅ……ふぅーっ……」
 野々宮は観念したのか、それとも元に戻りたい一心からか、ほんの少し前まで自分の股間についていた女性器に向かって舌を伸ばした。
 弾力のある舌は、ショートパンツの上から押し付けられるだけでも充分に心地良い快感をもたらす。
 だがその動きは非常に遅く、もどかしい。
「下着をずらして、直接舐めろ。お前が普段オナニーするときを思い出して、感じる部分を重点的に攻めるんだ」
 指示を飛ばすと、野々宮は言われたとおりショートパンツと下着をずらし割れ目そのものを眼前に置く。元々の体の持ち主ではあるが、これほどの至近距離から性器を覗き込んだのは初めてだろう。
「んぅ……ちゅ、んぱっ、ふっ、んんっ……」
 おそるおそる、遠慮がちな動きで陰唇の外周部分に唾液を塗りつけられる。
 粘液を纏った肉厚な感触がダイレクトに伝わり、背筋がぞくぞくと震えた。
「はっ、ふっんぅ、んんんっ」
 陰茎を握り締めると舌が離れ、代わりに熱い吐息が送り込まれる。湿気と、自らの肉穴から染み出る愛液で蒸れ上がった股間からは、メスの匂いが充満していた。
「はぁっ、はっ……あっ……あぅんぅ……っ」
 意図せずに甲高い声が漏れる。
 女として喘ぐ自分自身に興奮し、キノエの肉体はますます熱を帯びた。
「んっ、ぁんっ……はぁ、は、うぅんぁっ」
 すっかり赤く腫れ上がったペニスを擦り続けると、先端から先走りの粘液が漏れ出す。キノエはそれを小さな手に塗りつけ、亀頭全体を包み込んだ。
 手のひらで鈴口を押さえつけ、車のサイドブレーキを扱うように振り回す。
 反撃のつもりか、陰部を舐める男の舌がいよいよ割れ目の内側に侵入してきた。
 陰唇の入り口を押し広げられ、自身の肉体からとめどなく愛液が溢れているのがわかる。
 いやらしい水面をのたうつように舌が這い回り、先端がクリトリスを探り当てた。その瞬間、頭の中が真っ白な快楽に染まる。
「んぁあっ! あひっ、んっ、あっ、あああっ!」
 激しく喘ぎ、浮かしていた腰が落ちる。男の口唇と敏感な箇所が密着し、刺激的な波はキノエの意識を一気に高みへと導いた。
「くぅ、う、ううぁああああッ!」
 そそり立つ肉棒を唯一の支えとするようにすがりつき、悶絶の声を上げるながら力強く締め付ける。
 手の中で亀頭が膨張し、精液を吐き出す準備が整ったことを知らせた。
「なに、これ、くる、きちゃ……あ、あああああっ」
「あっ、はぁっ! あはぁっ、これ、が、オンナの、あぁぁっ……! はぁあああんッ!」
 お互いに初めて味わう異性の快感をこらえきれず、男性教師と女生徒は同時に絶頂へ達し、カラダを痙攣させる。
 射出された欲望の塊は、少女の手を真っ白に染め上げ、体育用具室にむせ返るようなオスの臭いを漂わせた。

「はぁ、はぁ……あっうぅ……」
 キノエはイッたばかりの体を酷使し、這うように男の唇から逃れる。
 快感の余韻はなかなかおさまらず、満足に動くこともままならない。なんとか跳び箱に背中を預け、力の入らない手でスマホを回収した。
 酩酊したように定まりのない視界と精液まみれの手で液晶画面を触りながら、ふと、仰向けになったままの男性教師の体に目をやる。
 射精直後の倦怠感のせいか、男は仰向けになったまま、顔を濡らす粘液を拭おうともしないで荒い息をついていた。
「はぁ……ふふん、自分の愛液を顔に浴びた気分はどうだ?」
「うる、さい……早く、元に戻してよ……っ」
 言葉遣いが生意気なものに戻っている。
 やはり、保険を掛けておいて正解だった。キノエの肉体を奪った男は、スマホを操作し『野々宮キノエが顔面騎乗位をする』動画データを保存した。
 野々宮キノエのだらしのないよがり顔はハッキリ映っている。元の体に戻るために必要な行為だと言ったが、あれは嘘だ。
 もちろん異性の快感を楽しみたかったからでもない。目的は、野々宮が約束を破らないよう逃げ道を塞ぐことだった。
「見てみろ。良く撮れているだろ?」
「なっ……!」
「もしもう一度約束を破るようなら、これをネットにばら撒く。いいな?」
「そ、そんな! ふざけんじゃ……!」
「言葉遣い!」
 食って掛かろうとする野々宮を一喝し、自分のメールアドレスに保存したばかりの動画を送る。
 自分の痴態がボタン一つで全世界に発信される感覚に、キノエの股間が凝縮するように疼いた。
「……さて。元に戻ってやるか…………それとも」
 女の快感は、男が味わう以上の凄まじさだった。
 だが、それでもまだ、キノエの肉体は満足していない。
 少女は淫らな笑みを浮かべ、四つん這いのまま男ににじり寄った
「もう一発ヤッてみるか?」
 しなびかけていた肉棒がピクリと震えたのを、キノエは見逃さなかった。

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