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憑依ゲーム STAGE.0

長くはないけど短編でもない話を書いていこうかと
更新速度は極遅になると思います






 目を覚ますと、私は見知らぬ部屋にいた。
 中央にはダブルサイズの大きなベッドと、その枕元にはテレビが一台置いてある。
 あたりは薄暗く、常夜灯のような弱々しい色付きの明かりだけが室内をぼんやりと照らしていた。

憑依ゲーム ステージ0


「どこよ、ここ……?」
 暗闇に慣れない視界のままよろよろと部屋の端に進み、窓やドアを手探りする。
 しかし指先に当たったのは、冷たく硬い感触だった。
「……ちょっと、なにこれ」
 それは鉄の棒だった。腕を通すのがやっとの狭い間隔で均等に並び、私の行く手を無言で阻んでいる。
 鉄格子の先は暗幕でも下したように真っ暗で、何も見えない。
 動物園で見かける檻のようだ。うかつに手を入れれば中にいる猛獣か何かに腕を食いちぎられそうな気がして、私はきびすを返し反対側に向かった。
 だが、すぐに同じような鉄格子に突き当たる。その頃には目も慣れ始め、部屋の全体がわかり始めてきた。
 前や後ろだけではない。右も左も、天井さえも鉄格子で囲われている。
 私は檻の外ではなく、内側にいたのだ。それを理解するのとほぼ同時に、ベッドの枕元にあるテレビが光を放った。
 画面には、上下の黒スーツに黒いロングコートを羽織った細身の男が映っている。
 初めて見る顔だった。少し尖った顎と大げさなぐらいにつりあがった口角が、男の笑顔を不審者のそれに変えている。
 こんな状況でもなければイケメンと言っても差し支えのない顔立ちなのだろうが、今の私にはただただ不気味だとしか思えなかった。
「おはようございます、亀梨聖礼(かめなしせいら)さん。よく眠れましたかぁ?」
 上がり調子の妙に癇に障る声で、男がニヤニヤと私の名前を呼ぶ。
 画面には男以外、何も映っていなかった。背景は青白い光が埋め尽くし、まるで場所の特定ができない。
 妙に声が響いて聞こえるのは、室内にいるからだろうか。
「あなたには、いまからゲームに付き合ってもらいます。拒否権はもちろんありません」
「……何それ? 映画の観すぎじゃない?」
 そんな映画が少し前に流行ったのを覚えていた。ゲームに失敗すれば死んでしまうやつだ。
 男の言葉を信じたわけではないが、万が一ということもありえる。私がいる檻の中は、どう見ても冗談の域を超えていた。
 不安に思ったこちらの視線を感じ取ったのか、男が首を左右に振る。その仕草もやはり大仰で、芝居掛かっていた。
「安心してください。私のゲームは安全第一。あなたの美しい体には傷一つつけません」
「そう……」
 人を監禁しておいてなにが安全第一なものか。そう思ったが言葉には出さず、脱出経路を探す。
 男の台詞はまだ続いていた。
「ルールは簡単。今からあなたには三人の方と一人ずつ話をして貰います。その会話で、相手が誰なのか思い出してください」
「思い出す……ってことは、私の知っている人なのね」
「理解が早くて実にいい。ただし、直接名前を尋ねたり、関係性を探るような会話は禁止です。ゲームになりませんからね」
 私は周囲を見渡しながら、状況を把握していく。
 鉄格子は天井も同じように覆い、上からの脱出も阻んでいた。床は固いコンクリートで埋め尽くされ、自力での脱出は難しいと諦める。
「……わかった。さっさと終わらせましょ」
 記憶力は良い方だ。顔を見ればすぐに思い出す自信はある。
 もっとも、素顔で出てくるようならそれこそ男の言うゲーム性も何もあったものじゃないだろうが……。
「それでは……『憑依ゲーム』! レェッツ、チャレンジ!」
 男が声高に叫んだ瞬間、スポットライトのような光が檻の外を照らした。
 暗闇に覆われていた鉄格子の向こう側が、白い光に枠取られて浮かび上がる。
 そこには、三人の女の子がいた。
 全員が私と同じ女子校の制服を着て、三方向に一人ずつ立っている。胸にはそれぞれA・B・Cと書かれた名札をつけていた。
 驚いたことに、彼女たちは素顔のままだった。それらの顔を見た瞬間、私は軽く混乱する。
 予想していたような、記憶の片隅にしかいない赤の他人も同然の誰か、だったからではない。むしろその逆で、忘れようもないぐらいに近しい人たちばかりだった。
「ば……ばかじゃないの、あんた。こんなの、間違うわけないじゃん」
 テレビ画面の男を鼻で笑い、簡単すぎるゲームに拍子抜けする。
 男はえくぼの形を変えず、やけにもったいぶった言い回しでルールの説明を続けた。
「回答権は一人につき一回。最初に会話をする相手を選び、20分以内にそれが誰なのかを当ててください。もし不正解なら……」
「不正解なら?」
「間違えたら……憑依成功! あなたの大切な人のカラダと人生は、彼らのものになります!」
 男の言っている意味が良くわからなかった。
 檻の外にいる三人は、確かに全員私の大切な人間だ。だから、彼女たちが誰かなんてわかりきっている。
 しかし『彼ら』というのは誰のことだ。それに男がたびたび口にする『憑依』という言葉は……?
「鬼柳(きりゅう)さん。それじゃあ、あまりにもアンフェアでしょう」
 Bの名札を付けた少女が、口を開く。
 彼女は、妹の優心(ゆうら)だ。間違えるはずがない。
 私よりもずっと真面目で、成績も優秀。名前の通り優しい心を持ち、間違ってもこんな悪趣味なゲームに参加するような娘じゃない。
 その妹が、やけにネチっこい口調でテレビ画面の男と親しげに話していた。
「前提ぐらいは教えてあげましょうよ。でないと、あまりにも我々が有利だ」
「おやぁ? みなさんにとってはそれで良いのではないですか? 憎い亀梨さんから大切にしているものを奪えて、あなたたちは少女として人生をやり直せる! そういう結末がお望みなのでしょう?」
「ヒヒヒッ、まぁ、確かにそうだけどさぁ」
 次に口を開いたのは、Aの名札をつけた私の親友だ。
 明るく活発な彼女が、いまはニタニタとテレビの男に勝るとも劣らない気持ち悪い笑みを湛え、不気味な笑い声を漏らしている。
「簡単すぎるのもつまらない。この女が悩んで、苦しんで、その末に導き出した答えが間違っていたときの絶望感。俺たちは、それが見たいんだよ」
(何……二人とも、何を言っているの?)
 口調も表情も、普段の彼女たちとは全然違う。まるで男のような口振りを見せる二人に戸惑っていると、Cの名札をつけた彼女が落ち着いた調子で言った。
「僕たちはね、君が良く知る女の子じゃないんだ」
「っていっても、身体は本物だけどなぁ」
「でも中身は別人。本当の私はこんなかわいい声をしてないし、この程度のささやかなおっぱいだってついていないんだよ?」
 言いながら、Bの名札を見せつけるように妹が自分の胸を揉む。
 真面目な彼女が、いやらしい顔をしてそんな行為に及ぶ光景はこの異常な状況の中でも特に際立って見えた。
「んっ……まだ、固いか……でも、だんだん気持ちよく……んっ……」
「そこまでです、Bさん。亀梨さんがショックで固まっているじゃないですか」
 テレビの男にたしなめられ、優心は胸を揉む手を名残惜しそうに離す。
「……ま、しょうがないですね。お楽しみは後にとっておきましょうか」
 これもまた芝居がかった身振りで肩をすくめ、再びニヤニヤと檻の中の私を見つめはじめた。
 あの優しい妹が、品定めでもするように私を見ている。悪い夢の中にいるような気分だ。
「ちなみに、彼らの言っていることは全て真実です。そしてあなたには、彼女たちの中にいる『誰か』を、当てていただきたい! 見事全問正解すれば、あなたたちは元の日常に戻れますので頑張ってくださいよぉ? あはははは!」
 テレビの黒スーツが、再び声を張り上げ楽しそうに言う。
 ゲームに失敗すれば、彼女たちの身体は誰ともわからない人間に奪われてしまうのに、男は笑っていた。
「うそよ……こんなの、信じられない……夢、そう夢に決まってる……」
「おや、なかなか頭の固いお人ですね。……では、ちょっとこれを見てもらいましょうか」
 笑顔の貼り付いた男の顔がテレビ画面いっぱいに迫り、人差し指を向けてくる。
「VTRぅ、スタート!」
 瞬間、画面にノイズが走り、さっきまでと全く違う光景に切り替わった。

 そこには、鎖で繋がれた二人の女の子がいた。一目で双子だとわかるほどよく似た姉妹は、怯えた目でカメラを睨みつけている。
<これからあなたたちには、ゲームをしてもらいます>
 画面外から黒スーツ男の声が流れると、双子の片方が突然豹変した。
 突然苦しみだしたかと思うと、彼女は欲望に満ちた眼差しで片割れに笑みを注ぎ、体をすり寄せる。
<ちょ、な、なにして……いやあ!>
 鎖で繋がれた双子の片割れは逃げることも出来ず、いやらしい顔をしたもう一人の自分になすすべもなく犯されていった。
 目を背けたくなるようなレズシーンがしばらく流れ、やがてどちらからともなく果てる。
 しかしそれで終わりじゃなかった。
<わ、わたし、何を……!>
 正気に戻った片割れの子が身を起こし、まるで配役が入れ替わったように、さっきまで涙目を浮かべて襲われていた少女がいやらしく笑う。
<へへへっ、今度はお前の番だ……双子は感じる部分も同じなのか、試してやるよ>
<やっ、やだ、やめて! いやああああああ!>
 攻守が交代し、襲われていた少女が襲っていた少女に覆いかぶさる。
 そこで急に映像は途切れ、画面には再び男の異様な笑顔が浮かび上がった。
「いかがでしたか? 楽しんでいただけましたか?」
「た……たのしめるわけ、ないじゃない……!」
「それは残念。あぁ、もうお察しかとは思いますがこの姉妹はね、私が以前にゲームをした相手です」
「……狂ってる……なんなのさ、あんた!」
 姉妹が攻守交替しながら片割れを陵辱し合う異様な光景は、私に恐怖と理解を促すのに充分だった。これは絶対ヤラセなんかじゃない。
 いったいこの男は何者なのか。そんなことさえどうでもよくなる。いや、理解したくないといったほうが正しい。
 ヒトの人生をオモチャにする、悪魔のような男……悪魔そのものだ。
「私はしがないエンターテイナーですよ。そういうあなたこそ何者のつもりなんでしょうねぇ、亀梨聖礼さん」
 まるで心の奥底を盗み見するような視線で、私を見て男が笑う。
 もう、うんざりだ。
 会話をすればするほど、私の頭までおかしくなりそうだった。
「さて、状況はご理解いただけたようですね? そろそろゲームの対戦相手を決めましょう!」
「……絶対、全員当ててやる」
 私は男を睨みつけ、再び三人の顔を見渡した。
 どいつもこいつも、本来の彼女の尊厳を貶めるような、気色の悪い笑みを浮かべている。
(待ってて……すぐ助けるから)

 このときの私は、まだ『憑依ゲーム』の恐ろしさも、その目的も。
 何一つとして、わかっていなかった。



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非公開コメント

No title

勝ち目が見えない悪意に満ちたゲームがどう展開するか楽しみです。

三者三様の方法で追い詰められるのを想像するとわくわくします。

コメントありがとうございます

>井澄ミスト
今更ですがコメントありがとうございます!
エロ度は薄めですがいろんな方法で心を壊していきたいですね
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