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憑依ゲーム STAGE.1

更新速度は極遅です

謎の男に捕らわれ、親友や家族に憑依した『誰か』の名前を当てるゲームに参加させられた少女の話です






 檻の中に囚われた私を、三人の少女が見ている。
 全員がニタニタと気色の悪い笑みを浮かべ、連中の粘ついた視線が制服越しにまとわりつく。
 彼女たちは、私が“ゲーム”に失敗し、後悔や苦悩に打ちのめされる姿を期待していた。

憑依ゲーム ステージ1



 心から信頼している相手にそんな目で見られるのは、中身が違うと知っていても悲しい。そして、彼女たちにそんな表情をさせている『誰か』がとても憎かった。
「さあさあ、はやく選んでくださいよぉ!」
 テレビ画面に映る黒スーツの男は、神経を逆撫でする甲高い声で私を煽り立てる。
 これから私は三人の中から一人選び、会話をしなければならない。その会話で憑依している『誰か』を思い出すことができれば、彼女は解放される。
 だがもし間違えた時のことを考えると、どうしても慎重になった。
 答えを間違えれば、『誰か』は彼女の身体を完全に乗っ取ってしまう。ミスは決して許されない。
 何か手掛かりはないか。ここまでの会話でテレビの男が、『誰か』が情報を漏らさなかったか。私は懸命に記憶をたどり、何とか制限時間付きの“ゲーム”が始まる前に答えを導き出そうとした。
「おやぁ? 選ばないんですか? 早くしないと、彼らも我慢しきれませんよ?」
「……我慢?」
「おっと、しまった。ついうっかり」
 口を塞ぎ、いかにも「しまった」という表情を見せる。そのわざとらしさが、余計に腹立たしい。
「うーん、仕方ないですね。では、ヒントを差し上げましょう。大サービスです」
 恩着せがましい言い回しで、男は「憑依しているのは全員男です」とわかり切ったことを教えてくれた。さっきから「彼ら」と呼んでいるのに、いまさらすぎる。
「それじゃあ何もヒントになってない。バカなの?」
「あははは、これは手厳しい。でもねぇ、亀梨さん。男が女性の体になっているんですよ? これ、どういう意味か分かります?」
「どういう意味って……」
 一瞬男のセリフが理解できず、戸惑う。
 男なんて、バカで乱暴で下品で…………。
「あ……」
「お気づきですか? そう、女になった男が何をするか? 決まってます。マスターベーション! オナニーです! しかも女性の快楽は男と比べ三倍とも十倍とも言われています。試してみたくなるのは当然でしょう!?」
「こ、これだから男は!」
 声を張り上げ、恥ずかしげもなく言い放つ男を軽蔑して睨みつける。
 だが私以外の『女』は男の言葉に賛同するように笑みを深くし、鷹揚な拍手をする子までいた。
「みなさん、ある程度なら私に従ってくれますがね。『憑依ゲーム』の進行が著しく遅れるようなら、存分にその体をもてあそんでいただきます」
「ヒヒッ、まぁ、それはそれで」
「えぇ、むしろ今すぐにでも少女の快楽を味わいたいのですが?」
 親友の姿をした『A』と妹の姿をした『B』がそれぞれ口を開く。
 『C』のネームプレートを付けた彼女は沈黙していたが、顔には同様の薄ら笑いを浮かべており、私を安心させるには程遠い。
「とはいえ、AVじゃあるまいし女性のオナニー動画だけ見てても退屈ですねぇ。……順番に行きましょうか?」
 男がそう言うと、カシャンと、何かが外れる音が聞こえた。
 音のした方を振り向くと、鉄格子の一部が開いている。どうやら、あそこが入り口だったらしい。
 逃げられるかもしれない。そう思ったのはほんの一瞬だ。憑依された彼女たちを置き去りにはできない。
「『因幡勇魚(いなばいさな)』さん、どうぞ。ここからはフリータイムです」
「おほっ、そうかそうか。いやぁ、悪いな二人とも」
 親友の姿をした『誰か』は他の子たちに手を振り、私がいる檻に入ってくる。
「さて問題! あなたの前にいるその人は、いったい誰でしょう? ──ファースト憑依ゲームぅ、スタァァトッ!」
 楽しげな男の声が響き、画面の中央下にテロップが表れた。
 ≪20:00≫という表示はすぐにカウントダウンをはじめる。
 どうやらこれが制限時間らしい。だが目に見える時間の減少は、私の精神状態をさらに追い込む装置でしかなかった。
 二十分。たったそれだけの間に、私は親友の身体を乗っ取った『誰か』を突き止めなければいけないのだ。
「ほぉらセーラちゃん。俺が誰か、わかるかなぁ~?」
 親友は……Aの名札を付けた『誰か』は陰湿な笑みを浮かべ、くねくねと身をよじる。
 私の知る『因幡勇魚』なら絶対にしない、人をバカにした態度だ。
 バレー部に所属しているだけあって、イサナの身長は平均女子よりずっと高い。さわやかな性格と整ったルックスもあって、彼女を王子様呼びする女子の取り巻きも多く存在していた。
 帰宅部だった私は人気者のイサナとはほとんど接点もなく、縁遠い相手だと思っていた。だが、あるきっかけで私たちは親友と呼べる間柄になった。
 その親友の声が、身体が、男なんかに好き勝手使われている。不愉快すぎて、頭がおかしくなりそうだ。
(落ち着いて……イライラしてたら、向こうの思うツボじゃない)
 冷静さを失ってしまえば、思い出せるものも思い出せなくなってしまう。
 ゲームの出題者である『誰か』は、全員私が会ったことのある相手らしい。だがイサナのカラダを操る『A』の正体なんて、見当も付かなかった。
 見た目が全くの別人なのだ。わかるわけがない。
「ほらほらぁ、見つめ合ってないでお話したらどうです? ガールズトーク、聞きたいなぁ~?」
 テレビの男がうるさい。
 名前を訊ねることや、関係性を探る質問は禁止されているのに、どうやって会話をしろというのか。イライラしすぎなせいか、何を取っ掛かりに話し始めれば良いのかまったく思い浮かばない。
 悩む私を尻目に、イサナは檻の中には不釣合いな大きなベッドの上に座り、制服のボタンを外し始めた。
「なっ、何やってるの!?」
「はぁ? 決まってんだろ、オナニーするんだよ。鬼柳さんも言ってただろ?」
 男が女のカラダになったら、何をするか?
 『A』は、私やテレビの男、他の出題者たちが見ている目の前で、その答えを実演するつもりだ。
「ま、待ってよ……! 話を……話をするんでしょ!?」
「これが今日から俺の身体になるのか。前から目を付けてたんだよなぁ。……ヒヒッ、ヒヒヒヒヒッ!」
 私の言葉に耳を貸す素振りすら見せず、『A』は制服の第三ボタンまで一気に外し、熟れた果実をもぎ取るような勢いで、イサナの胸を鷲づかみにした。
 ボタンの外れた制服の上から大雑把な動きで乳房をこね回し、彼女は恍惚とした溜息をもらす。
「んっ……やわらけぇ……女の胸って、こんな気持ちいいんだなぁ」
「や、やめ……」
「こんなもんぶら下げたまま歩き回るとか、犯罪だよな。んぅっ、さっきも、ちょっと動いただけで、んはっ……ゆさゆさって、揺れた、ぁっ、しよぉ」
 合間合間に濡れた吐息をこぼし、胸への愛撫を執拗に繰り返す。
 多くの女子をたぶらかした端正な顔立ちを歪め、自分自身の肉体に興奮するイサナの表情はとても下品で、いやらしい。
 直視など出来るはずがなかった。目を瞑り、耳をふさいでしまいたい。
 拒絶したい気持ちばかりが先走り、『A』の正体を突き止めるための思考力が完全に消えてしまう。
「スタイル良いですよねぇ、彼女」
 ふいに、テレビの男が口を開く。
 セクハラじみた台詞だったが、私はむしろ縋りつくような気持ちで男の言葉に聞き耳を立てた。
 萎えかけた気持ちが再燃する。
 イサナを見ていられないのなら、コイツから『A』の正体を探るしか方法はない。
「おおっと、失礼。亀梨さんが貧相と言っているわけではありませんよ? あなたも、充分お綺麗だ」
 見え透いたお世辞を言われても、嬉しくも何ともない。
 反論したい気持ちを堪えていると、男はさらに調子に乗って話しかけてきた。
「それだけ見目麗しいと、つらいことも色々おありでしょうねぇ。どうです? 生まれ変わった因幡さんに、美少女ならではの苦労話を聞かせてみては?」
 「たとえば」と単語の一つ一つを区切るように続け、男は私にとって触れてほしくない言葉を臆面もなく突きつける。
「干していた下着が、盗まれたりとか」
「……っ」
 下着ドロ。
 それは、私がイサナと親友になるきっかけの事件だった。

 あの時、私の通う女子校では下着の紛失事件が頻発していた。
 全寮制の学園に部外者が入り込めるはずがないということで、真っ先に疑いの目を向けられたのは男性教師の面々だ。
 もちろん誰一人として「自分がやりました」などと自白はしなかったが、生徒たちは少しでも目障りな教師がいるとすぐに彼らを犯人扱いし、集団で攻撃した。
 シカトをはじめとした授業妨害や、SNSでのネガキャン祭り。生徒に手を出した噂を流され辞職した教師も何人かいたらしい。
 事件はほどなくして、正義感の強いイサナと当時被害者だった私の懸命な捜索によって収束した。
 以来、彼女は私の親友になったのだ。
「やっべ……んっ、乳首、ビリビリって……くはぁっ、すげっ……!」
 凛々しく犯人を追い詰めた「学園の王子様」が、今はだらしない顔をして、あさましくヨガっている。
 ブラからこぼれ出た乳房をすくい上げ、先端に向かって舌を伸ばす姿は、彼女のファンが見たら卒倒してしまうのではないかというほど悲惨な顔つきだ。
 唾液に濡れた乳房が、天井の薄暗いライトを照り返しヌラリと妖しく光った。
「私は男ですが、下着泥棒は正直理解できませんね。ただの布キレで、どうして興奮できるのでしょうか》
 目の前で少女が乱れているのに、男はまだ下着の話を続けるつもりらしい。下着どころか、女の裸にすら興味がないのではと勘繰りたくなる。
「盗まれた側の気持ちはわかりますよ。仮に、私のボクサーが何者かに盗られでもしたら、ソッとします。気持ち悪いですよねぇ」
 お前のパンツになんて誰も興味を示さない。
 よっぽど言い返してやりたかったが、続けざまに来た男の台詞が私の舌を凍らせる。
「犯人が同性だったら、余計に」
「…………」
 そんなはずはない。
 誰も知らない。知られているはずがない。
 下着紛失事件の真犯人が女だったなんて、私とイサナ以外誰も知らないはずなのに。

「んっ、くっ……ふぅぁっ! なんだよ、ここ……んにぃ! 敏感、すぎ……くあふっ!」
 ふいに嬌声のボリュームが跳ね上がり、私は反射的にイサナを振り返った。
 すぐに後悔する。彼女は片手で胸を揉みしだいたまま、もう片方の手でスカートの中を慰めていた。ベッドの上ではしたなく両脚を広げて、まるでテレビの男や私に見せつけるような恰好でショーツの奥をかき回している。
 愛液の染み込んだ布地が彼女の指の形をくっきり浮かび上がらせ、グチュグチュと卑猥な音を立てていた。
「ふぁっ、んんぅ! こんなの……んひっ、エロすぎ、だろ……あぁんっ! はぁ、はぁ……こりゃ、俺なんかが独り占めするのは勿体ネェ。勝山先生にも、おすそ分けしてやんなきゃ……んんぅっ、不公平……あっぁあああッ!」
 男の言葉とイサナの卑猥な様子が、そして刻々と短くなっていく制限時間が、私から冷静さを奪う。
 男は、あのことを知っているのか。『A』は誰だ。
 あんなに気持ち良さそうなイサナの顔を見るのは初めてだ。あんなに乱暴にいじり回しているのに、それでも嬉しそうによがる姿など見た事がない。私がどれだけ優しくしてもいつもいつもつらそうな顔をしていたのに、中身が男になった途端まるで痴女のようによがり狂っている。
 親友の痴態に、私の下半身もきゅんきゅんと疼く。
 触りたい。あのおっぱいは私だけのものだ。どこの誰とも知らない男なんかに譲ってやるものか。
「……!」
 突然、頭の中がクリアになり、バラバラの情報が一つにまとまっていく。
 私とイサナ。下着ドロ。真犯人。勝山先生。その延長線上に浮かび上がった人物を思い出す。あとひとつだけでも確証を得れば、私は迷いなくその名前を口に出来た。
「あと五分です。『因幡勇魚』さん。お楽しみのところ申し訳ありませんが、一つだけでもいいので亀梨さんの質問に答えてくれませんか?」
「んぁぅ! くっ……ひ、ヒヒ、まぁ、鬼柳さんが言うなら。んっ……ほら、セーラ。何でも聞いてみて?」
 イサナの口調を意識しているのか、『A』は滑らかに私の名前を呼ぶ。残り時間が少ないからか、思考能力すら快楽に蕩けたのか、かなり油断しているようだ。
 ……私が指摘しなければ、彼女はそんな風に呼ばない。そんなことも知らないヤツが、これからイサナとして生きていくなんて冗談じゃない。
 私は意を決して、目の前にいるのが『アイツ』だと確信できる質問をした。
「────私の、お気に入りの下着は何色?」
 私の他には、恋人しか知らないその答え
 だけどもう一人、『アイツ』にもそれを教えた事がある。
「はは、あははははっ! なんです、その質問!? 下着の色ォ? これはもう立派なセクハラですね、セクハラッ!」
「うるさい! 早く答えさせて!」
 口角を吊り上げて歯を見せる男の声が耳障りだ。
 だがこの男だけが、場の主導権を握っている。私も、『A』や他の連中も、男の進行からは逃れられない。
「ははははっ、了解です。では『因幡勇魚』さん。知っているのなら、正直にお答え下さい」
 男が促すと、イサナはしばらく逡巡した後、ポツリと吐き捨てるように言った。
「………………ピンク」
 本当は青。白いレースの入った、スカイブルーの上下。
 この質問にピンクと解答できる人間は、たった一人だけだ。私は決定的な確信を得る事が出来た。
「解答するわ」
 すべてが繋がり、イサナの肉体を乗っ取る相手の名前をはじき出す。
「……鰐村(わにむら)。生活指導の鰐村!」
 下の名前なんて知るはずもない。
 だが、あの爬虫類のような目つきだけは覚えている。ジロジロジロジロと、女子を性的な目で見つめるあの目が私は心底嫌いだった。
 私の答えに、イサナは硬直している。自らを慰める手を止めて、切れ長の美しい瞳を大きく見開き、呆然としている。
「正解ッ! チャレンジ成功ですッ!」
 テレビの男は両手を一回大きく打ち鳴らし、そう叫んだ。
 正解……チャレンジ成功……。クリア、した?
 じわじわと喜びがカラダの奥から湧き出てくる。これで、イサナは元に戻る。私は、親友を取り戻す事が出来たんだ。
「おめでとうございます。それにしてもなぜ『因幡勇魚』が鰐村さんだと? お気に入りの下着の色を知っていたと言うことは、お二人はまさかそういう関係だったとか?」
 安堵したのも束の間、不愉快な台詞に体中の血が逆流する。
 男がこの場にいたら、きっと頬を叩いていた。
「ふざけないで」
「おお、怖い怖い。冗談ですよ。これでも私、亀梨さんのことは良く知っているつもりですから」
「なにそれ。あんた、私のファンか何か?」
「親友のためなら、罪を他人にかぶせることも平気でするんですねぇ」
 男は私の皮肉を軽々と無視して、直球な言葉をかぶせてくる。
「……何のこと?」
 しらばっくれてもムダだと言わんばかりに、男の笑みが深くなった。
「そもそもあなたたち、本当に親友なんですかね? 私には、ペットと飼い主にしか見えませんが」
 初対面の男は、私の神経を逆撫でする口調のまま、そう指摘した。


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