絶望二次創作 二話目
今年で発売二十年が経ったPCゲーム
「絶望 ~青い果実の散華~」の二次創作……のようなものです
主人公の勝沼紳一に仕える執事、古手川が「絶望」本編を整えるまでの話ですので本編のキャラは登場しません…
前回と文体も違うのでますます読みづらいかもしれませんが、それでもよければ
絶望二次創作 古手川リバイブ2
菱山淑乃(ひしやま しゅくの)には、夢があった。
それはごくありふれた願い。父親に傍にいて欲しい。ただそれだけのことを、彼女は真摯に切望していた。
思春期になればたいていの少女は男親を煙たがるものだが、淑乃の場合、幼い頃に別れてそれきりだったせいか今をもってしても父親に対して一種の憧れと崇拝めいたものを抱いていた。
詳しい事情は聞かされず、親権を勝ち取った母、真冬によって強制的に父親から引き離された。当時の淑乃は知るよしもなかったが、父親はかつて財界にその名を轟かせていた勝沼財閥の総帥、勝沼紳一の側近であった。
その立場が原因で、彼女の父は総帥の引き起こした少女集団誘拐殺人の関与を疑われ、死刑を執行された犯人一味に代わって被害者遺族からの非難を一身に浴びることとなった。
側近ならば、バスジャック計画も知っていたはずだ、と。
現場に同行しなかっただけで、勝沼たちと同罪である、と。
結局は証拠不十分で不起訴になったが、彼らの訴えは淑乃の家族に大きな亀裂を生んだ。夫の潔白を信じ切れず、幼い娘を毒牙にかけられてはたまらないと淑乃の母は離縁を言い渡したのである。
長い時間が経ち、成長した淑乃は両親の離婚の背景にそのような事情があったのだと知った。しかし父親に対する信頼は微塵も揺らいでいない。
勝沼財閥の名前すら人々の記憶から消えかけた頃、淑乃は思い切って父親との復縁を母に持ちかけた。
「お父さんのこと、信じてあげようよ」
父の家からほど近いセリーヌ学園を進学先に選んだのも、両親がやり直すきっかけの一助になることを期待してのことである。
その頃には彼女の母もいくらか疑心暗鬼を薄れさせ、夫婦は徐々にだがかつての形を取り戻しつつあった。
春の訪れとともに家族三人で暮らし始めて、まだ日は浅い。どこか遠慮がちな、ギクシャクとした感じは微妙に残しつつも、絆は着実に結び直されていると淑乃は確信していた。
このまま何事もなく、幸せな家庭を取り戻せるはずだ……と。
そんなある日の夜。
淑乃は自分の部屋で日記を書き終えると、日付が変わる前に就寝した。
父親の仕事は深夜まで及ぶことも多く、今日も遅くなるらしい。同じ家で暮らしているのにすれ違いの生活が多く、顔を合わせられるのは三日に一度程度だった。
それでも離れて暮らしていた頃よりずっと近くに父の存在を感じられ、淑乃は満足していた。
あと数か月もすれば、夏休みに入る。その頃には、きっと今よりもっと家族らしさを取り戻せるだろう。
家族そろって繁華街に出かけ、思い出を作っていこう。
心躍る未来を想像しながら、いつしか、淑乃は眠りに落ちていった。
ふと胸のあたりに違和感を覚え、淑乃は閉じていたまぶたをゆっくりと開いた。
自分に覆いかぶさる黒い影が何か、最初はまるで分らなかった。
熟睡状態から突然引き離された肉体はまだ焦点も定まらず、思考にもモヤがかかっている。何が見えているのか理解するには、時間を要した。
目覚めるきっかけとなった胸の違和感は収まるどころかますます顕著になり、淑乃は半覚醒状態のまま身をよじる。
「んん……ん、んん?」
寝返りを打とうとして、身体が満足に動かせないことや、口の周りの違和感に気付いた。
息がしづらい。声を出そうにも、唇が粘着質な何かによってふさがれ、開くことができなかった。
「んんっ、んんんーーーーッ!!」
冴えてきた頭が、今の自分の状態を少しずつ理解する。
寝る前にしっかりと掛けていた布団は払いのけられ、薄いピンクのパジャマを着た自分の身体が闇の中でうっすらと浮かび上がっていた。
骨ばった大きな手が、慎ましやかだが決して貧しくはないと自負する淑乃の胸を撫で回している。
「フォッフォッフォッ、お目覚めかな」
自分に覆いかぶさる影が老人のような笑い声を上げ、淑乃の目を覗き込んだ。
(おとう……さん?)
淑乃に覆いかぶさっていたのは、彼女が敬愛してやまない人間だった。
勝沼紳一によって世間から痛烈な嫌疑をかけられ、一度は家族や仕事を失った男が、ギラついた眼差しで娘を見ている。
「んんんっ、んんーーーーッ」
いったい何をしているのかと叫んだつもりでも、出てくるのは虫の声にすら掻き消されてしまいそうな小さな声だった。
ガムテープで口を塞がれ、大きな声を出せないようにしてある。両手首も頭の上で縛られていることに気付き、淑乃の混乱はますます激化した。
そんな娘の狼狽を、父親はニヤニヤと嬉しそうに眺めている。
「思った通り……音さえしなければ、宿主の意識が目覚めることはないようだ」
わけのわからないことを言い、その間も淑乃の胸を揉み続けていた。ナメクジが肌の上を這いずるようなネットリした動きは不快感を掻き立て、触られていない部分の肌までもがゾワゾワと粟立ってくる。
ふくらみばかりではなく、その頂きにも容赦なく魔手は伸びてきた。服の上から乳輪を撫でられ突起部分を執拗にこすられると、身体がピクンッと強張ってしまう。
嫌だ。気持ち悪い。
大きな手に触れられていても、安心感のようなものはまるで湧いてこなかった。目の前にいるのが父の顔をした別人のように思え、未知との遭遇に恐怖心を掻き立てられる。
父は笑みを浮かべたまま、淑乃のパジャマを引き裂いた。ボタンが弾け飛び、胸の二つのふくらみが露わになると、待ちかねたように飛びついてくる。
冷たい感触と共に、乳首に刺激が走った。肉厚な感触が乳首を中心に這いずり、何往復も繰り返される。
娘の胸を実の父親が舐め、愛撫する。背徳の極みのような光景をまざまざと想像をしてしまい、淑乃はさらに鳥肌を走らせた。
「んんーーーーっ! んんんーーーー!!」
母に助けを求め叫ぶが、ガムテープでふさがれた口からはくぐもった声しか出てこない。身をよじって逃げ出そうとしても、力任せにベッドに押さえつけられほとんど動けなかった。
「フォッフォッフォッ、元気が良いの。だが……ほれっ」
父親は娘のか細い抵抗を楽しんでいるかのように笑い、乳首に歯を立てる。さんざん弄り回され、だ液まみれになった少女の蕾は、すぐに反応し、いよいよ言い逃れができないほど先端を突出させた。
コリコリとした乳頭を甘噛みされ、淑乃の口から先ほどと違う切なげな吐息が漏れる。
「気持よかろう。頭の中が痺れ、何も考えられなくなるだろう?」
まるで女の感覚を知っているかのような口ぶりで、父親は敏感な部分を的確に攻めてくる。
そんなことない、気持ち悪いだけだ。塞がれた口はそれらの言葉を紡ぎだせずに、うめき声とも喘ぎ声ともつかない吐息をこぼすばかりだった。。
敏感な部分に刺激が通うたび肩が、腕が、脚が震えてしまう。単なる生理的な反応にしか過ぎないとわかっていても、まるで父親の言葉を肯定しているようで悔しかった。
強い嫌悪感は依然として抱えているのに、頭の中はぐらぐらと煮え立つように渦を巻いている。体中が熱くてたまらない。
(なんで……どうして、私……)
「淫乱な身体じゃな。どうせ男のことを考えて夜ごと自慰でもしているのだろう」
「んんーーーーっ!!」
「そんなわけがないと? ならば、これはなんじゃ」
セリフと同時に股間を触られ、その瞬間、淑乃はすくみ上がった。
胸を揉まれるのとはケタ違いの恐怖が頭の中を満たし、全神経が逃げろと命じる。
脚をばたつかせて、縛られたままの両腕でもがき、頭を左右に振って必死の抵抗をするが、それでも男女の筋力差は埋まらなかった。
「そぉれ、見えるか? これはいったい何だ」
もがく淑乃を組み敷き、父親が意地の悪い笑みを浮かべている。
見せびらかすように鼻先で中指と人差し指を広げると、指の間で透明な粘液が糸を引いた。
「アソコから愛液があふれ出ておるぞ。まだ胸しか弄っていないのに、すっかり準備万端という訳だ」
(いやぁ……見ないで……見せないで……!)
自分の身体から湧き出た蜜液を見せつけられ、淑乃は顔から火が出る思いで首を振った。
恥ずかしくて死にそうだった。せめてもの抵抗に目を閉じるが、暗闇の中で身体をまさぐられる恐怖がどうしてもまぶたを持ち上げてしまう。
男は愛液をまとった指先で淑乃の乳首をこね回し、爪で弾いた。潤滑剤を得た指の動きは先ほどよりもスムーズで、速い。痛みよりも快感の比重が大きくなり、敏感に反応してしまう。
もう片方の手が下の方へ伸び、秘所の入り口にある肉芽を不意打ちした。上半身の攻めにばかり気を取られていた淑乃は、突然ふりかかった強烈な刺激に鋭い悲鳴を上げる。
「んんんぅ!!」
頭の片隅で小さな爆発が起こり、ほんの一瞬だけ意識が飛んだ。
自分が絶頂したのだと理解するのに、そう時間はかからなかった。意識が呑み込まれる程のものではない、小規模な余韻が全身をまったりと包み込んだ。
だが、満足には程遠い。
(嫌ぁ……私、どうして……!)
中途半端に絶頂した女体は、さらなる刺激を求めて疼いていた。
異様な状況であるにもかかわらず到達し、なおも貪欲に快楽を求める身体に淑乃はショックを隠せない。
その先を求めてしまう欲望と、それに歯止めをかけようとする理性に挟まれて煩悶する少女をよそに、父親はパジャマのズボンとショーツを同時に引きずり下ろした。
「フォホホ、淫乱な割に、なかなか綺麗な形をしておる。……今からお父さんがお前のここを舐めて、気持ち良くしてやるからな」
思い出したように父親の口調が戻り、しかし理性から遠のいた言動は一向に変わらず、かえって異常性を強めただけだった。
(助けて……! お願い、もう許して……)
何に許しを乞うているのかもわからないまま、ひたすら懇願する。無論、男がその思いを汲み取るはずもなく、いやらしい笑みを浮かべたまま脚の付け根に顔を近づけた。
陰毛が茂る股間に、生暖かい吐息がかかる。軽い絶頂を迎えたばかりの体はその息遣いにすら反応し、内腿をピクリと震わせた。
「アソコがヒクヒク動いているな。気持ち良かったなら素直にそう言いなさい……まったく、意地っ張りな娘だ」
(いやぁ……いやあ……っ!)
目に涙をためて拒絶するが、むしろそれこそ待ち望んでいた反応だとでもいうように男の笑みはいっそう深くなる。
秘肉を指で左右に押し広げられ、淑乃の羞恥心はついに限界を超えた。
唾液をまとわりつかせた舌先が割れ目に滑り込み、弾力を伴う感触に全身がわななく。
陰唇を、肉芽を、内側のヒダ肉までもが丹念に舐められ、舌が敏感な部分に触れるたびに切なげな声がこぼれ出た。
脚と脚の間に顔を挟み込み、頭蓋骨を砕くつもりで力を入れる。だが男は痛がる素振りを見せるどころか、心地よさそうな笑みを浮かべて淑乃の太ももを慈しむように撫でさすってきた。
武骨な指先が柔肌に食い込み、たやすく開脚させられてしまう。左右に大きく脚を広げた体勢は、不安と恥じらいをこれでもかというぐらいに加速させた。
どうしようもなく嫌なのに股間はますます熱を帯び、子宮が痺れる。
「そろそろ頃合いかの」
再び老人めいた口調に変わった父親は、一度淑乃から離れると、自身の下半身を露出させた。
実の娘に向けるべきではない欲望の怒張が、闇夜にまぎれて尚もはっきりとその存在を誇示している。
初めて見る男性器は淑乃の想像以上に大きく、グロテスクに映った。当然、感じる恐怖もこれまで以上のものになる。
(やめて、お願い! それだけは許してぇ!)
「んんっん! んぁーっ! んんーーーーっ!」
「フォッフォッフォッ、そうかそうか。早く入れて欲しくてたまらんのじゃな」
ひどく自分本位な解釈をして、父親は再び淑乃の身体を組み敷いた。
愛撫によってほぐされた女性器の入り口を男根の先端がこすり、緩慢な動きのまま秘唇を引き裂いていく。
自分の身体の中に異物が挿入されていく感覚に、淑乃は全身を硬直させた。
(痛い……痛いよぉ。抜いてぇっ!)
「くぅ、狭いのぉ。……この感じ、もしや処女か?」
恐怖に支配された少女は、父親のいやらしい質問に必死でうなづき、涙にぬれた瞳で懇願した。
一生に一度きりの大切なバージンを奪わないでくれと。
それが全くの逆効果だとも知らずに。
「フォホホホッ、これは僥倖。まさか一人目から処女を引き当てるとは!」
哄笑し、引き抜くどころかますます深みへと肉棒が押し込まれる。
ほどなく処女膜の入り口に先端が到達すると、父親はニヤリと陰惨な笑みを浮かべた。
「さあ、お父さんがお前を女にしてやろう」
(やめっ────あああああああああああああっ!!)
肉棒は前進を続け、容赦なく淑乃を貫く。
純潔が音を立てて破れ、結合部からは赤い血が流れ出した。
身体を真っ二つにされたような衝撃がいつまでも続き、ここまで嫌々ながらも感じていた快楽がすべて帳消しにされる。息をするだけで痛みに襲われ、淑乃は浅い呼吸を何度も繰り返した。
全身に脂汗を浮かべて痛みを堪える愛娘の様子を見て、男はあろうことか満足そうに微笑んでいる。
狂ってる……悪魔だ。
絶望と憤怒が同時に湧き起こり、淑乃はほんの一瞬だけ痛みを忘れた。
糾弾する言葉を投げかけようとした直後、男が腰を使いはじめる。純潔を失ったばかりの膣内を肉棒でかき回され、身体中がえぐり取られるような痛みに襲われた。
(痛い! 抜いて、お願い抜いてぇ!ああああっ!)
大粒の涙を流して哀願するが、相手の嗜虐心をますます煽るだけだ。
「少し我慢しておれ。そのうち気持ち良くなるわ……うぅ、締まる……!」
苦しむ娘をよそに、父親は吊り上がった口からよだれを流して恍惚の声を漏らしていた。気遣いなどまるでない獣の腰つきで、容赦なく突いてくる。
淑乃が息を吐くたびに、膣内をこする位置が微妙にズレた。肉ヒダを一枚ずつ蹂躙されているような感覚に順応できるはずもなく、痛みは激しくなる一方だ。
「乳首もこんなに硬く尖らせて……。フォホホ、やはり女の身体というものは、どんな状況でも快感を求めてしまうらしいの」
あざけるというよりは、むしろ得心したように呟き、父親は淑乃の乳首をつまむとヒネリをくわえて引っ張り上げた。
千切れるのではないかと思うほどの痛みが伴う刺激に、快楽なんてものはどこにもない。独りよがりの勝手な言い分は父親に対する淡い憧憬を粉砕し、失望へと変わる。
こんな男に会いたがっていたのか。何年も、何年も。
思いを募らせた月日が長かっただけに、ショックも大きかった。
自分がどれだけ無駄な時間を過ごしてきたか思い知る。この男はやはり、勝沼と同じ最悪の性犯罪者だ。どうして自分は母親の言葉を信じられなかったのだろう。
後悔しても、すべて手遅れだった。処女の証は無残に引き裂かれ、二度と戻らない。
年頃の少女らしく、淑乃にも夢があった。未来に希望を抱いていた。恋人と結ばれ、幸せな処女喪失をするのだと信じていた。
それがこんな形で、こんな男に汚され、奪われた。
(ああ……ああああ、ああああああああああああっ!)
粘液がこすれるいやらしい音が響く。結合部から湧き上がる淫らな音は、淑乃の屈辱をいっそう煽り、恥辱の奔流が理性を狂わせていく。
ムリヤリ組み敷かれる恐怖。乳頭や肉芽を摘まれて弾き出る、喘ぎ交じりの悲鳴。心とは裏腹に濡れる股間。肉棒でかき回される膣内。破瓜の、痛み。
耐えがたい苦痛が、少女の精神に亀裂を生みつつあった。
「そろそろ出すぞ……しっかり受け止めるのだぞ!」
「あ……あああ……」
壊れる寸前の心で、その言葉の意味を咀嚼する。
すでに泣き叫び抵抗するだけの気力は残されておらず、淑乃はただ弱々しく呻くだけだった。
「うぅ……っ!」
膣内で肉棒が痙攣し、精液が凄まじい勢いで放たれる。
すでに何も映さなくなった瞳からは涙がこぼれ、放心状態のまま実の父親による中出しをされている事実を客観的に受け止めた。
淑乃の理性が保たれたのはそこまでだった。
「む? なんじゃもう壊れたか……。そういえば、まだ唇をいただいておらなんだ」
だ液まみれになったガムテープが乱暴に引き離され、ようやく淑乃の口が解放される。
すでに悲鳴を上げる気力を失った少女の唇はかすかに震えるだけで、父親からの貪るようなキスを甘んじて受け入れた。
突然の来訪者だった。
「きゃああああっ?! 何してるの?!」
「うっ……あ……?」
部屋の入り口から金切り声が上がり、男は我を取り戻したように瞬きを繰り返す。
彼の眼前には、娘の淑乃がほとんど生まれたままの姿で仰向けに倒れていた。左右の胸はヨダレでべとべとになり、桜色の乳頭を中心にしてあちこちに歯型が付いていた。凌辱はあれから何度も行われ、すでに淑乃の身体で汚されていない箇所はない。
「しゅ……淑乃……? な、なんだ、これは……」
娘の性器に自分のモノが差し込んであることに気づき、男は慌てて腰を引いた。
ズチャ、と膣内から引き抜いた肉棒は、破瓜の血と精液と愛液とでグチャグチャに濡れ、正視に耐えない。
「な……なに……が……しゅ、淑乃……!」
先ほどまで乱暴に犯していたのが嘘のように娘の容態を気遣い、男は虚ろな目をした少女に手を伸ばす。直後、勢いよく駆け込んできた淑乃の母がサイドテーブルの上にあった目覚まし時計をつかみ、夫の頭に振り下ろした。
「うぐっ……!」
時計は大きな音を立てて壊れ、動揺したうえで不意打ちを食らった男はベッドから転がり落ちる。崩れる夫を尻目に、母親は娘の身体を抱きかかえると素早く距離を取った。
「信じた私がバカだった……この犯罪者! いますぐ出てって!!」
深夜なのも構わず大声で糾弾し、怒りをあらわにする。
男は自分が何をしたのかも理解していないような顔で妻を見上げ、何か言い訳めいたことをもごもごと呟いていた。
「ち、違う……俺じゃ……俺じゃない……」
「ひどい……ひどいよ、お父さん……」
「淑乃?!」
男が視線を移すと、淑乃が母親に抱かれたままの涙を流していた。
「わ、私、はじめてだったのに。ずっと痛いって、嫌だって、そう言ったのに……!」
虚ろだった瞳はいつのまにか光を取り戻し、嗚咽交じりの声で父親の悪行を語り始める。
娘の告発に父親はいっさい身に覚えがない。しかし状況証拠は完全に出揃っていた。
結合していた性器に、白濁液で汚れた少女の裸身。親子三人の他には誰もいない部屋と、被害者の証言。
いくら無実を訴えたところで、免れるすべはない。
「お、おおお、うおおおおおおおっ!」
男はその場に崩れ落ち、慟哭した。
信頼回復の見込みは今度こそない。あと少しで取り戻すはずだった「家族の幸せ」は、永遠に失われたのだ。
強姦魔の糾弾を終えた少女は母親の胸に顔をうずめ、肩を震わせる。
(くっ……くく……っ)
無残に凌辱された少女が悲しみに暮れているのではなく、笑みを必死で堪えているとは、誰も想像だにしない。
(くくくっ……ぷふふ、フォッホホ、フォーホッホッホッ!!)
いまにも快哉を叫びそうな口を必死でつぐみ、淑乃は激しく肩を震わせた。
失意の底に落ちた父親の姿が、滑稽でたまらなかった。
(ぼっちゃまの墓前で無礼を働いた報いじゃよ。フォッフォッフォッフォッ)
絶望によって砕け散った淑乃の精神はすでに存在せず、いま少女の体を支配しているのは古手川という老執事だ。
同時に、淑乃の真の凌辱者でもあった。
淑乃の母、真冬の肉体からはじき出された後、古手川は男が就寝するのを待っていた。
真冬の時と同じく、相手が寝てさえいれば憑依に成功するのではと考えたからだ。予想は見事に的中し、男の肉体を取り戻した古手川は溜まりに溜まった欲望の矛先を娘である淑乃に向けた。
生前と同じく心行くまで少女を犯し、満足したら男の身体から抜け出るつもりだった。だが、絶望状態になった淑乃を見ているうちに別の案が閃く。
自我の崩壊した肉体ならば、就寝中よりもスマートに取り憑けるのではないか、と。
結果は、想像以上だった。
凌辱現場を目撃した真冬の叫び声をきっかけに身体を乗り換えた古手川は、肉体の主導権と同時に記憶まで手に入れることができたのである。
周囲がいくら騒いでも本人の意識は眠り続けているのも好都合だ。その気になれば、一生取り憑りついていられるだろう。
淑乃という少女が何を思い、何を見てどんな人生を歩んできたかが、自分のことのようにわかる。それゆえに、淑乃の口調で父親を糾弾するのも容易だった。
愛妻ばかりか愛娘からも非難され崩れ落ちる男の有様は、古手川の嗜虐心を大いに満足させた。
これで主の溜飲も下がるだろう。
(ぼっちゃま。爺めが見事、天誅を下してやりましたぞ!)
被害者の少女に成りすました古手川は胸中で勝どきを上げ、真冬の乳房に顔を押し付けた。
娘が怯えているとでも考えたか、真冬も強く抱きしめ返す。
近隣住人が騒動を聞き付けたのか、パトカーのサイレンが菱山家に迫っていた────。
菱山家終了のお知らせ
これで二次創作といえるのか甚だ疑問デス

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