短編「ABCオブTS」 I
最近表サイトで純愛系書いているせいか黒力が低下気味です…
亡霊犯を書いてたときと逆パターンですね(言い訳)
「ABCオブTS」という短編を進めています
英単語26文字を頭文字にした短編です
表サイトの投票所でリクエストを募った結果、素敵な単語を教えていただきました
ありがとうございます
influence -影響-
娘が誘拐されて三時間が経つ。
警察は何か手がかりを得ようと、犯人が送りつけてきたビデオレターを繰り返し再生していた。
倉庫のような薄暗い場所で、口にガムテープを貼られた愛娘が怯えた視線をカメラに送っている。
娘のほかにも似たような年頃の少女たちが、四、五人ほど映っていた。皆、この下劣きわまる犯罪者によって捕らえられたのだろう。
≪はーい。じゃあ、おとーさんとおかーさんに挨拶しようかー?≫
≪ひゃひゃひゃ、マヂウケル。超センコーじゃん≫
≪というか、ガムテしてるんだから話せないし≫
≪うっせぇな! 黙ってろよ!≫
複数の男たちの声が画面の外から聞こえてくる。
世の中を見下し馬鹿にしきった、ふざけた感じの若い男の声だ。
≪えー僕達デスネ、いまから子の子達に教育をしたいと思いまーす≫
≪世の中汚いことだらけなのに、青少年保護のもとにそれを隠す世の中は間違っていまーす≫
≪汚いものを見ないまま大人になっても、善悪の区別がつきませーん。そんなやつらが、犯罪に走りまーす≫
≪だからお嬢さんたちには、いまからじっくり世の中ってものを教えてあげたいと思いまーす≫
≪ひゃはははっ、やっべ、おれらマヂ聖職者!≫
≪というか、テレビや漫画やゲームに影響されて犯罪するヤツなんかはじめから頭おかしいし≫
≪人間に影響を与えるのは、いつだって人間だ!≫
≪おおーっ、かっけー≫
聞くに堪えない雑音をひとしきり流し、感心したような声と空々しい拍手がパラパラと鳴る。
何が、かっけーだ。お前らのやっていることはどう言い繕っても犯罪だ。出来る事ならそう怒鳴り込み殴りつけてやりたい。
≪教育が終わったら、お嬢さんたちは"返し"ますんでー。身代金も要らないし、心配しないでくださーい≫
最後まで人のことを馬鹿にした声でそんなことを口走り、ビデオレターはそこで終わった。
「クソガキどもが……すぐに捕まえてやる」
我が家に残った二人の刑事のうち、一人がテレビを凝視して苦々しく言い放つ。年はおよそ50前後の、ありがちな中年体系の男だ。
もう一人は私のすぐそばのソファに座っている。テレビの前に陣取る刑事の半分ほどしかなさそうな年齢の男は、再三上映された最低の映像に見向きもせず、じっとパソコンと向かい合っていた。
「本部からの連絡はまだか!?」
「『有事に備え待機せよ』。以上です」
「もう三時間も経っているんだぞ! なのに、何も進展がないのか!」
ドンッと拳でテーブルを打ちつけ、怒りに満ちた形相でこちらを振り向く。憎悪の色が強い瞳が私に気付くと、男は気まずい愛想笑いを浮かべた。
「いや、申し訳ない。つい取り乱して……本当にツライのは、ご家族なのに」
「いえ……」
男の言うとおり、娘の安否を思うと気が気ではない。だが目の前の熱心な刑事のおかげで、私は冷静でいることができた。
「自分にも同じ年頃の娘がいましてね。そのせいか、他人事とは思えなくて」
頭をかきながら一転して柔和な態度を取る中年刑事に、少しだけ親近感を覚える。
新たな犠牲者を出さないためにも、あの屑共は必ず捕まえなければならない。そんな気持ちがひしひしと伝わってきた。
「えっ……せ、先輩ッ」
パソコンを弄っていた若い刑事が、悲鳴のような声を上げる。
「どうした!? 犯人が特定出来たか!?」
「いえ、それが……少女たちが発見されました。全員、近くの公園で眠っていたそうです」
「なん……だと……?」
こうして、この誘拐事件は当事者たちを不快にさせるだけさせておきながら、実にあっけない幕切れを迎えた。
娘がさらわれてから十二時間。
外傷もなく病院での検査結果も良好だったためか、被害者の少女たちは全員、我が家に戻っていた。もちろん、私の娘も同じだ。
「ふぅ……」
灯りを消したリビングで酒を飲みながら、怒涛の一日を振り返る。
この場所でつい数時間前まで、もう二度と娘に会えないのではと不安にかられていたのがウソのようだ。
天井を見上げ、二階の寝室で眠る我が子を思い浮かべる。
明日は、刑事たちに事情を説明せねばならない。
何があったのか。どこにいたのか。犯人はどんな顔をしていたか。聞きたいことは山ほどあるだろう。
「ふんっ……何が教育だ」
不愉快なビデオの内容を思い出してしまい、それを一笑する。
娘は何も変わっていない。大方、映像を送りつけた後で怖くなり、被害者たちを解放したのだろう。
浅い考え。薄っぺらな言葉。そのくせ行動力だけはあるのだから手に負えない。
必ず捕まえて欲しい。一般人にしか過ぎない私には、中年刑事らの活躍に期待する他なかった。
「んっ……はぁっ……」
「うん?」
ふと、どこからかくぐもった声がして、音のする方をふと見上げる。
声は二階から聞こえていた。
「階段を上りきると、声はますますはっきりと聞こえてきた。
「はぁっ、はあっ、く、ううぅっ!」
娘の部屋から、うなされたような喘ぎ声が漏れている
(まさか……)
検査では何も異常なしと言われたが、本当にあの犯罪者どもが娘の身体に何もしなかったのだろうか。
もしかしたら後発性の薬物か何か。そういったものを打ち込まれたのでは?
私は震える足で寝室へ近づき、半開きになっていたドアの隙間から、娘の様子を窺った。
(なっ!?)
その瞬間、私の頭は真っ白になる。
娘はベッドの上に座り、パジャマのズボンを脱ぎ捨てて露らになった局部を小さなスタンドミラーに映していた。
「はーい。ここが大陰唇でぇ……んっ、こっちが、小陰唇。ふふん、お嬢ちゃんのカラダはもうすっかりオトナだねぇ」
「やぁ……やだぁ……んぁ、触ら、ないでぇ……」
同じ声で、同じ口から紡ぎ出される台詞は、あたかも二人の人間が存在しているかのような口振りで自らの秘所を弄っている。ごっこ遊びというには、そのイヤラシイ表情が真に迫りすぎていた。
「ほーら、ここがクリトリ……あぁんッ、女の子の、はっ、一番、気持ちいいところだよ。さあ、言ってごらん」
「ふぁ、あっ、ああ、やぁ……やああ……!」
「物覚えの悪い子だなぁ。でも大丈夫。ちゃんと言えるようになるまで、僕があぁんッ、ずっとぁ、傍に居て、あげるから! はぅンッ」
指使いが激しくなり、嬌声も大きくなっていく。
娘の自慰を覗き見する父親……そんな後ろめたさなど、目の前で起こっている異常事態に比べればごくわずかだった。
「や、ああっ、何、なに、やだ、こわ、んぁっ」
「はぁッ、ハッ、はあくッ、これ、が、イクって、あ、ことだよ! 大きな声で、言ってみるんだ!」
「あっ、あっあっ……あああッ!」
「ぐっ、くううううんっんッ……んぁッ……あ……」
カラダが小刻みに震え、大きく仰け反る。
確認するまでもなく、ベッドのシーツは愛液まみれだろう。
「はぁ……ふぅぅ……ったく、生意気なカラダだ。ちゃんとした性知識を教えてやらなきゃ、ぜってぇいつか援交するぜぇ、このお嬢ちゃん」
脚を、局部を、腰を、胸を、自らの肢体を撫でながら喋る娘の姿は、もはや別人だった。
「ま、僕の教育に影響された結果ビッチになっても……それはそれか」
半裸のまま、後処理を使用ともせずにベッドに寝転ぶ。
いったい娘に何が起こったのか、私は必死で状況を整理しようとし────
「あ、ちゃんとセックスも教えますんで。相手はおとーさんでいいっすかね?」
あっけらかんと放たれたその言葉は、氷のような冷たさで私の心を貫き、凍結した。
***
≪はーい。警察官、または刑事の娘さんたち。こんにちはー≫
≪ひゃひゃひゃ、サツなんてよぉ。汚職まみれの癖に正義の味方を気取っているんだぜぇ?≫
≪というか、正義っていうのは人によってさまざまだし。それを君たちに教えてあげるし≫
≪凝り固まった正義がもたらす影響は、結果として悪を生むんだ!≫
「クソガキどもめぇ! 娘に手を出したらただではおかんぞぉ!」
娘が誘拐されて三時間。
中年刑事の怒号は、止むことなく続いていた。
諸君、私は犯罪者大勝利エンドが好きだ
投票者に感謝
スポンサーサイト

亡霊犯を書いてたときと逆パターンですね(言い訳)
「ABCオブTS」という短編を進めています
英単語26文字を頭文字にした短編です
表サイトの投票所でリクエストを募った結果、素敵な単語を教えていただきました
ありがとうございます
influence -影響-
娘が誘拐されて三時間が経つ。
警察は何か手がかりを得ようと、犯人が送りつけてきたビデオレターを繰り返し再生していた。
倉庫のような薄暗い場所で、口にガムテープを貼られた愛娘が怯えた視線をカメラに送っている。
娘のほかにも似たような年頃の少女たちが、四、五人ほど映っていた。皆、この下劣きわまる犯罪者によって捕らえられたのだろう。
≪はーい。じゃあ、おとーさんとおかーさんに挨拶しようかー?≫
≪ひゃひゃひゃ、マヂウケル。超センコーじゃん≫
≪というか、ガムテしてるんだから話せないし≫
≪うっせぇな! 黙ってろよ!≫
複数の男たちの声が画面の外から聞こえてくる。
世の中を見下し馬鹿にしきった、ふざけた感じの若い男の声だ。
≪えー僕達デスネ、いまから子の子達に教育をしたいと思いまーす≫
≪世の中汚いことだらけなのに、青少年保護のもとにそれを隠す世の中は間違っていまーす≫
≪汚いものを見ないまま大人になっても、善悪の区別がつきませーん。そんなやつらが、犯罪に走りまーす≫
≪だからお嬢さんたちには、いまからじっくり世の中ってものを教えてあげたいと思いまーす≫
≪ひゃはははっ、やっべ、おれらマヂ聖職者!≫
≪というか、テレビや漫画やゲームに影響されて犯罪するヤツなんかはじめから頭おかしいし≫
≪人間に影響を与えるのは、いつだって人間だ!≫
≪おおーっ、かっけー≫
聞くに堪えない雑音をひとしきり流し、感心したような声と空々しい拍手がパラパラと鳴る。
何が、かっけーだ。お前らのやっていることはどう言い繕っても犯罪だ。出来る事ならそう怒鳴り込み殴りつけてやりたい。
≪教育が終わったら、お嬢さんたちは"返し"ますんでー。身代金も要らないし、心配しないでくださーい≫
最後まで人のことを馬鹿にした声でそんなことを口走り、ビデオレターはそこで終わった。
「クソガキどもが……すぐに捕まえてやる」
我が家に残った二人の刑事のうち、一人がテレビを凝視して苦々しく言い放つ。年はおよそ50前後の、ありがちな中年体系の男だ。
もう一人は私のすぐそばのソファに座っている。テレビの前に陣取る刑事の半分ほどしかなさそうな年齢の男は、再三上映された最低の映像に見向きもせず、じっとパソコンと向かい合っていた。
「本部からの連絡はまだか!?」
「『有事に備え待機せよ』。以上です」
「もう三時間も経っているんだぞ! なのに、何も進展がないのか!」
ドンッと拳でテーブルを打ちつけ、怒りに満ちた形相でこちらを振り向く。憎悪の色が強い瞳が私に気付くと、男は気まずい愛想笑いを浮かべた。
「いや、申し訳ない。つい取り乱して……本当にツライのは、ご家族なのに」
「いえ……」
男の言うとおり、娘の安否を思うと気が気ではない。だが目の前の熱心な刑事のおかげで、私は冷静でいることができた。
「自分にも同じ年頃の娘がいましてね。そのせいか、他人事とは思えなくて」
頭をかきながら一転して柔和な態度を取る中年刑事に、少しだけ親近感を覚える。
新たな犠牲者を出さないためにも、あの屑共は必ず捕まえなければならない。そんな気持ちがひしひしと伝わってきた。
「えっ……せ、先輩ッ」
パソコンを弄っていた若い刑事が、悲鳴のような声を上げる。
「どうした!? 犯人が特定出来たか!?」
「いえ、それが……少女たちが発見されました。全員、近くの公園で眠っていたそうです」
「なん……だと……?」
こうして、この誘拐事件は当事者たちを不快にさせるだけさせておきながら、実にあっけない幕切れを迎えた。
娘がさらわれてから十二時間。
外傷もなく病院での検査結果も良好だったためか、被害者の少女たちは全員、我が家に戻っていた。もちろん、私の娘も同じだ。
「ふぅ……」
灯りを消したリビングで酒を飲みながら、怒涛の一日を振り返る。
この場所でつい数時間前まで、もう二度と娘に会えないのではと不安にかられていたのがウソのようだ。
天井を見上げ、二階の寝室で眠る我が子を思い浮かべる。
明日は、刑事たちに事情を説明せねばならない。
何があったのか。どこにいたのか。犯人はどんな顔をしていたか。聞きたいことは山ほどあるだろう。
「ふんっ……何が教育だ」
不愉快なビデオの内容を思い出してしまい、それを一笑する。
娘は何も変わっていない。大方、映像を送りつけた後で怖くなり、被害者たちを解放したのだろう。
浅い考え。薄っぺらな言葉。そのくせ行動力だけはあるのだから手に負えない。
必ず捕まえて欲しい。一般人にしか過ぎない私には、中年刑事らの活躍に期待する他なかった。
「んっ……はぁっ……」
「うん?」
ふと、どこからかくぐもった声がして、音のする方をふと見上げる。
声は二階から聞こえていた。
「階段を上りきると、声はますますはっきりと聞こえてきた。
「はぁっ、はあっ、く、ううぅっ!」
娘の部屋から、うなされたような喘ぎ声が漏れている
(まさか……)
検査では何も異常なしと言われたが、本当にあの犯罪者どもが娘の身体に何もしなかったのだろうか。
もしかしたら後発性の薬物か何か。そういったものを打ち込まれたのでは?
私は震える足で寝室へ近づき、半開きになっていたドアの隙間から、娘の様子を窺った。
(なっ!?)
その瞬間、私の頭は真っ白になる。
娘はベッドの上に座り、パジャマのズボンを脱ぎ捨てて露らになった局部を小さなスタンドミラーに映していた。
「はーい。ここが大陰唇でぇ……んっ、こっちが、小陰唇。ふふん、お嬢ちゃんのカラダはもうすっかりオトナだねぇ」
「やぁ……やだぁ……んぁ、触ら、ないでぇ……」
同じ声で、同じ口から紡ぎ出される台詞は、あたかも二人の人間が存在しているかのような口振りで自らの秘所を弄っている。ごっこ遊びというには、そのイヤラシイ表情が真に迫りすぎていた。
「ほーら、ここがクリトリ……あぁんッ、女の子の、はっ、一番、気持ちいいところだよ。さあ、言ってごらん」
「ふぁ、あっ、ああ、やぁ……やああ……!」
「物覚えの悪い子だなぁ。でも大丈夫。ちゃんと言えるようになるまで、僕があぁんッ、ずっとぁ、傍に居て、あげるから! はぅンッ」
指使いが激しくなり、嬌声も大きくなっていく。
娘の自慰を覗き見する父親……そんな後ろめたさなど、目の前で起こっている異常事態に比べればごくわずかだった。
「や、ああっ、何、なに、やだ、こわ、んぁっ」
「はぁッ、ハッ、はあくッ、これ、が、イクって、あ、ことだよ! 大きな声で、言ってみるんだ!」
「あっ、あっあっ……あああッ!」
「ぐっ、くううううんっんッ……んぁッ……あ……」
カラダが小刻みに震え、大きく仰け反る。
確認するまでもなく、ベッドのシーツは愛液まみれだろう。
「はぁ……ふぅぅ……ったく、生意気なカラダだ。ちゃんとした性知識を教えてやらなきゃ、ぜってぇいつか援交するぜぇ、このお嬢ちゃん」
脚を、局部を、腰を、胸を、自らの肢体を撫でながら喋る娘の姿は、もはや別人だった。
「ま、僕の教育に影響された結果ビッチになっても……それはそれか」
半裸のまま、後処理を使用ともせずにベッドに寝転ぶ。
いったい娘に何が起こったのか、私は必死で状況を整理しようとし────
「あ、ちゃんとセックスも教えますんで。相手はおとーさんでいいっすかね?」
あっけらかんと放たれたその言葉は、氷のような冷たさで私の心を貫き、凍結した。
***
≪はーい。警察官、または刑事の娘さんたち。こんにちはー≫
≪ひゃひゃひゃ、サツなんてよぉ。汚職まみれの癖に正義の味方を気取っているんだぜぇ?≫
≪というか、正義っていうのは人によってさまざまだし。それを君たちに教えてあげるし≫
≪凝り固まった正義がもたらす影響は、結果として悪を生むんだ!≫
「クソガキどもめぇ! 娘に手を出したらただではおかんぞぉ!」
娘が誘拐されて三時間。
中年刑事の怒号は、止むことなく続いていた。
諸君、私は犯罪者大勝利エンドが好きだ
投票者に感謝

[PR]
