短編「ABCオブTS」 N
「ABCオブTS」という短編を進めています
英単語26文字を頭文字にした短編です
あと半分
表サイトの投票所でリクエストを募った結果、
コメントで素敵な単語と具体的なプロットを頂戴しました
ホラー色がやや強めでTS的にはどうだろう?なモノに仕上がりました
nightmare -悪夢-
血塗られたように真っ赤な夕焼けが、校舎を染め上げていた。
帰りの途中で忘れ物に気付きここまで戻って来たのに、いますぐきびすを返したくなる。それほどまでに目の前の光景は不気味だった。
放課後の学校には、魑魅魍魎がうごめいているのです。というのはオカルト研究会に所属する先輩の口癖だ。
彼女は幽霊と出会うために、いつも遅くまで学校に残っている。
そういえば今朝も、『今日はチャネリングをするのです。君も来るといいのです』って誘われたっけ。
先輩は上級生なのに、いつでもですます口調だ。小柄で童顔な容姿とあいまって、とてもかわいい。
だけどそれはそれ、これはこれ。あいにく僕はそんなにオカルトが好きなわけではない。むしろ苦手だ。
けど、定期券がなければ家に帰れない。
結局僕は、赤黒く彩られた校舎の中に乗り込むことにした。
まだ17時を少し過ぎたばかりなのに、廊下は人気というものが完全に失われていた。昼の活気がウソのように静まり返っている。
嫌だな、怖いなとビクビクしながら自分のクラスを目指す。階段を上がり、すぐ目の前の教室がそうだ。
ドアは閉まっている。けど、鍵はまだ掛かっていないだろう。掛かっていたとしても職員室に行って事情を説明すれば何も問題はない。
そんなことを思いながら、引き戸の取っ手に指を掛けたときだ。
「い、いや……っ」
「!」
くぐもった女の子の悲鳴が聞こえてくる。
ガラス越しに教室を覗くと、クラスメイトのナナセさんがいた。
だけどそれ以上に、彼女の背後にいるソレに目をひきつけられる。
(う、宇宙人……!?)
大きな黒目。銀色の体に枯れ枝のような手足。それはまさしく、誰もが思い描く地球外生命体だった。ソレが、ナナセさんの背中にへばりついている。
「やだっ、やっ……あ、ぁ……」
彼女は上半身を机の上に預けて、弱々しくかぶりをふっている。視線を彼女の足元に向けると、スカートから伸びた脚がまるで漫画のようにぺしゃんこになっていた。
筋肉も骨も全部溶けて、皮だけが残ったら、あんな風になるのかもしれない。あまりの異常な事態に、僕はパニックを通り越してそんな冷静な分析をしていた。
「あ、がっ……」
ぐりっと白目を剥いたかと思った次の瞬間には、目の位置にぽっかりと穴があく。脚だけでなく上半身も、そして顔も萎み、まるでボディスーツのようになったナナセさんの皮を、宇宙人は感情の読めない大きな目で眺めていた。
「キ、キキ」
虫の声とよく似た音を発して、宇宙人はナナセさんの背中をまるでチーズのように引き裂いた。
空洞化した彼女の中身に頭を入れ、銀色の身体がみるみるうちに収納されていく。
「キ……ふぅ……」
布キレのようだった女の子の身体が再び膨らみ、元のナナセさんに戻る。
彼女は自分の腕をしげしげと眺め、ニタニタと笑みを浮かべていた。
「ひ、ひぃっ」
僕はその場で腰を抜かして、廊下に座り込んでしまう。
物音に気付かれたのか、逃げ出す暇もなく教室の扉が開いてナナセさんが姿を現した。
「どうしたの? そんなところに座って」
にっこりと笑って、僕に近づいてくる。だけどその身体の中にはあの感情のない大きな黒目の生き物が入っているのだと思うと、血の気が引いた。
「く、くるな、バケモノ!」
「え、え?」
きょとんとしている。その仕草は、まるで本物のナナセさんそっくりだ。
「ご、ごまかされないぞ! ナナセさんをどうするつもりだ、宇宙人!」
「ちょ、ちょっと何を言ってるの? 夢でも見た?」
心配そうな顔をして、おそるおそる手を差し出してくる。
あの、枯れ枝のような細い腕が重なって見えた。
「く、くるなぁぁぁぁ!」
僕はナナセさんの手を振り払うと、床を転がるようにしてその場から逃げ出した。
「はっ、はっ、はっ……な、なんだよ、なんなんだよ!?」
曲がり角に背中を預けて、呼吸を落ち着かせる。
壁際から教室を窺ってみると、ナナセさんはさっきと同じ場所で、直立をしたままこちらを見つめていた。
「そ、そうだ……先輩……ッ」
まだ校舎に残っているだろうオカルト研の先輩に相談しよう。
いや、何が起こったかわからないけど、とにかくここにいたら危ない。話なんか後回しにして、すぐに逃げ出すべきだ。
渡り廊下を越えて突き当たりにある美術室の隣に、オカルト研究会の同好会はある。
上段に曇りガラスをはめてある小さなドアには、『チャネリング中』とかいうわけのわからない貼り紙がしてあった。
「せんぱ……っ」
「あっ、はっ、ああッ!」
ドアノブに手をかけ、部屋に飛び込もうとした、まさにその瞬間だった。
「き、キキ、ち、地球のオンナは、こんな、んっ、気持ちいいのか、はぁっ、んぁ! 指が、止まらねぇンッ」
部屋から漏れて来た声は確かに先輩のもので、だけどいつもの丁寧な話し方とはかけ離れた、まるで別人のような口調でいやらしく喘いでいた。
ほんの少し開いたドアの隙間から中を覗くと、制服姿の先輩が自らスカートをたくし上げて、ストッキングを穿いたままアソコを机の角に押し当てていた。
「はぁ、すげぇ……気持ちいい……! んぁっ、あ、ああっ!」
腰を前後に揺らして、左手で乳房をこね回して。
僕が見ているのにも気付かず、彼女はひたすた自慰行為に没頭していた。
「────ッ!」
声にならない悲鳴を上げて、その場から逃げ出す。
先輩はもう、あの宇宙人に乗っ取られてしまったんだ。
同時に、この学校にいる宇宙人がナナセさんを襲ったヤツ一匹だけではないことに気付いてしまった。
「や、やだ、やめてください、委員長!」
「キキキキ……そう怯えるなよぉ。このオンナの知識だと、オンナ同士ってのは相当気持ちいいらしいぜぇ?」
「やだ、だ、だれかぁ!」
「キキキ! 現地人を味見しておくのも悪くねぇなぁ!」
通りがかった教室では、真面目なことで有名な風紀委員長が、女の子を襲っていた。
だけど僕は、それを素通りした。
襲われている女の子を助けている間に、ナナセさんや先輩が来たら? そう思うと、とても足を止める気になれなかった。
「う、ううう……」
どこをどうやって家に返ってきたのか覚えていない。
気が付けば僕は、二階にある自分の部屋で布団をかぶり震えていた。
明日また、学校に行かなければならない。
それはつまり、あの三人とまた顔を合わせなければならないわけだ。
特にナナセさんは同じクラスだから避ける事ができない。
そのうえ、向こうは僕に正体を知られていることを知っている。どう考えても、無事で済むはずがなかった。
警察に相談……いや、笑い飛ばされるか怒られるかして終わりだ。
どうする。どうする。どうする。どうする。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ニナ……」
振り返ると、妹のニナが心配そうに僕を見つめていた。
普段ならノックもせず部屋に入ってきた妹を叱るところだけど、今はそんな気力も湧かない。
「大丈夫? 震えているよ?」
「だ、大丈夫……大丈夫だから……」
言って、また妹に背を向ける。
本当は全然大丈夫じゃない、だけど兄として、妹に弱った姿を見せたくなかった。
「……ね、お兄ちゃん」
「え……」
ふいに、妹のぬくもりを感じる。
布団の中にニナがもぐりこんできたのだ。
耳元からは息遣いが聞こえ、最近になって成長し始めたという小ぶりな胸が背中に押し当てられている。
「怖いこと、あったんだね? でも、大丈夫だよ」
ニナの腕が僕の体をまさぐり、股間に伸びてきた。
女の子の小さな手が、ズボン越しに性器を揉みしだいている。
「にに、ニナ? 何を……」
「あたしが、慰めてあげるから……ね、お兄ちゃん」
耳たぶをアマガミして、年齢に不相応の艶っぽい声で囁いてくる。
「あたしのナカに、いっぱい、い~っぱい出して欲しいなぁ……キキッ」
「ぎゃあああああああッ!?」
虫のような笑い声を聞いた瞬間、耳に激痛が走った。
密着する妹を強引に押しのけ、床に突き倒す。耳に手を添えると、真っ赤な血が流れていた。
妹は……妹の姿をしたナニカは、赤黒く汚れた唇を引き裂いてにんまりと笑う。
「いったぁ~い……ひどいよぉオニイチャン……キキキ」
「く、くく、来るな、来るなぁ!」
悲鳴を上げながら、僕は部屋を飛び出した。
こちらの気持ちも知らずにがくがくと大笑いする膝を無理矢理動かして、階段を下りる。
「あ……」
足が、滑った。
そう思うのと、自分の身体が派手に階段を転げ落ちるのは、ほぼ同時だった……。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴっ。
「!?」
目覚ましの電子音が響き、僕はカッと目を開いた。
「こ、ここは……?」
僕の、部屋だ。
慌てて辺りを見回すけど、妹の姿はない。窓の外には青空が広がっていて、スズメのさえずりが聞こえてくる。
「ゆ、夢……?」
耳たぶに触れても、血は出ていない。
身体にも外傷はないし、それどころかパジャマを着ていた。
「は、はは……そっか、夢だったんだ」
考えてみれば、宇宙人が人間を皮にして着るなんて荒唐無稽すぎる。
まったく、ひどい悪夢だった。
一緒に朝食を摂った妹も、母も、校門で取締りをしていた風紀委員長も、みんないつも通りだった。
平和って素晴らしい。僕は改めてそう思った。
「おはようございますです」
「あ、先輩。おはようございます」
先輩と鉢合わせる。
その瞬間、夢の中で見た自慰行為の光景がフラッシュバックした。
あのときは恐怖しかなかったけど、今思い返すと物凄いものを見てしまった気がする。まぁ、夢なんだけど。
「あのぅ、放課後って暇です?」
「え」
そんな僕の浮ついた気持ちは、彼女の発した次の台詞で一気に叩き落されることになった。
「今日は、チャネリングをするのです。君も来るといいのです」
「……」
僕は本当に、悪夢から抜け出せたのだろうか……?
チャネリングやめさせればよくね?
因果関係は不明ということで以下エンドレス
プロット投稿者に感謝
ありがとうございます
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帰りの途中で忘れ物に気付きここまで戻って来たのに、いますぐきびすを返したくなる。それほどまでに目の前の光景は不気味だった。
放課後の学校には、魑魅魍魎がうごめいているのです。というのはオカルト研究会に所属する先輩の口癖だ。
彼女は幽霊と出会うために、いつも遅くまで学校に残っている。
そういえば今朝も、『今日はチャネリングをするのです。君も来るといいのです』って誘われたっけ。
先輩は上級生なのに、いつでもですます口調だ。小柄で童顔な容姿とあいまって、とてもかわいい。
だけどそれはそれ、これはこれ。あいにく僕はそんなにオカルトが好きなわけではない。むしろ苦手だ。
けど、定期券がなければ家に帰れない。
結局僕は、赤黒く彩られた校舎の中に乗り込むことにした。
まだ17時を少し過ぎたばかりなのに、廊下は人気というものが完全に失われていた。昼の活気がウソのように静まり返っている。
嫌だな、怖いなとビクビクしながら自分のクラスを目指す。階段を上がり、すぐ目の前の教室がそうだ。
ドアは閉まっている。けど、鍵はまだ掛かっていないだろう。掛かっていたとしても職員室に行って事情を説明すれば何も問題はない。
そんなことを思いながら、引き戸の取っ手に指を掛けたときだ。
「い、いや……っ」
「!」
くぐもった女の子の悲鳴が聞こえてくる。
ガラス越しに教室を覗くと、クラスメイトのナナセさんがいた。
だけどそれ以上に、彼女の背後にいるソレに目をひきつけられる。
(う、宇宙人……!?)
大きな黒目。銀色の体に枯れ枝のような手足。それはまさしく、誰もが思い描く地球外生命体だった。ソレが、ナナセさんの背中にへばりついている。
「やだっ、やっ……あ、ぁ……」
彼女は上半身を机の上に預けて、弱々しくかぶりをふっている。視線を彼女の足元に向けると、スカートから伸びた脚がまるで漫画のようにぺしゃんこになっていた。
筋肉も骨も全部溶けて、皮だけが残ったら、あんな風になるのかもしれない。あまりの異常な事態に、僕はパニックを通り越してそんな冷静な分析をしていた。
「あ、がっ……」
ぐりっと白目を剥いたかと思った次の瞬間には、目の位置にぽっかりと穴があく。脚だけでなく上半身も、そして顔も萎み、まるでボディスーツのようになったナナセさんの皮を、宇宙人は感情の読めない大きな目で眺めていた。
「キ、キキ」
虫の声とよく似た音を発して、宇宙人はナナセさんの背中をまるでチーズのように引き裂いた。
空洞化した彼女の中身に頭を入れ、銀色の身体がみるみるうちに収納されていく。
「キ……ふぅ……」
布キレのようだった女の子の身体が再び膨らみ、元のナナセさんに戻る。
彼女は自分の腕をしげしげと眺め、ニタニタと笑みを浮かべていた。
「ひ、ひぃっ」
僕はその場で腰を抜かして、廊下に座り込んでしまう。
物音に気付かれたのか、逃げ出す暇もなく教室の扉が開いてナナセさんが姿を現した。
「どうしたの? そんなところに座って」
にっこりと笑って、僕に近づいてくる。だけどその身体の中にはあの感情のない大きな黒目の生き物が入っているのだと思うと、血の気が引いた。
「く、くるな、バケモノ!」
「え、え?」
きょとんとしている。その仕草は、まるで本物のナナセさんそっくりだ。
「ご、ごまかされないぞ! ナナセさんをどうするつもりだ、宇宙人!」
「ちょ、ちょっと何を言ってるの? 夢でも見た?」
心配そうな顔をして、おそるおそる手を差し出してくる。
あの、枯れ枝のような細い腕が重なって見えた。
「く、くるなぁぁぁぁ!」
僕はナナセさんの手を振り払うと、床を転がるようにしてその場から逃げ出した。
「はっ、はっ、はっ……な、なんだよ、なんなんだよ!?」
曲がり角に背中を預けて、呼吸を落ち着かせる。
壁際から教室を窺ってみると、ナナセさんはさっきと同じ場所で、直立をしたままこちらを見つめていた。
「そ、そうだ……先輩……ッ」
まだ校舎に残っているだろうオカルト研の先輩に相談しよう。
いや、何が起こったかわからないけど、とにかくここにいたら危ない。話なんか後回しにして、すぐに逃げ出すべきだ。
渡り廊下を越えて突き当たりにある美術室の隣に、オカルト研究会の同好会はある。
上段に曇りガラスをはめてある小さなドアには、『チャネリング中』とかいうわけのわからない貼り紙がしてあった。
「せんぱ……っ」
「あっ、はっ、ああッ!」
ドアノブに手をかけ、部屋に飛び込もうとした、まさにその瞬間だった。
「き、キキ、ち、地球のオンナは、こんな、んっ、気持ちいいのか、はぁっ、んぁ! 指が、止まらねぇンッ」
部屋から漏れて来た声は確かに先輩のもので、だけどいつもの丁寧な話し方とはかけ離れた、まるで別人のような口調でいやらしく喘いでいた。
ほんの少し開いたドアの隙間から中を覗くと、制服姿の先輩が自らスカートをたくし上げて、ストッキングを穿いたままアソコを机の角に押し当てていた。
「はぁ、すげぇ……気持ちいい……! んぁっ、あ、ああっ!」
腰を前後に揺らして、左手で乳房をこね回して。
僕が見ているのにも気付かず、彼女はひたすた自慰行為に没頭していた。
「────ッ!」
声にならない悲鳴を上げて、その場から逃げ出す。
先輩はもう、あの宇宙人に乗っ取られてしまったんだ。
同時に、この学校にいる宇宙人がナナセさんを襲ったヤツ一匹だけではないことに気付いてしまった。
「や、やだ、やめてください、委員長!」
「キキキキ……そう怯えるなよぉ。このオンナの知識だと、オンナ同士ってのは相当気持ちいいらしいぜぇ?」
「やだ、だ、だれかぁ!」
「キキキ! 現地人を味見しておくのも悪くねぇなぁ!」
通りがかった教室では、真面目なことで有名な風紀委員長が、女の子を襲っていた。
だけど僕は、それを素通りした。
襲われている女の子を助けている間に、ナナセさんや先輩が来たら? そう思うと、とても足を止める気になれなかった。
「う、ううう……」
どこをどうやって家に返ってきたのか覚えていない。
気が付けば僕は、二階にある自分の部屋で布団をかぶり震えていた。
明日また、学校に行かなければならない。
それはつまり、あの三人とまた顔を合わせなければならないわけだ。
特にナナセさんは同じクラスだから避ける事ができない。
そのうえ、向こうは僕に正体を知られていることを知っている。どう考えても、無事で済むはずがなかった。
警察に相談……いや、笑い飛ばされるか怒られるかして終わりだ。
どうする。どうする。どうする。どうする。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ニナ……」
振り返ると、妹のニナが心配そうに僕を見つめていた。
普段ならノックもせず部屋に入ってきた妹を叱るところだけど、今はそんな気力も湧かない。
「大丈夫? 震えているよ?」
「だ、大丈夫……大丈夫だから……」
言って、また妹に背を向ける。
本当は全然大丈夫じゃない、だけど兄として、妹に弱った姿を見せたくなかった。
「……ね、お兄ちゃん」
「え……」
ふいに、妹のぬくもりを感じる。
布団の中にニナがもぐりこんできたのだ。
耳元からは息遣いが聞こえ、最近になって成長し始めたという小ぶりな胸が背中に押し当てられている。
「怖いこと、あったんだね? でも、大丈夫だよ」
ニナの腕が僕の体をまさぐり、股間に伸びてきた。
女の子の小さな手が、ズボン越しに性器を揉みしだいている。
「にに、ニナ? 何を……」
「あたしが、慰めてあげるから……ね、お兄ちゃん」
耳たぶをアマガミして、年齢に不相応の艶っぽい声で囁いてくる。
「あたしのナカに、いっぱい、い~っぱい出して欲しいなぁ……キキッ」
「ぎゃあああああああッ!?」
虫のような笑い声を聞いた瞬間、耳に激痛が走った。
密着する妹を強引に押しのけ、床に突き倒す。耳に手を添えると、真っ赤な血が流れていた。
妹は……妹の姿をしたナニカは、赤黒く汚れた唇を引き裂いてにんまりと笑う。
「いったぁ~い……ひどいよぉオニイチャン……キキキ」
「く、くく、来るな、来るなぁ!」
悲鳴を上げながら、僕は部屋を飛び出した。
こちらの気持ちも知らずにがくがくと大笑いする膝を無理矢理動かして、階段を下りる。
「あ……」
足が、滑った。
そう思うのと、自分の身体が派手に階段を転げ落ちるのは、ほぼ同時だった……。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴっ。
「!?」
目覚ましの電子音が響き、僕はカッと目を開いた。
「こ、ここは……?」
僕の、部屋だ。
慌てて辺りを見回すけど、妹の姿はない。窓の外には青空が広がっていて、スズメのさえずりが聞こえてくる。
「ゆ、夢……?」
耳たぶに触れても、血は出ていない。
身体にも外傷はないし、それどころかパジャマを着ていた。
「は、はは……そっか、夢だったんだ」
考えてみれば、宇宙人が人間を皮にして着るなんて荒唐無稽すぎる。
まったく、ひどい悪夢だった。
一緒に朝食を摂った妹も、母も、校門で取締りをしていた風紀委員長も、みんないつも通りだった。
平和って素晴らしい。僕は改めてそう思った。
「おはようございますです」
「あ、先輩。おはようございます」
先輩と鉢合わせる。
その瞬間、夢の中で見た自慰行為の光景がフラッシュバックした。
あのときは恐怖しかなかったけど、今思い返すと物凄いものを見てしまった気がする。まぁ、夢なんだけど。
「あのぅ、放課後って暇です?」
「え」
そんな僕の浮ついた気持ちは、彼女の発した次の台詞で一気に叩き落されることになった。
「今日は、チャネリングをするのです。君も来るといいのです」
「……」
僕は本当に、悪夢から抜け出せたのだろうか……?
チャネリングやめさせればよくね?
因果関係は不明ということで以下エンドレス
プロット投稿者に感謝
ありがとうございます

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