短編「ABCオブTS」 W
「ABCオブTS」という短編を進めます
エロくはないですがちょっとダーク過ぎなのでこっちに…
英単語26文字を頭文字にした短編です
wedding -結婚式-
エロくはないですがちょっとダーク過ぎなのでこっちに…
英単語26文字を頭文字にした短編です
wedding -結婚式-
結婚は人生の墓場だというが、結婚式に限っていえば間違いなく人生最高のひとときをもたらすものだ。
男も、今の妻と結ばれたあの日のことは明確に覚えている。
二十年以上連れ添ったために相手の良い所だけではなく悪い所もわかってしまったが、あの日は間違いなく自分は世界で一番幸せな人間だと思っていた。
願わくばあのときの妻も……そして今日結婚する娘にも、自分と同じような幸せを感じていて欲しい。
「入るぞ」
礼服のネクタイを直し、控え室の扉をノックする。
中から女性の『どうぞ』という声に促されて、男はドアを開けた。
「おぉっ……!」
陽光の差す小奇麗な部屋の中央に、純白のウエディングドレスを身にまとった娘がいた。
ヴェールに隠された小さな顔には薄化粧が施され、素朴ながらも明るく真面目な彼女によく似合っている。
「綺麗だな、さすが俺の娘だ」
「そう?」
娘は父親の言葉に薄く微笑み、自分の姿を見下ろした。
肘まで覆いつくす白の手袋で、自らの肢体を撫で回す。
肩は露出し胸元が見えてしまっているが、二人で決めたことに親があれこれ口出しするのも良くないと思い踏みとどまった。
「……お前には、苦労をかけたな」
「やだ。やめてよお父さん」
刑事の男は先立たれた妻に代わって、幼い娘を男手一つで育て上げた。
娘も非行に走ることなく真っ直ぐに育ち、銀行員として家庭を支えてくれた。感謝しても仕切れない。
「仕事は続けるのか?」
「……ううん。あんなことあったし」
「そうか。そうだな」
首を振る娘に、余計なことを聞いてしまったと男は後悔した。
つい先日のことだ。
娘の勤める銀行に、強盗が押し入った。さらに運の悪いことに、彼女は犯人に人質として捕らえられてしまったのだ。
娘を盾にされ、男は犯人の要求に従わざるを得なかった。
しかし、奇跡が起こる。
同じ職場の男性職員が、娘を羽交い絞めにする犯人へと勇敢にも飛び掛ったのだ。そのとき父親は知る由もなかったが、娘はその男性職員と交際していたらしい。
結論を言ってしまえば男性職員は犯人グループによって鎮圧されたが、思わぬ反撃に連中は浮き足立っていた
そして、長く刑事としてやっている男がそれを見逃すはずがない。
包囲をしておきながら手を出しあぐねていた部隊をすぐさま展開し、瞬く間に犯人一味は拘束された。
ただ一人。娘を人質にしていたリーダーだけは屋上から転落し死亡してしまう。
あれは娘が男性職員との距離を一気に縮め、今日の結婚式にまでたどり着いたきっかけとなったが、同時に人質にされた恐怖と犯人の死亡という後味の悪い結末を思い出させる忌まわしい事件だ。
娘にとって、出来れば触れて欲しくなかった思い出に違いない。
せっかくの晴れの日にそんなことの気遣いも出来ないとは……男は無言になって自己嫌悪をした。
「お父さん。いままで、ありがとう」
娘が微笑む。
妻の面影を思わせる優しく清らかな笑顔に、男の涙腺は限界間近だった。
「ああ……幸せになりなさい」
ようやくのことでそれだけ言うと、男は足早に控え室から出て行く。
泣くのはもう少し後だ。
++
足音が遠ざかったのを確認すると、花嫁はにんまりと唇を吊り上げた。
それは先程までの優しい笑みとは正反対の、邪悪で腹黒なものを抱えた表情だった。
「幸せになりなさい、か。あは、あははははは!!」
純白の衣装に包まれたまま、大きく口を開けてどす黒い哄笑を上げる。
「あぁ、確かに幸せだぜ。てめぇの大切な娘を奪ってやったんだからな!」
花嫁はまるで男のような乱暴な口調でその場にいない父親を罵り、そしてまた笑った。
「くくっ、残念だったなぁ嬢ちゃん。お父さん、君が本当の君じゃないって気付かなかったよ」
姿見の前に立ち、勝ち誇った笑みを見せる。以前ならけたたましいほどに悲鳴を上げていた心の中の声は、最近ではもうすっかり聞こえなくなっていた。
そしてそのたびに、『彼』は『彼女』に近づいていく。
銀行強盗をした『彼』記憶を持ちながら、一方では犯人に拘束された恐怖を思い出せる。
『彼女』が持っていた同僚への思慕を知りながら、募っていくのは計画を邪魔をされた憎しみばかりだ。
「記憶もほとんど読めたし……これからは俺がお前として生きてやるよ」
ニヤニヤと鏡を見ながら自らの胸をすくい上げるように揉み、艶かしい声を出す。
「んぁ……っ、この胸だって……ぁっ、ん、俺の、もんだっ」
これまでにも幾度となく弄ってきた肉体だ。どこをどうすれば感じるか、全て把握している。
「ふ、ふふふ……!」
銀行強盗を邪魔した夫に、そして自分を追い込んだ刑事の父親に、いつ正体を明かしてやろうか。
そのときの反応を思うと、今から楽しみで仕方なかった。
最高のカラダに、最高の立場。
「俺は間違いなく、世界で一番幸せな人間だ」
花嫁のカラダを奪うってシチュは五本指に入るぐらい興奮します(クソ外道)
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男も、今の妻と結ばれたあの日のことは明確に覚えている。
二十年以上連れ添ったために相手の良い所だけではなく悪い所もわかってしまったが、あの日は間違いなく自分は世界で一番幸せな人間だと思っていた。
願わくばあのときの妻も……そして今日結婚する娘にも、自分と同じような幸せを感じていて欲しい。
「入るぞ」
礼服のネクタイを直し、控え室の扉をノックする。
中から女性の『どうぞ』という声に促されて、男はドアを開けた。
「おぉっ……!」
陽光の差す小奇麗な部屋の中央に、純白のウエディングドレスを身にまとった娘がいた。
ヴェールに隠された小さな顔には薄化粧が施され、素朴ながらも明るく真面目な彼女によく似合っている。
「綺麗だな、さすが俺の娘だ」
「そう?」
娘は父親の言葉に薄く微笑み、自分の姿を見下ろした。
肘まで覆いつくす白の手袋で、自らの肢体を撫で回す。
肩は露出し胸元が見えてしまっているが、二人で決めたことに親があれこれ口出しするのも良くないと思い踏みとどまった。
「……お前には、苦労をかけたな」
「やだ。やめてよお父さん」
刑事の男は先立たれた妻に代わって、幼い娘を男手一つで育て上げた。
娘も非行に走ることなく真っ直ぐに育ち、銀行員として家庭を支えてくれた。感謝しても仕切れない。
「仕事は続けるのか?」
「……ううん。あんなことあったし」
「そうか。そうだな」
首を振る娘に、余計なことを聞いてしまったと男は後悔した。
つい先日のことだ。
娘の勤める銀行に、強盗が押し入った。さらに運の悪いことに、彼女は犯人に人質として捕らえられてしまったのだ。
娘を盾にされ、男は犯人の要求に従わざるを得なかった。
しかし、奇跡が起こる。
同じ職場の男性職員が、娘を羽交い絞めにする犯人へと勇敢にも飛び掛ったのだ。そのとき父親は知る由もなかったが、娘はその男性職員と交際していたらしい。
結論を言ってしまえば男性職員は犯人グループによって鎮圧されたが、思わぬ反撃に連中は浮き足立っていた
そして、長く刑事としてやっている男がそれを見逃すはずがない。
包囲をしておきながら手を出しあぐねていた部隊をすぐさま展開し、瞬く間に犯人一味は拘束された。
ただ一人。娘を人質にしていたリーダーだけは屋上から転落し死亡してしまう。
あれは娘が男性職員との距離を一気に縮め、今日の結婚式にまでたどり着いたきっかけとなったが、同時に人質にされた恐怖と犯人の死亡という後味の悪い結末を思い出させる忌まわしい事件だ。
娘にとって、出来れば触れて欲しくなかった思い出に違いない。
せっかくの晴れの日にそんなことの気遣いも出来ないとは……男は無言になって自己嫌悪をした。
「お父さん。いままで、ありがとう」
娘が微笑む。
妻の面影を思わせる優しく清らかな笑顔に、男の涙腺は限界間近だった。
「ああ……幸せになりなさい」
ようやくのことでそれだけ言うと、男は足早に控え室から出て行く。
泣くのはもう少し後だ。
++
足音が遠ざかったのを確認すると、花嫁はにんまりと唇を吊り上げた。
それは先程までの優しい笑みとは正反対の、邪悪で腹黒なものを抱えた表情だった。
「幸せになりなさい、か。あは、あははははは!!」
純白の衣装に包まれたまま、大きく口を開けてどす黒い哄笑を上げる。
「あぁ、確かに幸せだぜ。てめぇの大切な娘を奪ってやったんだからな!」
花嫁はまるで男のような乱暴な口調でその場にいない父親を罵り、そしてまた笑った。
「くくっ、残念だったなぁ嬢ちゃん。お父さん、君が本当の君じゃないって気付かなかったよ」
姿見の前に立ち、勝ち誇った笑みを見せる。以前ならけたたましいほどに悲鳴を上げていた心の中の声は、最近ではもうすっかり聞こえなくなっていた。
そしてそのたびに、『彼』は『彼女』に近づいていく。
銀行強盗をした『彼』記憶を持ちながら、一方では犯人に拘束された恐怖を思い出せる。
『彼女』が持っていた同僚への思慕を知りながら、募っていくのは計画を邪魔をされた憎しみばかりだ。
「記憶もほとんど読めたし……これからは俺がお前として生きてやるよ」
ニヤニヤと鏡を見ながら自らの胸をすくい上げるように揉み、艶かしい声を出す。
「んぁ……っ、この胸だって……ぁっ、ん、俺の、もんだっ」
これまでにも幾度となく弄ってきた肉体だ。どこをどうすれば感じるか、全て把握している。
「ふ、ふふふ……!」
銀行強盗を邪魔した夫に、そして自分を追い込んだ刑事の父親に、いつ正体を明かしてやろうか。
そのときの反応を思うと、今から楽しみで仕方なかった。
最高のカラダに、最高の立場。
「俺は間違いなく、世界で一番幸せな人間だ」
花嫁のカラダを奪うってシチュは五本指に入るぐらい興奮します(クソ外道)

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