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亡霊犯+ 4

廃校に肝試しに来た男女を絶望させていく話です
あとちょっと


確認
*この物語はフィクションです
  実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません
*ちょっと凌辱的シーンが挿入されています 今更ですが苦手な人は回れ右です

 亡霊犯+ 廃校の亡霊裏 4


 利香をミヤガセに預け、俺は逃げ出した長見を追うことにした。
 友達を見捨てるような女だ。おそらく真っ先にここから出ようとしたに違いない。
 しかしヤツラの入って来た入り口には既に鍵がかかっている。クロベに限って、まさか封鎖のし忘れなどという基本的なミスはしないはずだ。
「くくっ……あがけあがけ」
 血と愛液とがまざった汚らしい服装で、獲物をじりじりと追い詰めていく感覚がたまらない。
 異変に気付いた長見が警察を呼んだところで、到着するまではかなりの時間を要するはずだ。仮に驚くほどの速さでやってきたのだとしても、何の問題もない。
 犯人はこの俺──亡霊なのだから。
「……ボス? なぜ、女のカラダに……?」
「ん?」
 入り口へ向かっていると、向かい側から満身創痍の男が現れた。……昼間に会った小僧だ。
 どうやらコイツも部下に身体を奪われたらしい。チャラチャラとしていた態度が妙に折り目正しいものに変わっている。おそらく中身はクロベだろう。
「いやなに、カラダがなくては話にならんのでな。真っ先に気絶したから頂いた」
「そうでしたか……では、この男のカラダを使いますか?」
 クロベはそういい、自らが奪った肉体を示す。鼻っ柱が曲がり、ノドは赤く腫れ、指も何本か折れていた。
「ふふっ、そうとう痛めつけたようだな」
「ご安心ください。右手と肉棒は健在です。女一人を犯しきるだけの体力も残っています」
「そうか、だがそのカラダはお前が使え。……それより、長見を見かけなかったか?」
「いえ、こちらには来ていないようですが」
 アテが外れたか。となると、残りのメンバーと合流している可能性が高い。
「手伝え、クロベ。一気に狩るぞ」
「はっ、かしこまりました」
 見るからに軽薄そうな男が恭しく一礼し、強気な笑みを浮かべる俺に付き従う。真衣と温井を知る人間からすれば、なんとも奇妙な光景だったろう。
 だが、まもなくそんな人間はこの場からいなくなる。
 いよいよ大詰めだ。

***

 自分達の身に危険が迫っていると必死で訴える親友の言葉を、かれんは信じた。もとより、彼女を疑うつもりなど微塵もない。
 そして恋人である滝沢の言葉も遵守するつもりだった。彼が戻ってくるまで隠れている……そのつもりだった。
 しかし。
「ご、ごめんね……長見ちゃん」
「大丈夫……かれんはワタシが守るから」
 かれんは今、長見に手を引かれ薄暗い廊下を歩いていた。
 彼女にとって最大の敵は長見が主張する『ヤツラ』でもなく、友達の失踪でもなく、ましてや暗闇でもなく、下腹部に襲い掛かる強烈な尿意だった。
 友達の前で、紙もない教室で用を足すなどという発想自体かれんには浮かばない。
 良くない事が起こっている。それは理解していても、生理現象には勝てなかったのだ。
「うぅ、ホントごめんねぇ……」
「いい。一人になるのは危険」
 繋いで手にぎゅっと力が込められる。
 かれんの目には、155センチしかない自分よりも更に小さな長見の背中が、今はとても大きく映った。
(嬉しいなぁ……)
 これといった取り得もないのろまな自分に、頼れる親友がいて、優しい彼氏がいて、明るい友達もいる。幸せすぎて怖いぐらいだった。
 だけど今、その幸せに暗い影が差している。
 友達には異変が起き、彼氏とは離れ離れになってしまった。残ったのは、長見だけだ。
「長見ちゃんは……ずっと、わたしの傍にいてくれる?」
「当たり前。トイレの中まで付いていく」
「あ、あはは……それはちょっと、恥ずかしいかな」
 抑揚の少ない声で無表情に言うその台詞がなんだかおかしくて、かれんの顔に久しぶりに笑みが戻った。



「いやああ! 離して! 助けて、誰かぁ!」
 しばらく歩いていると、自分達の進む方向から叫び声が聞こえてくる。
 滝沢と一緒にいたときよりもはっきりと聞き取れる悲鳴が、かれんを慄かせた。
「な、何……むぐっ!?」
 恐怖のあまり狼狽しはじめた口が、小さな手によって塞がれる。
 普段の起伏の少ない表情を険しくして、長見が行く手を遮る暗闇を睨みつけていた。
「静かに。……かれん、違うトイレを探そう」
「で、でも……」
 今の声は、確かに助けを求めていた。そしていま、この建物には自分の大切な友達しかいないはずだ。
「わ、わたし……助けに行かなきゃ!」
「かれんっ」
 呼び止める声を振り払い、かれんは悲鳴が響く闇の中へと走り出した。

 ──彼女の小さな勇気は、『その光景』を前にして粉々に打ち砕かれた。
「はっ、あぎっ、痛……痛い! もう、許して! 抜いてよぉ!」
「くくっ、そんな事を言って、しっかり俺の肉棒をくわえ込んでいるじゃないか!」
「や、だぁッ! ッ、うごか、ない、でぇ!」
 いつもクラスメイトをまとめ、快活な笑みを浮かべていた長身の少女が、まるで子供のように泣きじゃくり悲鳴を上げている。
 彼女の衣服は全て剥ぎ取られ、かれんや長見とはケタの違うボリュームを誇る双丘が、背後の男の動きに合わせて激しく揺れていた。
「……な……に……これ…………」
 少女を組み敷いているのは、頭から真っ赤な血を滴らせた細身の男だ。こちらも衣服は身に纏っておらず、叩きつけるかのように腰を振っていた。
「利香ちゃん……? 上野君……?」
 二人の顔は、かれんの記憶の中にある顔と同じで、しかし浮かび上がった表情はまるで別人だった。
 残忍な笑みを浮かべる上野と、虚ろな目から涙を流し叫ぶ利香。
 凌辱的な光景は、元々あった不安の種を爆発的に成長させ、理性を崩壊させていく。
「かれん!」
 棒立ちになっていた身体を引っ張られ、トイレの中にある光景が視界から消える。
 耳には、利香の悲鳴がこびりついて離れなかった。
「走って!」
「長見……ちゃ……」
 自分の腕を引いて長見が前を走る。
 考える余裕も、立ち止まる余裕もない。
 その小さな背中に導かれるまま、ただひたすら足を動かした。
「……ッ!」
 床を大きく踏み鳴らし、長見の脚が止まる。
 対峙する暗闇からは、人影が近づいてきていた。
「くくっ、ガキっぽい女だが、そこがたまらねぇな……」
 現れた金髪の男はいつもの軽そうな、しかし嫌味ではない笑顔とはまったく逆の顔つきで、自らの股間に手を伸ばす。
 ファスナーを降ろす音と同時に飛び出してきたのは、大きくそそり立った肉の槍だった。
「ひぃっ!?」
「逃げて、かれん!」
 もう何度目かになる長見の叫び声は、しかしかれんの耳には届かない。
 初めて見る男性器におびえ、完全に足がすくんでいた。
 股座からは小金色をした小水が零れ出し、太ももを伝って足元を濡らしている。
 恐怖と恥ずかしさと不安と情けなさが頭の中をぐちゃぐちゃに掻き乱し、かれんの目に涙が浮かんだ。
「あ、ああ……あ…………ぁふ」
 糸が切れたような吐息を最後に、少女は崩れ落ちるように意識を閉ざしてしまった。


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