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Divider -ディバイダー

涼しくなってきたので
ゆるゆるとまた憑依モノの長編をはじめます
5000円裏にいる主人公たちは軒並みゲスなので
そういうのがダメな人は回れ右です(今更)

 Divider -ディバイダー 1 「星に願いを」


 流れ星に願い事を三回すると、願いが叶う。
 根拠も何もないその話を、まさか本気で信じているわけじゃない。
 けれど俺は今日も夜空を見上げ、一瞬で消える星の輝きを探す。
 僅かでも可能性があるのなら、たとえ人から笑われようともそれに縋りつくべきだ。少なくとも俺は、そう思う。
 多くを望んでいるわけじゃない。
 大それたことでもない。
 たったひとつの、誰もが思うような、ありふれた願いだ。

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 六藍(むつら)学園は長い坂の中腹に建てられている。
 自転車通学には不向きすぎる急坂の途中に正門があり、それを無視してまっすぐ進むとそれなりに見晴らしの良い展望公園へと辿り着く。自然が多く街灯の少ない高台の公園は、地元ではちょっとした星空スポットになっていた。
 俺は今日もその公園で、星空を見上げている。
 六藍学園の天文部はこの天体観測向きの立地条件から、昔はかなりの部員が集まっていたらしい。それが今じゃ、部員は総勢二名という弱小どころか廃部寸前の状態である。
 顧問は入部以来一度も顔を合わせていない。かつていた先輩たちが残した活動記録や天体関係の本、それにこの望遠鏡だけが天文部に入って得ることの出来た俺の知識の全てだ。
 まぁそもそも天体観測自体に興味があったわけじゃなくて、単純に流れ星を見つけるなら天文部だろうってことで入部を決めた俺には好都合だった。
 これといった活動は特にせず、気が向いたときに望遠鏡を持ち出し公園で星空を眺める。そんな気ままな毎日が平穏だったかというと、実はそうでもない。
 流れ星を探す日……星に強く願いを祈りたくなるような日は、決まって心が濁っている。
 今日は付き合いたてらしいカップルを見た。
 指と指とを絡めて、たったそれだけで顔を真っ赤にしてお互い気恥ずかしそうに歩く男女を見て、こう思わずにはいられない。
(幸せそうだなクソが……死ね!)
 ぶつけどころのない憎しみや怒りをストレートな言葉に変えて、いつもいつも心の中で毒づいていた。

 大きな事を望んでいるわけじゃない。
 たったひとつだけの、ありふれた願いだ。
 俺は
 女 が 欲 し い。

 廊下で可愛い女の子とすれ違うたびに思う。
 あの肉体を自分の好きに出来たら、と。
 俺ぐらいの年齢の男なら、誰もが考えることだ。
 あの唇にキスをしたい。胸を揉みたい。綺麗な脚を撫でて、華奢なカラダを壊れるぐらい強く抱いて、首筋を舐めて髪の匂いを嗅いでアソコに挿入をして思いのままに欲望を吐き出して果てたい。
 恋人が欲しい、というのとは少し違う。
 俺は、可愛い女の子を手に入れたいんだ。どちらかといえばコレクションに近い感覚かもしれない。
 女のカラダを好きなときに好きなように弄って好きなように使う。
 そんな願望を世間がどういう目で見るのかも、わかってはいる。だからといって、簡単に諦められるはずもなかった。
(ああ、畜生……羨ましい……)
 見晴らしの良い展望公園は、絶好のデートスポットなのだろう。
 耳を澄ませば、虫の声に混じってどこかにいる恋人たちのさえずりまで聞こえてきそうだった。
 星空の下でお互いの唇を貪りあう男女が、一体この場所にどれだけ集まっているのか。
 そこの繁みでは、もしかしたらカップルが野外セックスをしているかもしれない。駐車場に泊まっていた車も怪しい。
 望遠鏡を覗けば星が輝いている。
 その中の一つでもいいから、ここに落ちてこないかなと時々思うこともあった。
 女体を堪能する男も、俺の自由にならない女も、みんなまとめて死ねば良い。
「センパイ、どうしました?」
 ふいに隣から、女の声が聞こえる。
 望遠鏡から目を離すと、白いカチューシャをつけた髪の長い女の子が俺の事を不思議そうに見ていた。
「……いや、なんでもないよ」
 羨望と嫉妬と憎悪で染まりきった心の中を悟られまいと、表情筋を駆使して作り笑顔を浮かべる。すると女の子はやや怪訝そうにしながらも、俺に微笑みを返してくる。
「さっきからセンパイばかり、ずるいですよ。わたしにも見せてください」
 そういって女の子……マドカは、望遠鏡を覗き込もうと体を寄せてきた。
 俺の肩に彼女の小さな手が触れると、その部分がざわっと粟立つ。
 慌てて距離を取ると、彼女は場所を譲ってくれたと勘違いしたのか『ありがとうございます』と人当たりの良い笑みを浮かべてレンズの前にひざまずいた。
 少女の背中に流れる黒髪が、数少ない街灯の明かりをまとう。
 その小さく弱々しい後ろ姿は、少し押せばそのまま倒れてしまいそうで、いままさに目の前の女体を貪るチャンスが巡ってきたのではないかと錯覚しそうになる。もちろん、そんな事を実行すれば犯罪だ。
「アルゴールはどこかな~……センパイ、ハンドル動かしていいですか?」
「ああ、いいよ」
 マドカは俺の返事を聞く前から取り付けてあった微動ハンドルをつまみ、観測位置をズラしている。
 ペルセウス座流星群は今がまさにピークで、星崎円(ホシザキマドカ)が天文部に入ってから初めて見る大きな観測対象だ。
 もっとも入部前からマドカは星空に興味があったようで、四月の時点で既に俺以上の知識を持っていた。部長という俺には分不相応すぎる肩書きは真っ先に彼女へ譲り渡すべきだと思ったが、なぜかマドカは受け入れてくれない。
 理由を聞いたら、年功序列だそうだ。
 笑顔で頑なにそれを主張し、結局俺は説き伏せる事を諦めいまだに天文部部長という名ばかりの役職を背負っている。
 それからは、女の事しか頭にない男だと気付かれないよう人畜無害に振舞い、彼女と接してきた。
 そうやって過ごしているうちに、いつしか俺はマドカから信用を得る男になってしまったらしい。夜中に天体観測へホイホイ付いてくることからしても、それは明白だ。
 自分がまったく心を許していない相手から信頼されるという状況は、なんだか得体の知れない気持ち悪さがあった。
 後輩の女の子と二人きりの部活動というシチュエーションに、最初は期待していなかったわけじゃない。
 マドカは可愛い顔をしているし、もし付き合えたら自分の願い事も解決するんじゃないかと一時期は考えたこともある。けど、俺はいまだに彼女を肉欲の対象としてしか見ていない。つまり、そういうことだ。
 胸がときめくような恋をしたいわけじゃなくて。
 愛したいわけでも、愛されたいわけでもなくて。
 俺はただ、女のカラダが欲しいだけだった。
(はぁ……)
 マドカが入部してからというもの、女体への渇望は募る一方だった。
 これから先、可愛い後輩を前にして性欲を押さえつけていける自信がない。
 いっそのこと手を出してしまえばいいと思う時もあるが、その先に待っている未来は絶望的だろう。
「あっ……!」
 マドカが望遠鏡を覗き込んだまま声を上げ、同時に俺もソレに気付き視線を上に向けた。
 周囲がカッと明るくなり、流星群の軌跡が放射線状に空へ広がっていく幻想的な光景が肉眼に映し出される。
 上へ、下へ、右へ左へと自由奔放に飛び回る流れ星の輝きに、俺は魅入られることなく祈りを込めた。
 これだけ降り注いでくるのだから、どれか一つぐらい願いを聞き届けてくれるはずだ。
(女が欲しい女が欲しい女が欲しい!)
「センパイ……あ、あれ!」
 マドカの悲鳴にも似た声が、俺の祈りを邪魔する。
 心の中で舌打ちをして彼女の指差す方を見つめると、光の塊が近づいてきた。
「は?」
 何もわからないまま、意識が突然プツンと途切れる。
 ほんの一瞬の間に全ては起こり、そして終わっていた。
 ……いや。
 この瞬間から、始まったのだ。

*---

 隕石が降って来たらどうなるか?
 答えは、『わからない』だ。
 石のサイズで被害はずいぶん違ってくる。映画のような巨大なものが降ってくるなら地球は滅亡するし、小さいものなら落ちてきたことにさえ気づかないかもしれない。
 海の向こうじゃ、女の子が自分にぶつかった隕石を持って笑顔を見せている写真なんてものが撮られている。隕石というと途方もない被害をもたらすイメージだけど、実際はそんなものだ。
 小石程度の大きさなら、きっと毎日のように降っている。
 そう思うと、その中の一つがたまたま自分に当たったとしても不思議じゃない……か?
「ありえねえ……」
 眩い光から目を覚ますと、俺は地面に倒れる俺を見下ろしていた。
 倒れている俺の服には小指程度の小さな孔が胸のところに開いていて、その孔からは黒く細い煙が立ち上っている。狙撃ライフルで撃たれたらこんな傷跡が出来るのかもしれないが、銃で撃たれるような生き方をしてきた覚えはない。
 ひょっとすると隕石にでも当たったかと冗談交じりに考えてみたわけだが、意識を失う直前の光景を思い出せばあながち否定しきれないものもあった。
「え? 俺、死んだ?」
 じゃあ、ここにいる俺は誰だ。
 もしかして今の俺は幽霊……ってやつなんだろうか。
 オカルトは信じる方じゃなかったけど、そう考えると自然に納得してしまった。なんだか、妙にカラダが軽いし。
「せ……センパイ?」
 マドカがふらふらと俺の……倒れたまま動かない方の俺に近づき、寄り添う。
「あ、あの、起きて下さい。冗談、ですよね?」
 俺の抜け殻を軽く叩き、いきなり胸に耳を押し当ててきた。
「心臓は……平気、ちゃんと動いてる。息……も、してる……」
「生きてるのか?」
 驚きの声を上げるが、彼女はこちらになど目もくれず、俺をゆすり起こしにかかった。
「起きて下さい、センパイ! ……わ、亘(ワタル)さん!」
 どさくさに紛れて俺の名前を呼び、だんだんとマドカの動きが雑になる。
 肩を揺するのをやめて、今度は俺の頬を叩きだした。
 最初は遠慮がちに、やがてビシビシと手形が残るほどの強さで叩きはじめる。
 だが俺の身体は一向に目を覚まそうとしなかった。意識は今ここにあるのだから、目を覚ますはずもない。
「星崎。あまり乱暴に扱うな」
 マドカは俺の言うことになど耳も貸さずに、俺の身体をひたすら痛めつけている。
 幽霊は生きている人間に見えず、会話も出来ないらしいが、それが実証されたわけだ。
「センパイ! いい加減、起きて下さいってば!」
 だからといって、自分が女に殴られ続ける光景に、納得が出来るはずがない。
(このクソ女……)
 無抵抗なのを良い事に、好き放題だ。
 今すぐ目を覚まして正当防衛を理由に押し倒してやりたい。そう思った瞬間、閃いた。
「今の俺は……声も聞こえないし、見えもしないんだよなぁ」
 それなら、目を覚ます前に試してみたい事がある。
 幽霊は、生きた人間に触れるのか?
 その辺は漫画やテレビでも実に曖昧だ。触れるときもあれば、何もつかめず通り抜けてしまう場合もある。
 もし今の状態で、マドカに触る事ができたら……俺の願いは、女体を好きなように弄びたいと言う俺の望みは、果たせるかもしれない。
「よし……!」
 マドカはこちらに背を向けたまま、相変わらず動かない俺の身体をじっと見下ろしている。
「どうしよう……じ、人工呼吸とか……した方が……」
 その華奢な背中めがけて、両手を突き出した。
 伸ばした手のひらの先は、柔らかそうな長い黒髪に触れることなく彼女の体内へと沈み込んでしまう。
 触れられないのか。そう思った瞬間、俺の両腕が信じられない勢いで強く引っ張られた。
「……ひっ!?」
 同時に、マドカが小さな悲鳴を上げて身体を震わせる。だがこちらにも彼女の事を気にする余裕などない。
 抵抗する意思すら浮かばないまま、ヒジから先の感覚がなくなり、つられて頭が吸い寄せられていく。
 彼女の髪にうずもれ視界が真っ黒に染まり、電流のような衝撃が全身に走った。
 白黒に明滅する景色が激しく揺れ、それまで文字通り浮くような軽さだった身体がいきなり重力を取り戻す。
「う……な、なんなんだ……?」
 気が付けば俺を引き付けていた力はおさまり、脳みそが揺さぶられるような不快感も消えていた。ただ、まだ寝起きのように頭がぼんやりしている。
「くそ……ん?」
 頭に手をやると、違和感が指先に触れた。
 髪が長い。いや、それ以上に、驚くほど柔らかい手触りだった。
 とげとげしい俺の髪とは質感の異なる長い髪が、指と指の隙間をさらりと流れていく。
 手も、男のものとは全く違う。細くて白くて、とてもしなやかな腕をしていた。
「……まさか」
 ようやく定まってきた目線を下げると、地面に横たわる俺と、なだらかに膨らんだ胸が目の前に飛び込んできた。
 身につけている制服は、さっきまで目の前の男を散々殴っていた女子のものだ。
「は」
 今更ながら、声が相当高いことに気付く。
 どうやら俺は、マドカの身体を……女の肉体を、乗っ取っているらしい。
 女が欲しいと星に願った結果、女になってしまった。
「はははっ……意味が違ぇよ!」
 しかし露出した感情は憤りではなく。
 心の底から興奮し、そして歓喜に満たされていた。




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これから面白くなりそうだ…グヘヘ

コメントありがとうございます

> さん
BGMにdreamが流れるんですね、わかります
表裏ともどもありがとうございます

> a さん
ありがとうございます
期待に応えられれば嬉しいです