Divider -ディバイダー 4
下衆な思想の男が主人公の、憑依系の話です
ゆるゆる更新します
確認
*この物語はフィクションです
実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません
Divider -ディバイダー 4 「わたしのお姉ちゃん」
星崎家は六藍学園から十五分ぐらい歩いた分譲マンションだ。もちろん以前から知っていたわけではなく、これもマドカの記憶を引き出して得た情報だった。
自宅は一番上の7階で、展望公園には劣るものの空に近いベランダからの景色は『わたし』のお気に入りらしい。もっとも、俺にとってはどうでも良いことだが。
重要なのは、マドカの両親が今夜は帰らず、お姉ちゃん……ナオと二人きり、という点だ。
「こんなキレーなお姉ちゃんがいるなんて、知らなかったなぁ」
ニタニタと頬を歪め、エレベーターに乗る。
一つずつ上昇していく数字のパネルを眺めながら、記憶の中のナオをもう少し鮮明に呼び出すことにした。
妹はどちらかといえば気の抜けた顔をしているが、姉はどことなく知的で凛々しい感じがする。もしかしたら眼鏡をかけているせいでそう見えるだけかもしれない。
マドカと同じく背中まで覆い隠す長さの髪を一本のおさげにまとめていて、女子大生にしては化粧気も少ない。以前はよく外泊をしていたが、最近は家でパソコンに向かっている事がほとんどのようだ。
家に帰らないことの多い両親に代わって家事を担い、マドカはそんな姉を心から尊敬している。少し心配性なところもあるけど、優しいお姉ちゃんが大好き……らしい。
「なら、何も問題ないな」
大好きなら、セックスをしたいと思うのが当然だ。
女同士だろうが、実の姉妹だろうが関係ない。
「俺が、お前の願いを叶えてやるよ」
最上階に着き、扉が開く。
緩んだ頬を引き締め、俺はマドカの家に向かった。
「円!」
廊下を歩いていると、深夜だと言うのに大声を出してこちらに駆け寄ってくるバカ女がいた。ナオだ。
地味な髪型と眼鏡のせいで野暮ったい印象だが、顔が近づくにつれてその考えを改めさせられる。
走るたびに揺れる胸に、妹を心配してか少し涙ぐんだ瞳。記憶で知っているよりも実物はさらに俺好みだった。
「お姉ちゃん……待っててくれたの?」
「お姉ちゃん、じゃないでしょ。もー、あんたは……とにかく、無事でよかった」
「大袈裟だよぉ」
ひしっ、と抱きしめられながら、俺は苦笑いを漏らす。
無事どころか、妹の中身が別人だとすら思っていない。見せ掛けばかりの心配に笑いが溢れそうだ。
「ほら、帰ろう? お風呂沸いてるから、すぐ入って温まるんだよ」
「うん、ありがとう」
手を握り、再び廊下を歩く。
ナオの手はスベスベとしていて、他の部分に対する期待も否応無しに高ぶった。
俺は星崎円としての生活を完璧にこなす事が出来た。少なくとも、実の姉からは何も不審がられていないはずだ。
マドカの部屋がどこにあるのか。着替えはどこにしまっているのか。そんなことはもはや思い出すまでもなく、自然に体が動いている。
「うん……?」
当たり前のように脱衣所に入り、ふと洗面台の鏡と向かい合う。
見慣れた男の姿ではなく、後輩の少女が映り込んでいた。
「ふぅん……本当に、俺がマドカになっているんだな」
ぺたぺたと頬を触ると、鏡の中の少女も同じ動きをする。
展望公園で一通りカラダは確かめたが、改めて鏡で見るとよりいっそう自分の肉体が星崎円であるという実感が強まった。
ヒゲの生えていないツルツルの肌を指でなぞりながら、顔のパーツに触れていく。
この唇も、鼻も、目も、そして髪の毛の一本まで、全て俺のものだ。
「ふっ……あははっ!」
たまらず、吹き出してしまう。笑顔が可愛い。そんな表情をしているのが自分だと思うと、なんだか生まれ変わったような新鮮な気持ちになる。
女が欲しいと、ずっと願っていた。
それは女になりたいという意味じゃない。性欲の対象として手に入れたいと、そう望んでいた。
なのに今は、俺自身が女になっている。だが悪い気分じゃなかった。
肉体は俺の意のままに動き、本人しか味わえない五感を感じ、人間関係や生活習慣、仕草や記憶までもが手中にある。これはもう、征服の究極形じゃないか。
星崎円という女を俺は今、完全に、完璧に手に入れている。不満なんてあるはずが無い。
「あは……センパイぃ……『わたし』を奪ってくれてありがとうございますぅ」
鏡に顔をすり寄せながら、潤んだ目でマドカになりきる。頬も紅く染まって、とても淫靡に見えた。
「どうでしたか、外でのオナニーは……ちゅ……はぁ。わたしは、すっごく気持ちよかったですよ」
鏡のマドカとキスをしながら、展望公園での痴態を思い出す。
女の快感は男の数倍という話は良く聞くが、あの気持ちよさを考えれば納得もいく。男の自慰行為とは比べ物にならない上に、一度イッたくらいじゃほとんどおさまらなかった。
「んぁ……やば……また、濡れて来た……」
股間が熱くなり、下着が湿っているのがわかる。
鏡と向かい合ったまま、制服を脱ぐ。マドカが見る見るうちに俺の目の前で裸になっていった。
自分の目線から見下ろす光景も良いが、こうして正面から女体を眺めるのも悪くない。むしろ男としては正しい視点だ。
外で見たブラと下着だけの姿になり、さらにそれも剥ぎ取っていく。
何も身につけていない、生まれたままの星崎円がそこにいた。
「やっぱ女のカラダって、いやらしいよなぁ」
長い髪。細い腕。膨らんだ胸。くびれた腰つき。突き出た丸い尻と、余計なものの無い逆三角州に整えられた脚の付け根。
特に抜きん出た所の無いマドカの肉体ですら、美しくなおかつ扇情的だと思う。
「はぁ……はぁ……んぐっ」
興奮を抑えきれず、そもそも抑え込むつもりすらなく、生唾を飲み込み股間に手を伸ばす。
「まどかー」
「ふぁッ!?」
ノックもなしに扉が開き、ナオが入ってくる。慌てて胸と股間を両手で隠し、その場に座り込んだ。
「い、いきなり入ってこないでよ、お姉ちゃんのバカぁ!」
「ご、ごめん。いや、っていうかまだお風呂入ってなかったの? ……えーと、シャンプー無くなりそうだから、これお願いね」
そう言ってナオは詰め替え用の袋を床に置く。
「……あんた、ヘアバンドしたままお風呂入るの?」
「え? あ、ああ。取る! 取るから!」
「そんな必死に隠さなくたっていいじゃん。姉妹なんだし。私、もう寝るね」
一瞬だけ怪訝な顔をするものの、ナオはすぐ笑顔になって扉を閉めた。
「……」
俺は同じ姿勢のまましばらく固まって、金縛りのとけたような開放感と共に両腕を広げる。
「ふぅ、焦ったぁ」
……いや、マドカが自分の肉体をオカズにオナニーをして、たとえそれを姉に見られようと、俺には何の被害も無い。むしろ率先して見せ付けてやるべきだったんじゃないか?
「慌てすぎると、マドカとしての仕草が勝手に出てくるんだな……」
必要ないのにセンパイの前でマドカらしい返事をしてしまったり、本物の女のように大事なところを腕で隠したり……。その分マドカに近づけていると言うことだが、代わりに俺らしさが失われている。
そのうち、マドカの意識に呑み込まれて『今の俺』が消えてしまわないか不安になった。
人格まで完全にマドカになってしまえば、それはもう女を手に入れたとはいえない。ただの星崎円に戻るだけだ。
「ふんっ……冷めたな」
鏡の中には相変わらず一糸纏わぬマドカの体がある。しかしナオの邪魔と頭の中によぎった一抹の不安のせいで、エロい気分はすっかり萎えてしまった。裸のままでいたから肉体的にも寒い。
「風呂に入るか……」
白いカチューシャを乱暴に取り、ナオから渡されたシャンプーの袋を手に風呂場のドアを開ける。
体中に塗りたくったボディソープが気持ちよくて、結局一回だけ、軽めにオナニーをした。
*
頭がポカポカとしたまま、自室のベッドに倒れこむ。
タオルもパジャマも、そして布団も枕も、当然自分のカラダも、何もかもが女の子の匂いに包まれていて正直なところ幸せの過剰摂取で気持ちが悪い。男のままでいる『俺』からすれば贅沢な話だと憤りそうだ。
気だるい体をのそりと動かし、ケータイをチェックする。これもマドカ本人の習慣だが、同時に俺の意志でもあった。
風呂に入る前、俺は男のままでいる『俺』に、画像ファイル付きのメールを送っておいた。もちろん、元に戻った場合に備えて履歴は消去してある。
なんのことはない。もし俺が男のままでいる『俺』の立場だったらして欲しい事を、実行してやったまでだ。
「おっ、返信あったか」
男の俺から送られてきたメールアドレスを開くと、これもまた思った通りの反応が返ってきた。
「『永久保存!! だが明日に備えてオナ禁中だゴルァ!!』……っぷ、はは。ばぁーか」
たかが乳首を見せただけの写メでこの興奮だ。
つくづく俺という男がどれだけ単純なのか思い知らされる。だが、アイツはもう別人だと考えれば情け無い気持ちにはならない。
まぁ、自分自身だろうが別人であろうが、男とヤる気は無いけどな。
「挿れられる感覚か……」
このカラダはまだ未経験だ。だから、セックスがどんな快感をもたらすのかまだ知らない。
適当な道具を使って疑似体験してみるのも良いが、初めては痛いというしあまりソノ気になれなかった。
オナニーでアレだけ良いのだから……という期待はある。しかしまだ、嫌悪感の方が強いのも事実だ。
「別に、男がいなくたって気持ちよくなれるしな」
メールを消去し、ケータイをしまう。
頭もだいぶ冷めてきたし、そろそろ頃合だろう。
「……お姉ちゃんなら、もう男とヤッたかな」
襲うついでに、その辺りの話も聞いてみよう。
俺はマドカの部屋を出ると、既に寝入っているナオの元へと向かうのだった。
(両手を合わせて)いただきます
スポンサーサイト

ゆるゆる更新します
確認
*この物語はフィクションです
実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません
Divider -ディバイダー 4 「わたしのお姉ちゃん」
星崎家は六藍学園から十五分ぐらい歩いた分譲マンションだ。もちろん以前から知っていたわけではなく、これもマドカの記憶を引き出して得た情報だった。
自宅は一番上の7階で、展望公園には劣るものの空に近いベランダからの景色は『わたし』のお気に入りらしい。もっとも、俺にとってはどうでも良いことだが。
重要なのは、マドカの両親が今夜は帰らず、お姉ちゃん……ナオと二人きり、という点だ。
「こんなキレーなお姉ちゃんがいるなんて、知らなかったなぁ」
ニタニタと頬を歪め、エレベーターに乗る。
一つずつ上昇していく数字のパネルを眺めながら、記憶の中のナオをもう少し鮮明に呼び出すことにした。
妹はどちらかといえば気の抜けた顔をしているが、姉はどことなく知的で凛々しい感じがする。もしかしたら眼鏡をかけているせいでそう見えるだけかもしれない。
マドカと同じく背中まで覆い隠す長さの髪を一本のおさげにまとめていて、女子大生にしては化粧気も少ない。以前はよく外泊をしていたが、最近は家でパソコンに向かっている事がほとんどのようだ。
家に帰らないことの多い両親に代わって家事を担い、マドカはそんな姉を心から尊敬している。少し心配性なところもあるけど、優しいお姉ちゃんが大好き……らしい。
「なら、何も問題ないな」
大好きなら、セックスをしたいと思うのが当然だ。
女同士だろうが、実の姉妹だろうが関係ない。
「俺が、お前の願いを叶えてやるよ」
最上階に着き、扉が開く。
緩んだ頬を引き締め、俺はマドカの家に向かった。
「円!」
廊下を歩いていると、深夜だと言うのに大声を出してこちらに駆け寄ってくるバカ女がいた。ナオだ。
地味な髪型と眼鏡のせいで野暮ったい印象だが、顔が近づくにつれてその考えを改めさせられる。
走るたびに揺れる胸に、妹を心配してか少し涙ぐんだ瞳。記憶で知っているよりも実物はさらに俺好みだった。
「お姉ちゃん……待っててくれたの?」
「お姉ちゃん、じゃないでしょ。もー、あんたは……とにかく、無事でよかった」
「大袈裟だよぉ」
ひしっ、と抱きしめられながら、俺は苦笑いを漏らす。
無事どころか、妹の中身が別人だとすら思っていない。見せ掛けばかりの心配に笑いが溢れそうだ。
「ほら、帰ろう? お風呂沸いてるから、すぐ入って温まるんだよ」
「うん、ありがとう」
手を握り、再び廊下を歩く。
ナオの手はスベスベとしていて、他の部分に対する期待も否応無しに高ぶった。
俺は星崎円としての生活を完璧にこなす事が出来た。少なくとも、実の姉からは何も不審がられていないはずだ。
マドカの部屋がどこにあるのか。着替えはどこにしまっているのか。そんなことはもはや思い出すまでもなく、自然に体が動いている。
「うん……?」
当たり前のように脱衣所に入り、ふと洗面台の鏡と向かい合う。
見慣れた男の姿ではなく、後輩の少女が映り込んでいた。
「ふぅん……本当に、俺がマドカになっているんだな」
ぺたぺたと頬を触ると、鏡の中の少女も同じ動きをする。
展望公園で一通りカラダは確かめたが、改めて鏡で見るとよりいっそう自分の肉体が星崎円であるという実感が強まった。
ヒゲの生えていないツルツルの肌を指でなぞりながら、顔のパーツに触れていく。
この唇も、鼻も、目も、そして髪の毛の一本まで、全て俺のものだ。
「ふっ……あははっ!」
たまらず、吹き出してしまう。笑顔が可愛い。そんな表情をしているのが自分だと思うと、なんだか生まれ変わったような新鮮な気持ちになる。
女が欲しいと、ずっと願っていた。
それは女になりたいという意味じゃない。性欲の対象として手に入れたいと、そう望んでいた。
なのに今は、俺自身が女になっている。だが悪い気分じゃなかった。
肉体は俺の意のままに動き、本人しか味わえない五感を感じ、人間関係や生活習慣、仕草や記憶までもが手中にある。これはもう、征服の究極形じゃないか。
星崎円という女を俺は今、完全に、完璧に手に入れている。不満なんてあるはずが無い。
「あは……センパイぃ……『わたし』を奪ってくれてありがとうございますぅ」
鏡に顔をすり寄せながら、潤んだ目でマドカになりきる。頬も紅く染まって、とても淫靡に見えた。
「どうでしたか、外でのオナニーは……ちゅ……はぁ。わたしは、すっごく気持ちよかったですよ」
鏡のマドカとキスをしながら、展望公園での痴態を思い出す。
女の快感は男の数倍という話は良く聞くが、あの気持ちよさを考えれば納得もいく。男の自慰行為とは比べ物にならない上に、一度イッたくらいじゃほとんどおさまらなかった。
「んぁ……やば……また、濡れて来た……」
股間が熱くなり、下着が湿っているのがわかる。
鏡と向かい合ったまま、制服を脱ぐ。マドカが見る見るうちに俺の目の前で裸になっていった。
自分の目線から見下ろす光景も良いが、こうして正面から女体を眺めるのも悪くない。むしろ男としては正しい視点だ。
外で見たブラと下着だけの姿になり、さらにそれも剥ぎ取っていく。
何も身につけていない、生まれたままの星崎円がそこにいた。
「やっぱ女のカラダって、いやらしいよなぁ」
長い髪。細い腕。膨らんだ胸。くびれた腰つき。突き出た丸い尻と、余計なものの無い逆三角州に整えられた脚の付け根。
特に抜きん出た所の無いマドカの肉体ですら、美しくなおかつ扇情的だと思う。
「はぁ……はぁ……んぐっ」
興奮を抑えきれず、そもそも抑え込むつもりすらなく、生唾を飲み込み股間に手を伸ばす。
「まどかー」
「ふぁッ!?」
ノックもなしに扉が開き、ナオが入ってくる。慌てて胸と股間を両手で隠し、その場に座り込んだ。
「い、いきなり入ってこないでよ、お姉ちゃんのバカぁ!」
「ご、ごめん。いや、っていうかまだお風呂入ってなかったの? ……えーと、シャンプー無くなりそうだから、これお願いね」
そう言ってナオは詰め替え用の袋を床に置く。
「……あんた、ヘアバンドしたままお風呂入るの?」
「え? あ、ああ。取る! 取るから!」
「そんな必死に隠さなくたっていいじゃん。姉妹なんだし。私、もう寝るね」
一瞬だけ怪訝な顔をするものの、ナオはすぐ笑顔になって扉を閉めた。
「……」
俺は同じ姿勢のまましばらく固まって、金縛りのとけたような開放感と共に両腕を広げる。
「ふぅ、焦ったぁ」
……いや、マドカが自分の肉体をオカズにオナニーをして、たとえそれを姉に見られようと、俺には何の被害も無い。むしろ率先して見せ付けてやるべきだったんじゃないか?
「慌てすぎると、マドカとしての仕草が勝手に出てくるんだな……」
必要ないのにセンパイの前でマドカらしい返事をしてしまったり、本物の女のように大事なところを腕で隠したり……。その分マドカに近づけていると言うことだが、代わりに俺らしさが失われている。
そのうち、マドカの意識に呑み込まれて『今の俺』が消えてしまわないか不安になった。
人格まで完全にマドカになってしまえば、それはもう女を手に入れたとはいえない。ただの星崎円に戻るだけだ。
「ふんっ……冷めたな」
鏡の中には相変わらず一糸纏わぬマドカの体がある。しかしナオの邪魔と頭の中によぎった一抹の不安のせいで、エロい気分はすっかり萎えてしまった。裸のままでいたから肉体的にも寒い。
「風呂に入るか……」
白いカチューシャを乱暴に取り、ナオから渡されたシャンプーの袋を手に風呂場のドアを開ける。
体中に塗りたくったボディソープが気持ちよくて、結局一回だけ、軽めにオナニーをした。
*
頭がポカポカとしたまま、自室のベッドに倒れこむ。
タオルもパジャマも、そして布団も枕も、当然自分のカラダも、何もかもが女の子の匂いに包まれていて正直なところ幸せの過剰摂取で気持ちが悪い。男のままでいる『俺』からすれば贅沢な話だと憤りそうだ。
気だるい体をのそりと動かし、ケータイをチェックする。これもマドカ本人の習慣だが、同時に俺の意志でもあった。
風呂に入る前、俺は男のままでいる『俺』に、画像ファイル付きのメールを送っておいた。もちろん、元に戻った場合に備えて履歴は消去してある。
なんのことはない。もし俺が男のままでいる『俺』の立場だったらして欲しい事を、実行してやったまでだ。
「おっ、返信あったか」
男の俺から送られてきたメールアドレスを開くと、これもまた思った通りの反応が返ってきた。
「『永久保存!! だが明日に備えてオナ禁中だゴルァ!!』……っぷ、はは。ばぁーか」
たかが乳首を見せただけの写メでこの興奮だ。
つくづく俺という男がどれだけ単純なのか思い知らされる。だが、アイツはもう別人だと考えれば情け無い気持ちにはならない。
まぁ、自分自身だろうが別人であろうが、男とヤる気は無いけどな。
「挿れられる感覚か……」
このカラダはまだ未経験だ。だから、セックスがどんな快感をもたらすのかまだ知らない。
適当な道具を使って疑似体験してみるのも良いが、初めては痛いというしあまりソノ気になれなかった。
オナニーでアレだけ良いのだから……という期待はある。しかしまだ、嫌悪感の方が強いのも事実だ。
「別に、男がいなくたって気持ちよくなれるしな」
メールを消去し、ケータイをしまう。
頭もだいぶ冷めてきたし、そろそろ頃合だろう。
「……お姉ちゃんなら、もう男とヤッたかな」
襲うついでに、その辺りの話も聞いてみよう。
俺はマドカの部屋を出ると、既に寝入っているナオの元へと向かうのだった。
(両手を合わせて)いただきます

[PR]
