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ヤ サ シ イ セ カ イ 3


ファンタジーなダーク系のお話です
今回は三人の主人公が織り成す群像劇風に進行していこうかと

というわけで二人目の主人公の物語です
プロローグのためTSシーンはありません


注意
エルフがいじめられていますのでエルフ好きの人は胸糞注意です



 ヤ サ シ イ セ カ イ ~プロローグ2


***:エルフ

 この世界には、【エルフ】と呼ばれる少数種族がいる。
 人間とほぼ同一の容姿を持ちながら、長く尖った耳を有するエルフは人々から忌み嫌われる存在だった。
 男女共に例外なく美しい容姿を持ち性格も穏やかな者達が、なぜ忌避すべき存在になっているのか?
 いわく、マホウ文明を滅ぼしたのはエルフの祖先であるらしい。
 伝説の文明を歴史から抹消した大罪は、その末裔であれ迫害を受けるのには充分すぎる理由だった。
 もちろん確固たる証拠があるわけではない。単なる俗説の一つである。
 しかしその考えは世間に広く認められ、根深く浸透し、彼等を虐げることに躊躇う者はほとんど居なかった。
 マホウ文明が続いていれば、自分たちの暮らしはもっと豊かになったはずなのに────そんな怒りのぶつけどころを、エルフに求めていたのだろう。
 あるいは単に、男女共にすべからく美しいエルフの容姿が、人間の嫉妬を駆り立てたのかもしれない。
 耳が長い他には能力的に人間と大差のない少数民族は、黙って迫害に耐え続けるしかなかった。
 反逆をしたところで、種族全体が絶滅に追い込まれるだけだ。
 それをエルフ共通の教示として、彼らは今日も理不尽に虐げられている。


*:ジズ

「神はいつでもあなたたちを見守っておられます」
 厳かな女性の声が聖堂にこだまし、信徒達の耳に染み渡っていく。
 真っ白な修道服に身を包んだシスター・ジズは慈愛に満ちた微笑を浮かべ、神の教えを説いていた。
「苦しみはいずれ、道を照らす光となりましょう。しかし憎しみは目の前の景色すら暗く閉ざしてしまう危険なものです。自己を愛し、隣人を愛しましょう」
「はいっ! シスター・ジズ!」
 ジズを取り囲むのは、エルフの孤児だ。
 平和が続く王国であっても、さまざまな理由から両親を失う子供は後を絶たない。
 特にエルフは普通の人間から忌み嫌われ、不当な扱いを受けている。
 貴族に買われ奴隷のような一生を送ることはまだ幸せであり、ひどいものだと生後間もない乳児を抱いたエルフの母子が、ミルクの一滴さえ得られぬまま餓死したなどという心の痛む話まであった。
 神の慈悲は平等であり、救いを求める信者に貴賎などない。
 シスター・ジズはその教えを忠実に守り、人間と同じようにエルフとも接している。
 行き場のない子供達を教会近くの孤児院に住まわせ、立派な大人へと成長するまでの面倒を見ていた。
 だが教会のトップである大司教は、エルフの弾圧に意欲的だ。ジズの行動はむしろ異端視されているといってもいい。
 一方で、心強い味方もいる。
 エルフ罰するべしと新たな教義を掲げる大司教をなだめ、平等主義の教えを貫くジズを後押しするクリフ神父。
 彼のとりなしがなければ、聖堂にエルフの子供を招き入れるなど夢のまた夢だった。
 多額の寄付をしてくれる貴族のマーグレイ家にも感謝を忘れてはいけない。
 特に令嬢であるトリーシェは子供達をよく可愛がり、個人的にも他愛のない会話に花を咲かせられる気心の知れた相手だった。
 良き理解者と良き友人、素直で可愛い子供達に恵まれ、ジズは幸せな日々を送っていた。
「あ……」
 ふと、孤児達の輪から外れるエルフの少年が目に留まる。
 彼は聖堂の隅にうずくまり、遠巻きにこちらを眺めていた。
 瞳は暗く沈み、エルフ特有の美しい顔立ちに憂鬱な陰が差し込んでいる。
 孤児院で支給した上下の衣類は薄汚れ、あちこちがほつれていた。
「どうしたの、アービィ。こちらにいらっしゃい」
 ジズに呼びかけられても、エルフの少年はヒザを抱えたままだ。視線だけが彼女を見やり、すぐに逸れてしまう。
 何があったのだろう。ジズは孤児たちの輪を抜け、アービィに近づく。
 そのとき、聖堂の扉が荘厳な音を立てて開いた。
「遊びに来たわよ。みんな元気ー?」
「トリーシェ」
 明るい声と共に現れたのは、ジズの友人だった。
 黒のレースが入った赤いドレスを優雅に着こなし、歩くたびに左右に分けた美しいブロンドの髪が揺れる姿は、まさに貴族の令嬢といった風格を出している。
「ごきげんよう、シスター・ジズ。子供達をお借りしても?」
 胸の前で両手を組み、軽い会釈をされる。気品溢れる微笑みは、同性とはいえ思わずうっとりする振る舞いだ。
 普段はやや奔放なところもあるトリーシェだが、そんなところも魅力的だとジズは好感を抱いている。
「えぇ、お願いします」
「よぉし。みんなっ、パンが欲しい人は中庭に集合ーッ」
 深窓の令嬢めいた笑みから親しみやすい街娘のような笑顔に切り替わり、持参した紙袋を掲げる。
 活発な笑みを振り撒くトリーシェに孤児達は我先へと飛びついた。子供達が自分以外の誰かに懐く光景も、今ではずいぶん見慣れたものだ。
 うずくまっていた少年に視線を戻すと、彼はヒザの上で顔を伏せっていた。今にも泣き出しそうで、それなのに泣くのをじっと我慢しているかのような仕草だ。
「アービィ?」
 再び少年の名を呼び、手を差し伸ばす。
 だが細い指先が少年に触れるより先に、神父の声が彼女の名をのんびりとした口調で叫んだ。
「おぉーい、ジズ! ちょっと来てくれ!」
「あ、はい! ただいま参ります!」
 手を引っ込め、聖堂の奥にある扉を振り向く。
 何か用事だろうか。
「アービィ。ほら、みんなやトリーシェの所に行ってなさい」
 ジズは少年に優しく微笑みかけ、その場を後にする。
 少年の困窮しきった瞳には、ついに気付かなかった。


*:アービィ


 行かない、という選択肢は少年には無い。それがどんな結果をもたらすのか既に体験済みだからだ。
 開け放たれたままの扉をくぐり、貴族の令嬢が待つ中庭に赴く。もちろん、気分は最悪だった。
「遅いじゃないの、アービィ。はいこれ」
 人当たりのよさそうな笑みを浮かべるトリーシェから、パンを手渡される。
 孤児院暮らしではあるが、満たされた生活が送れているわけではない。一日の食事量はたかが知れていて、エルフの少年少女らにしてみればパン一つが無償で丸ごと与えられるなど奇跡にも等しいご馳走だった。
 にもかかわらず、アービィの表情は浮かない。他の孤児院の仲間達はみな、嬉しそうに顔を綻ばせているのにだ。
「みんな聞いてー? 食べる前に、一つ注意しておくことがあるの」
 指を一つ立て、トリーシェが子供達を見回す。
「今渡したパンには、聖なる粉が振りかけられているわ。もちろん、神に愛されているあなたたちに害のあるものじゃない。むしろ、とっても甘くておいしいの」
 ただし。と笑顔のまま、言葉をいったん区切る。
「悪魔に取り憑かれた子が食べた場合、苦痛にのた打ち回ることになるわ。聖なる粉は、悪魔にとって毒薬なの」
 悪魔とは神の敵対者であり、マホウ文明を滅ぼしたエルフ以外の『候補者』だ。しかしその存在は確認されておらず、世間では悪魔とエルフが混同されている場合も多々あった。
「もしかしたらこの中に、悪魔に取り憑かれている子がいるかもしれない。だから、みんなで確認しましょう?」
「はーいっ!」
 孤児達の返事は明るい。
 自分は悪魔になど取り憑かれていないと確信しているのだ。
「じゃあ、いっせいに食べましょう? せーのっ」
 『いただきます!』。
 号令にあわせ、アービィもパンをかじる。瞬間、激痛と吐き気が口の中を襲った。
「うっうぐっ……うぐぇええええ!!!!」
 堪えようとしても堪えられるものではなく、五秒と持たず吐瀉物を撒き散らす。
 ジズの手入れが行き届いた美しい中庭を、汚物が台無しにする。その様子を仲間達はまるで予期していたかのような目で遠巻きに見ていた。
「あら、『また』取り憑かれていたのね、アービィ?」
 苦しむ少年エルフを見下ろしながら、トリーシェは変わらず笑みを湛えている。
 だがアービィに表情の意味を理解する余裕はない。
 鼻腔は悪臭にさらされ、立て続けに込み上がる嘔吐感に唇が震え胃がひっくり返りそうだった。
「げぇ、っ、げほっ、ぐ、うえぇ!」
 口にしたパン以外にも、朝食の残骸が胃液交じりに吐き出される。
 トリーシェは笑顔を取り下げると、再び子供達を見回し叫んだ。
「さあ! 悪魔は弱っているわ! 石を投げて、アービィの身体から追い出すのよ!」
「はいっ!」
 貴族の凛とした声に従って、同族たちが思い思いに石を手に取る。
 涙で滲んだ視界が、彼らの笑顔を捉えた。
(シスター・ジス……)
 石つぶての雨にさらされながら、少年が頭の中の聖女に教えを乞う。
(神様なんて、本当にいるんですか?)
 苦痛は苦痛でしかなく、光明などどこにも見出せない。
 この世界は、地獄だった。


**

 その夜。
 アービィは川に浸かり、傷つき薄汚れた身体を洗い流していた。
 対岸は絶壁と森に塞がれ、辺りに人気はない。少し離れた場所に彼の暮らす孤児院があるが、好き好んで夜中に川辺を訪れる人物はいなかった。
 月明かりすら頼りのない真っ暗な景色の中で、水の流れる音が静かに響いている。
「痛っ……」
 冷水が擦り傷にしみて、少年エルフの端正な顔が歪んだ。
 孤児院にはお湯も用意されているが、『悪魔に取り憑かれた』せいで使わせて貰えない。何度も何度も『悪魔に取り憑かれている』アービィは、いつしか同じエルフの仲間からも迫害を受けるようになっていた。
「僕が……何をしたって言うんだよぉ」
 ジクジクと痛む身体と、いまだ胃の中に残る不快感と、己の無力さと世の中の理不尽さにとうとう涙がこぼれる。
 あふれ落ちる雫が水面を揺らすが、川の流れはすぐにその波紋を打ち消してしまった。
 いっそのこと、逃げてしまおうか。
 これまでにもそんな考えを持たなかったわけではないが、教会から──トリーシェから逃げたところで、【エルフ】の自分はどこにいってもきっと同じ扱いを受けるだろう。
 それなら今の暮らしに耐える方がマシかもしれない。住まいと食事を与えてくれる孤児院は、親のいないエルフの子供にとって破格の待遇だった。
 何もかも、シスター・ジズの恩恵である。
 この世に神はいなくとも、ジズのような聖女がいるのだからと、アービィはまだ希望を捨て切っていなかった。
「……?」
 ふと、何か大きな塊が岸に流れ着いているのが見える。
 ゴミかな、と思いながら近づいていくと、それはエルフの女だった。
 胸元が大きく開いた黒い衣装はあちこち切り裂かれ、露出した肌や頬に深い斬り傷を負わせている。ボロボロの姿はまるで戦いに敗れた戦士のようだ。
 歳はアービィの四つか五つほど上だろうか。まつげの長い目蓋は両目とも閉ざされ、身体が痛むのか時折険しい表情を浮かべている。
「あの、お姉さん?」
 声をかけても、女性は苦しそうな呻き声を上げるだけだ。
 何があったのかわからない。だが、傷ついた同族の女性を見捨てることなど出来るはずもない。
「す、少し、我慢してくださいね」
 大人の女性に密着する緊張を押し殺し、肩を担いで水から引き上げる。
 よたよたした足取りで川岸を後にし、アービィは孤児院へと向かった。


*:ディーザ 

 ディーザは夢を見ていた。
 三人の少女騎士に追い詰められ、崖から滑落した光景が自分視点で鮮明に描かれる。それは実際、ほんの数時間前に起こった出来事だった。
 垂直に近い急斜を転がり落ち、剥き出しの岩肌に全身を打ちつけた痛みまでもを忠実に再現してから、ようやく彼女の意識が現実に追いつく。
「う……」
 目を覚ますと、ディーザの瞳に見知らぬ天井が映った。盗賊団のアジトよりは立派な、しかし老朽化の目立った梁がロウソクの放つ薄暗い琥珀色にぼんやりと照らされている。
「ここは……つぅっ!」
 上体を起こそうとして、顔をしかめる。少女騎士らに負わされた傷や、崖から落ちたときの青あざが体中を蝕んでいた。
 と同時に、何も身につけていないことにも気が付く。
 露出の多い衣装を好むディーザだが、さすがに目を白黒させ反射的にシーツを引き寄せる。しかし動揺したのは一瞬で、すぐに冷静さを取り戻し現状の判断に努めた。
 自分が誰かに助けられたことは間違いないだろう。問題はそれが誰で、なんのためか。
 ハッキリ言って【エルフ】に人権はない。
 偽善者面をした連中などは人類平等をうたっているが、エルフに対する世の中の偏見は相当だ。
 そんな呪われた種族の女を助ける理由は?
「犯された……いや、まだ未遂か」
 自らの膣に手を伸ばし、臭いを確かめる。精液の匂いはしない。
 ディーザはいっぱしの盗賊として、己の肉体の価値を正確に把握していた。
 忌まわしい【エルフ】とはいえ、容姿の美しさは男女共に人間の比ではない。そのため観賞用や奴隷として飼う金持ちも少なからずいる。
 自分もそうした物好きに拾われ、監禁されているのでは?
 だが監禁用の小部屋にしては、生活臭がありすぎる気がした。
 そんな風に堂々巡りしていると、室内にもかかわらず水音がする。
 振り向くと、バケツの上でタオルを絞る少年がいた。灰色の髪がわずかに触れる耳は横に長く伸び、同族だと一目でわかる。
「あ……起きましたか?」
 少年はディーザの視線に気付くと、心底安堵したような微笑を浮かべた。
 暴漢による肉便器。人身売買の商品。金持ちのペット。迫害主義者たちへの生贄。
 あらゆる可能性が次々に消え、最終的に残ったのは奇跡的ですらある幸運なシナリオだった。
 単純に、同族の心優しい少年によって助けられた────自分の悪運の強さをひそかにほくそ笑み、ディーザは口を開く。
「ここはどこ?」
「あ、僕の家です。というか、その、正確には、教会の孤児院です、けど」
 徐々にしどろもどろになりながら視線を逸らす。赤くなった耳は、ディーザの裸体に照れているだろうことが容易に窺えた。
 腹芸など出来そうもない、純朴な少年である。
 そして純粋であればあるほど、女盗賊にとっては絶好のカモだった。
「何で裸なんだ? アタシに何する気だ?」
「えぇっ!? い、いえ、その、ずぶ濡れだったし、あのままじゃ身体に良くないかなって……! す、スイマセン!」
 あたふたしながら、少年エルフが両手をばたつかせる。
 もちろん、本気でナニかされると思って聞いたわけではない。そんな度胸がないことぐらい、気弱そうな態度と短い会話で充分にわかった。
「他にアタシがここにいるって知ってるヤツは?」
「い、いません……その、服のことは、明日シスターに相談してみようと……」
「誰にも言わないでくれないか。ちょっとワケありなんだ」
 盗賊だ、などと自己紹介しては警戒されてしまう。
 ディーザは力なく笑うことで、同じエルフならわかるだろう『事情』を語ることなく伝えた。
「えと……わ、わかり、ました」
 思惑通り、表情に暗い影を落とし少年が頷く。
 だが口約束のみではまだ信用できず、女盗賊は保険をかけることにした。
「悪いな。その代わりと言っちゃなんだが……」
 言いながら、ゆっくりと身体に引き寄せていたシーツを離す。
 傷を負ってもなお美しい、ディーザの女体が露になる。突然ストリップを始めた女に、少年エルフは口を開けたまま固まった。
「アタシが、お前にオンナを教えてやるよ。来な」
 自らの肢体で誘惑し、相手を籠絡する。最もオーソドックスで、最も効果的な罠だ。
 少年は発火するのではと思うほどに長い耳を羞恥させ、しかしさらけ出された乳首が彼の熱視線を敏感に感じ取っていた。
 ウブな少年に気を良くしながら、ディーザは妖艶に微笑む。
 静かな室内に、生唾を飲み込む音が大きく響いた。




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非公開コメント

No title

エルフが採用された!やった!

No title

2人目の主人公はショタですか。

脇役?の貴族令嬢は何となく
復讐メイトの深春様っぽい感じです。

あちらは中身も体も途中退場でしたが
こちらは活躍を・・・期待していい?

コメントありがとうございます


各々様方コメントありがとうございます

> John さん
追加していただきありがとうございます。
迫害を受けるという少々変則的なエルフ族になりました
魔法のない世界でのエルフの魅力が良くわからなかったので…


> second さん
懐かしい名前が出てきて嬉しいです
貴族令嬢はただのツンデレで単なる中ボスです
主人公達とそれなりに絡んでもらうつもりですので
ゆるやかな目でご閲覧いただければと

……深春、中途半端でしたか?

No title

>……深春、中途半端でしたか

いえいえ、十分に堪能しました。
TSFではなかなか新鮮なキャラで気に入っていたので、本人の悪あがき(と主人公版の偽善、偽優等生ぶり)が見てみたかったなぁ~という、いまさらのリクエストみたいなものです。

貴族令嬢の中ボスっぷりは楽しみにさせてもらいます♪

返信ありがとうございます

> second さん
返信恐れ入ります
細かい事が気になるのが私の悪い癖

今作も楽しんでいただければ嬉しいです
ありがとうございます